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英語で新しい技術を学んだ際に感じた困難とそれに対する工夫

こんにちは。@MaiTanaです。
Qiitaアドベントカレンダーの3日目の記事です。
今回は技術からかけ離れているので、別サイトで作成しました。
(昨日気づいたのですが、Qiitaガイドラインによると技術からかけ離れている場合は別サイトで作成し、アドベントカレンダーにそのリンクを貼る方がよさそうです)

なぜこのような記事を書いたか

まず前提として、学習することは記憶を構築することだと捉えます。
記憶がなければ、必要な場面で知識を思い出すことはできないからです。
そういうイメージで読んでもらえると幸いです。

自分の記憶力の程度を理解することは学習に役立ちます。
勉強する際には、意識的にであれ無意識的にであれ、戦略を使っているものです。
例えば、どんな学び方・覚え方をするか、ある技術の学習にどれくらい時間をかけるか、を決めています。また、自分の学習の進捗も予想することもあるでしょう。どれくらい勉強すれば身に付きそうか、後でちゃんと使えるか?など、自分の記憶力と学習内容を鑑みて、予想します。
この戦略が間違っている場合は、目標の学習レベルに到達できるように自分の戦略を修正することが必要です。

このような自分の思考、記憶、学習過程などに関する知識メタ認知的知識と呼びます(※1)

そして上記の戦略が、一発で最適なものであれば問題ないのですが…現実として戦略のアテが外れることもあるでしょう。そして、戦略の修正が必要となります。この自分の思考の修正のことをメタ認知コントロールといいます。(※2)

実際に私はそこに失敗した体験しました。
新人研修終了後、プロジェクト用研修として100時間以上(8時間×2週間以上)e-learningで学習をしました。しかし、その前後での伸びが投資した時間に対して微々たるように感じました。概念を学ぶ講座がほとんどでしたが、知ってる概念が全然増えた気がしませんでした。例えば、某データウェアハウス製品のe-learningは50時間くらいやりました。しかし、その中でわかった概念が増えた気がしませんでした。実際、上司にその製品の機能などを聞かれてもすぐには答えられないのでした。

そこで疑問が生じました。
投資した時間に対してもっと効果があると思ってたのに、
なぜ、こんなに実際の学習効果が薄いのだろう?
そして、どうしたら学習効果を上げられるのだろう?
これは、メタ認知的知識、特に自分の記憶力に関するメタ認知的知識が間違っていたということだといえそうです。

というわけで、メタ認知的知識に関する話を書きます。
この記事によりメタ認知的知識が増えて、読み手の方がより効果的な学びを実現できればいいなと思います。

本記事が想定する学習する対象

対象は二つ考えられます
1.手を動かす系のスキルを習得する
2.判断するための知識を獲得する
(※3)

ここでは 2.の知識の獲得にフォーカスします。
自分の経験では、学習がe-learningによっていたので。


学びのプロセスの詳細

ここでは、知識を得るプロセスを描いてみます。
記述内の用語の意味は本から引用していますが、解釈の正確さは保証できないので、素人の仮説として読んでください。

知識とは概念の集まりとされます。
そして、知識を使うためには、概念を理解することが大切だと思います。

概念ってどんなもの?

諸説ありますが、雑にいうと以下の感じです。
典型的な具体例+典型的でない具体例(※4)
例:鳥の概念

「プロトタイプモデル」といいます


新しいsomethingに出会った時、それが自分の知っている概念に属するか否かを判断する。(カテゴリー判断)
この判断は典型例とどれだけ似てるか、に基づく。
例えば初めてツバメを見た時、カラスやスズメと類似しているので、「鳥だ!」と判断できることになります。(※5)

somethingがどの概念に属するかを判断できると良いことがあります。それはその概念が持つ特徴を、その目の前のsomethingも有する、と推測できるからです。これは最適なアクションを選ぶ際に役立ちます。(※6)

例えば、目の前に細長くて細い舌をヒョロヒョロ出している生き物がいたとします。それが蛇という概念に属すると判断できたら、そいつが蛇の持つ特徴「かみつくかも」を有していると推測できます。そうすると逃げるという行動をとれます。

知識ってどんなもの?

(諸説ありますが)
概念をノードとし、ノードがリンクで結合しているというモデルがあります。要は関連する概念どおしが紐づいています。
(ちなみに活性化拡散モデルというモデルです)
(※7)

Collins, A.M., & Loftus, E.F. (1975). A spreading-activation theory of semantic processing. Psychological Review, 82, 407-428.

じゃあ、概念を理解するとはどういうこと?

いくつかの形があるそうです。

1.自分の経験をもとに、文章に書かれていることの意味が一つのイメージにまとまる (※8)

 例:このことを有名なクイズで実感しましょう。
以下の文章は何の話をしているでしょうか?

その手順はとても簡単である。はじめに,ものをいくつかの山に分ける。もちろんその全体量によっては,一山でもよい。次のステップに必要な設備がないためどこか他の場所へ移動する場合を除いては,準備完了である。一度にたくさんしすぎないことが肝心である。多すぎるより,少なすぎる方がましだ。すぐにはこのことの大切さがわからないかもしれないが,めんどうなことになりかねない。そうしなければ,高くつくことにもなる。最初はこうした手順は複雑に思えるだろう。でも,それはすぐに生活の一部になってしまう。近い将来,この作業の必要性がなくなると予言できる人はいないだろう。その手順が終わったら,再び材料をいくつかの山に分ける。そして,それぞれ適切な場所に置く。それらはもう一度使用され,またこのすべてのサイクルが繰り返される。ともあれ,それは生活の一部である。

