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めのすのレポート

くろいしろのわ~る プロデュース公演
「おう」
2019年1月12日~14日
Half Moon Hall 下北沢
構成・演出 三瀬康之
振付 三瀬康之・中島猛・八筬啓子

久しぶりの下北沢。
言わずと知れた、演劇の聖地。
今年初観劇で、初めての劇場で。
馴染みが浅いダンスメインの作品。
楽しみが募ったハードル。
それを鮮やかに越えていった。


●あらすじ(チラシ参照)
繰り返し繰り返し
同じ絵を、その時々を担う絵描きにより描かれている世界
その繰り返しに疑問を持つとき、「今」の絵描きはどんな未来を描くのか
ーー次に何が描かれていくか分かっている絵を描いて、そこに何の意味があるんだーー


●特徴
この公演では、毎回ダンスと共にライブペイントも行われている。
毎回作風が変わる絵を見れるところは、とても貴重に思う。
また、ダンスだけではなく、世界感の表現の補完として、台詞や小道具も使われている。
そのため、ダンス作品への馴染みが浅い私でも、楽しんで観劇できた。


●そもそも論
ダンス作品は、ミュージカルやドラマのように、言葉を紡いでいない。
パフォーマーは声を発さず、その身体をフルに活用する。
サイレント、パントマイム、古い映画(BGMのみの作品)のような印象を受ける。
言葉を紡いで表現していないからこそ、観客は作品をあらゆる解釈を行うことが出来るところが、ダンス作品の最大の強みなのかもしれない。


●感想
ダンス出来る人って、すげえ。
というか身体を自在に操るだけじゃない。
そこに表情も、熱も、感情も載せているのだ。
息が切れて漏れる吐息すらも、その世界感に溶けていく。
当日パンフレットには、各シーンのダンステーマを表す漢字が書かれている。
もったいないので、掲載は避ける。
この作品は、実際に見て聞いて、各自で感じてもらいたい。
私の場合、この作品は「大人のための絵本」だと感じた。


●出演者について
真帆さんと千畝さんと香織さんしか存じ上げていなかったが、どの出演者もダンス力がすごかった。
千畝さん、今回の作品の筋書きで、主役級。
めっちゃ出てきて、めっちゃ踊ってる。
照明にキラリと反射する瞳の強さに、何度目を惹かれたことか。
見ていてコッチも辛くなるような、胸が締め付けられるような。
でも、一言だけ、優しい声色で響く声に、暖かくなる。
良い役を、しっかりと、しっとりと演じていた。
三瀬さんは、風雲かぼちゃの馬車の作品に関わってくださっていることは知っていたが、パフォーマーとしての実力がとんでもなかった。
やばい、すごい、この方。(確信)
三瀬さんのダンスのパワーも去ることながら、所作や動作の音がしない。
ジャンプや片手で身体を支えるポージングからの着地とか、普通するじゃん。音。トンッ。ドスッ。
しないの。ほぼ無音。
すらりとした体躯と、腕や脚についている無駄の無い筋肉。
やばい、すごい、この人。

他の方々も、もっと丁寧に語りたいが、全くもって目が足りない…。
女性陣みんな可愛いし、しなやかだし。
男性陣も、こんなに動ける人がいるのかと脱帽だし。
ダンスに織り込まれる演技が、面白さもあり、恐ろしさでゾワリとするところもあり。
劇場の空間を生かした演出も評価できる。
ステージ背面側の上部がテラスのようになっており、そこから小道具が現れたり、出演者もそこに行って演じていたりと、空間の利用の仕方が窺えた。
ライブペイントは、下手側にイーゼルとキャンバス、道具類が揃っていた。終演後に近づいて見てみたら、その空間だけでも作品のひとつになっているように感じた。


ダンス。
「感じる」ことに、重点を置いた表現法。
身体のすべてを使いこなして、魅せる。
言葉を介さない表現として、国籍も何もかも関係なく、誰でも感じることができる。
初めて体感した。


2019.1.14
めのす