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”トキメキ"と"感動”をお客様に提供するのがDarichの使命。その成長の軌跡を辿る

インフルエンサーを主軸に展開するブランドの懸念点と言えば、その当事者の賞味期限。
大体はブランド設立から3年程度経過すると、インフルエンサーの人気に陰りが見えてくるもので、それと並行してブランドのセールスも傾くのがよくあるパターンです。そんな中、設立から7年目を迎えた今でも成長を続けるのが、“大人のピンク”をコンセプトにブランドを展開している「Darich(ダーリッチ)」
インフルエンサーである齊藤早紀さんがディレクターを務める同ブランドは何故、例外となり得たのか?今回は、取締役である石原様にお話をお伺いしてきました。

株式会社YSM 取締役 石原さま

Darichというブランドについて

— 石原様のご経歴を教えてください

石原:以前は異業種で仕事をしていましたので、アパレルを手がけるのはこれが初めてです。代表の向井も広告代理店出身で、アパレル出身はディレクターの齊藤だけですね。齊藤が以前勤めていたブランドを卒業したタイミングで、プライベートブランドとしてスタートしたのがDarich。私は代表の向井と同郷でよく会っていたのですが、それがきっかけで齊藤とも交流がありました。ブランドが成長していく中で法人化が見えてきましたので、そのタイミングでお誘い頂き、あと1人を加えて4人で会社としてスタートしています。

お恥ずかしい話ですが、以前の仕事ではPCすらまともに触る事がなかったので当初は困惑しましたね…。ECサイトの運営ですから、クリエイティブの制作は必須、プログラミングも独学です。大枠は代表の知人にECサイトを構築してもらったのですが、ちゃんとしたコンサルが入るまでは運用面で必要な作業は全て自前でした。

アパレルのノウハウに関しては齊藤がショップ店員だった事と、代表の向井が以前、アパレルでアルバイトの経験があった事が活きています。また、向井には出身である広告代理店で培われた「モノを販売するノウハウ」がありましたので、そこに齊藤が売るモノを提供したという形ですね。

— コンセプトに「大人のピンク」と記載がありますが、明確なターゲットと現在購買しているメインの層を教えてください

石原:現在、メインのお客様は20代前半から中盤までです。全体では10代後半から30代までのお客様もいらっしゃいますね。ブランドとしてのキーカラーを「ピンク」に設定しているのですが、この色にはどうしても「甘い」「若い」という固定観念があります。それを「大人でも着れる」ような提案がしたい、というのが根幹にあります。ですから、同じピンクでもややくすんだ色にしています。

先述しました通り、お客様の年齢の上限は30代前半の方がいらっしゃいますが、アパレルでよくある「大人」というワードに具体的な年齢は設定しておりません。若い人たちからすると2〜3歳上でも大人ですから、「ちょっと高見えする」「ちょっと背伸びしたい」時に着用する服、というのが大人のピンクの正しい捉え方です。

— セクシー系ファッションブランド」のカテゴリーだと思われますが、Y2Kトレンドにて市場が広がった印象はありますでしょうか?

石原:市場の広がりは感じますが、Darichとしてはそれだけに捉われず自社のフィルターを重視しています。今、目の前にあるトレンドに対して、Darichであればどう表現するか?という事ですね。ディレクターである齊藤のやりたいことがとにかく明確であり、また、「カテゴリー・ジャンルにとらわれない」というのもコンセプトの1つです。(「一つのテイストにとらわれることなく、カジュアル・セクシー・フェミニンを融合」というコンセプト。)

ジャンルについてもよく質問されるのですが、特に明確に決めていませんし、イメージが分かれても軸がぶれないようにしています。ですから、「トレンドだから」とその色を全面に出す事もやりません。理由としては、ブランドとして長い期間に渡り残していきたいという思いが強いからです。昨今、YouTuberが短期的な収益の為にブランドを作っていますが、それは狙っていません。私たちは後世に残るブランドを作ることが目的です。ですから、ディレクターのブランドというより「Darich」のファンを増やす事を目的にしています。

商品面では、Darichにしか無いものを色・形で意識しています。他で買えるものを出してもブランドとしては意味がありませんから。模倣品を見かける事もあるのですがそれも気にしていません。今度はそれを上回るものを提供するのが私たちがやるべき事。いつ何時も"トキメキ"と"感動"を提供するのがDarichの使命です。

Darich 公式オンラインストア

— インフルエンサーを主軸にしたブランドの場合、当人の人気によってセールスが左右されると思いますが、人気を維持、または伸ばしていける秘訣はあるのでしょうか?

石原:ブランドがスタートした当初より「齊藤早紀」のあり方は社内で徹底管理しているんです。例えば、PR案件などが流行った時期でも一切受けていません。一時期は結構な報酬を提示される事も多かったのですが、イメージの構築を優先しています。齊藤早紀本人に対してユーザーが何を求めているか?を常に意識する必要がありました。飽きられないように写真の撮影一つとっても細心の注意を払っています。

極端なお話、グルメ情報を発信している人がコスメを販売しても当然刺さりません。服以外にも、コスメ・美容関連の事業は当初から計画していたので、SNSの投稿もそれに沿ったものにしていました。

「齊藤早紀」という世界観・ブランドを構築している、というイメージが近いかもしれません。それがあるから今も根強いファンがいらっしゃるのではないかと。

齊藤早紀さんとDarich公式インスタグラム

EC・店舗の運営戦略

— ブランド設立当初から実店舗の出店は計画されていたのでしょうか?