※9

答えは…




「洗濯」でした。

改めて文章を読み直してみてください。
このように、複数のイメージが一つのイメージにまとまることが理解するという現象の1つです。そして、これが可能なのは、洗濯の経験があるからです。経験も大切です。


2.新しく取り込んだ情報を自分が既に知っている情報や言葉に置き換えること。(※10)

言い換えると、知識は既に持っている知識の関数です。


それでは、概念を理解して習得したとして、
そのあとに実地で利用することが必要です。

目の前にあるsomethingがどの概念に相当するかを判断することについて

1.知識の粒度が細かく、知識の幅が広くなるほど、判断も細かくなる。(※11)

例:動物について「犬、猫、鳩」という知識しか持たない人がいたとします
→初めてキツネを見た時に「犬」だと判断するでしょう。
これは、自分の持つ知識に基づいて判断するしかないため。
やがて、知識が増えると「キツネ」という種も加わります。

2.関連する知識、概念を持っていることで、何がわかっているか、何がわかっていないかを気づける。逆に、関連する知識が一切なければ、「なにもわからない」!!しかも、疑問すら生じないことも。その場合、調べることもできない。(※12)
こうなると、概念がわからないまま、となってしまう。

たとえば、物理学の話をみましょう。
E = mc2 という式があります。
この式の意味は

物理学において、質量とエネルギーの等価性は、静止座標系における質量とエネルギーの関係であり、2つの値の違いは定数と測定単位のみである。

wikipedia

各用語がわからないのはもちろんですが、それ以外には何が分からないかがわからないような…

二つ目の例として私の経験では、データベース一般について知らずにデータウェアハウスについて勉強していた時、全然その製品特有のビューの機能がありました。が、そもそもデータベース一般が持つ機能としてのビューを知らなかったので、何かわかりませんでした。 


実体験ー勉強したけど何がうまくいかなかったか?

要因1.学習のスタート地点のレベルがゼロだった。
プロジェクト向けの研修では、Azure Active Directory, 分散処理技術、データウェアハウス、仮想化技術を勉強していました。しかし、開始時点の私は、認証、ミドルウェア、データベース、そもそもサーバーとは何かすらよく分かっていないのでした。
これは、目の前のsomething=新しい概念を自分の既に持っている概念と結びつけて理解できなかったということでしょう。さらに実務経験もないので、イメージがまとまるきっかけもあまりなかった。

要因2.e-learningの講義が全部英語。そして私は英弱
英語を読んで聴くのは、母語に比べてシンプルに大変。そのため、自分の理解度を俯瞰するのが難しい。 →「なにがわからないか」が判断できなかった。調べるべき点を調べなかった。
この英弱さに要因1も加わって、いっそう何を調べたらいいかの糸口を見つけにくかったです。(「わからない」点を特定できるのは、関連する知識が必要なので)

要因3. そもそも単語から概念のイメージを紐づけにくい。
例えば、authenticationと認証のどちらの方が概念のイメージを想起できるでしょうか?
新しい目の前のsomething(英語)を既知の概念(日本語or英語)と参照し比較しようにも、英語がはさまるとイメージしにくいので、比較もしづらいのでは?

ちなみに。
英語で学んだ概念を日本語しか使わないプロジェクトで使えるのか…
覚える言語と知識を使う場面での言語がずれていると、ずれていない場合より思い出しにくくなるかもしれません(符号化特定性原理より※13)。
体感としてもそんな気がすます。日本語で学んだ概念を英語だけのプロジェクトで使えている気があまりしないので。

失敗の分析は以上です。
これが本当だとして、覚え方を工夫したり、勉強量を増やすなどが必要そうです。(´・ω・`)

英語でも新しい概念を学ぶための工夫

1.入門レベルからステップアップすることを大切に

最初は入門レベル、つまり自分にわかるレベルの概念を知り、
記憶を構築していく。
たとえば、日本語の入門書や「分かりそう」で「分からない」でも「分かった」気になれるIT用語辞典を活用する。

そうして、未知の概念に出会った時に、それを理解する手がかりとなる関連する知識を増やしていく。(※12)

2.わからない部分は自分で発見する意識をする
何がわからないかは、与えられないのが大人の世界かも…

そして、自分でわかっているのか、わかっていないのかを判断するためには、言葉にしたり、図に描いてみたりするのが良いらしい。(※13) 

私の英語力と技術力の場合、入門~基礎レベルは馴染みのある日本語で学び、知識を使う場の共通語が英語ならば、英語で基礎~応用レベルを学ぶのが良いのかもしれない…

さいごに

私は2プロジェクトを経験していますが、
1プロジェクト目:学習は英語、プロジェクトの共通語は日本語
2プロジェクト目:学習は日本語、共通語は英語
というバイリンガル状態です。
うむむ。ほかの人はどうなのか気になります。

心理学オタクなので、そちらに寄った話になりました。
最後までお読みくださりありがとうございました。

引用文献

『わかるとはどういうことか』は読みやすく楽しい新書なのでオススメです。

おもしろ記憶のラボラトリー 1(※1)(※7)
認知心理学ハンドブック(※3) 
メタ認知で〈学ぶ力〉を高める: 認知心理学が解き明かす効果的学習法(※2)
「わかる」とはどういうことか(※8)(※10)(※11)(※12)(※14)
Bransford & Johnson,1972(※9)
類似と思考 改訂版(※5)
思考と言語 (現代の認知心理学3)(※4)(※6)
符号化特定性原理というものがあります。記憶は覚える→保持する→思い出す というモデルでとらえた時、覚える時の文脈と思い出す時の文脈が一致している方が、思い出すのに成功しやすい、という現象。(※13)
https://www.ieice-hbkb.org/files/S3/S3gun_02hen_15.pdf


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