石原:実店舗の計画はブランド設立当初からありました。出店したいエリアや商業施設も検討していましたが、館側は実績の無い、新しいブランドには見向きもしませんので、まずはポップアップショップの展開で実績を作り、そこから出店に進める事ができました。今でこそ店舗開発の担当者が社内にいますが、当時は全て自分達で対応していました。

— オンライン専業ブランドの実店舗出店は様々なリスクがありますが、出店を決めた理由は何でしょうか?また、出店当初何が一番の課題でしたか?

石原:「良いモノを作っている」という自信はありますので、とにかくそれを手に取って触れてもらいたい。その機会を創出したいという強い思いがありました。アパレルにとって商品を直に手に取って触れる場所はとても重要です。また、SNSのフォロワーが多かったとはいえ、まだまだブランドの認知度が足りませんので、認知拡大の為に店舗は必須でした。

課題としては、やはり人ですね。どんなに良い服を作っても、店舗で伝えてくれないとお客様には響きません。人材管理は今でも苦戦していますが、一番力を入れています。

もう一つの課題としてはMDでしたが、こちらはブランド初期、創業メンバーの3人が主になって決めていました。品揃えから展開計画など、大層な計画立案はできていなかったのですが、試行錯誤とトライ&エラーを繰り返しながらやっていました。その経験があるから今があります。最初からできていた訳ではありませんので、現場・お客様ととにかく向き合う事が重要なのかと思いますね。

店舗の様子

— instagramのスナップ専用アカウントや、モバイルアプリのスナップコンテンツなど、スナップや人軸でのセールスに力を入れている印象があります。こちらの効果はどうでしょうか?また、スナップのこだわり・強みなどありましたら教えてください。

石原:スタッフのスナップは非常に重視しています。経由すると買い上げ率が3倍になる、というデータも出ていますので、クオリティの管理は本部側でも徹底しています。

こだわりとしては、「いかに商品の良さを店舗と同じようにWEBでも表現できるか?」という点です。これは、WEB上でも1つの商品に対して幅広く提案ができているか?という要素も入ります。店頭でスタッフが実行する様々な提案を、スナップで表現するのはそう簡単な事ではありません。ですから全スタッフのスナップを掲載しておらず、お客様にとって役に立つ、商品がかわいく見えるものを厳選しています。

Darich公式サイト内のコーディネート

VIPの活用と今後の展望

— VIPを導入した経緯を教えてください。

石原:Shopifyにリプレイスする前に採用していたカートでは、WEBでしかポイントが貯められない仕様でした。Darichでは店舗も運営していましたので、当然ながら店舗のお客様にも還元したいという思いがありました。

そこでポイントを一元化したい、という希望をパートナーに打診。パートナーからは「既存のカートでは不可」との回答で、その際にShopify×VIPを提案されました。ポイント一元化ありきでのShopifyへのリプレイスでしたので、VIPの導入は必須項目です。以前では、この仕様は安価で実現不可でしたが、それが比較的安価でできるようになったのは我々くらいの規模のブランドからすると非常に助かります。

— 会員特典がポイント以外に豊富にある印象ですが、特典内容はどのように決めたのでしょうか?

石原:ポイント還元やバースデイポイントは他社もやっているので必須で導入を決めています。それ以外のものは、お客様が満足してくださるものをどんどん盛り込んでいきたい、と社内で相談しながら決めています。ここでも最優先は"トキメキ"と"感動”の提供です。

また、Darichでは店舗でイベントをよく開催するのですが、毎回行列ができてしまいます。2、3時間待ちも珍しくない状況でしたので、VIP対応を作る事でより快適にご参加頂ける仕組みを作っています。このように今のお客様に対して、何が役に立つかを考えた結果を反映しています。

まだまだお客様からのお声はありますので、これから更に反映させていく予定です。今やりたいのは「お友達紹介プログラム」ですね。何度も言いますが、良いモノを提供しているという自負がありますので、口コミでも広がっていく自信はあります。

— 今後の展望と、Stack社に期待することなどあれば教えてください。

細かい部分ですと、Darichはノベルティの施策が多いので、それがお客様に円滑にお届けできる機能が充実すると良いですね。ですから、リワードプログラムには興味があります。

また、他社でごく稀に見かけますが、アプリ上でできるゲームがあると嬉しいです。セールス目的ではなく、"トキメキ"と"感動”に当てはまるかと。結局、どのような施策も迷ったら”トキメキ"と"感動”に立ち返りますね。

編集後記

SNSの隆盛からインフルエンサーブランドが一般的になって数年経過しますが、栄枯盛衰が激しい世界の中で、Darichが継続できている理由が随所に散りばめられているインタビューでした。

インフルエンサーの特性の理解から、出店・商品企画・プロモーションにおけるこだわりなど、注目すべき点は多々ありましたが、その中で特に印象的だったのは”トキメキ"と"感動”の提供です。

とても定性的な軸ですが、これが機能している背景には社内では何がトキメキであり、何に感動するか?が明確だからではないでしょうか。その確立されたフィルターこそがブランドを創り上げ、現在のDarichの成長を支えているのだと感じます。

「若年層」「セクシー系」「インフルエンサー」など、ブランドを取り巻くキーワードだけ見ますと、プレイヤーの入れ替わりが激しいジャンルと言えそうですが、”トキメキ"と"感動”という不変の軸を持つ限りDarichは成長を続ける。そんな期待を感じさせてくれるお話でした。

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