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OMO施策よりも「店舗体験を重視」。若者を中心に人気を集めるKEBOZが大切にしている考えとは?

「着たい服を作る」をコンセプトに、ストリートファッションと野球を融合したブランドを展開するKEBOZ。近年、若者を中心に成長が目覚ましく、製品から店舗に至るまでそのユニークな展開が話題を呼んでおります。オーナーのKenboさんはアパレル出身でないにも関わらず、快進撃を続ける同社の秘訣は何なのか?今回はECを統括される株式会社JAMの水田さんに、「実際、社内ではどのような動きがあるのか?」についてお話を伺いました。

株式会社JAM EC担当 水田さん

KEBOZの「商品力」が強い理由

— ストリートファッションで野球がルーツになっている衣料品はアパレル市場でも少ないと感じますが、野球を選んだ理由は何なのでしょうか?

オーナーが元球児(甲子園出場)という事もありますが、日本ではベースボールの本国アメリカとは違い、野球とストリートの組み合わせはあまり認識が無い印象があります。しかし、アメリカではメジャーリーグとストリートファッションは密接に繋がっていますし、NEWERAなどはその代表格ですよね。アイテム一つとってもベースボールシャツやスタジャンなどはストリートファッションでも定番のアイテムです。

また、日本だと野球が「オシャレじゃない」「カッコよく見えない」と思われる節があり、そのようなイメージを払拭し、「野球は本来カッコいいもの」であると捉えてほしい気持ちを会社として、ブランドとして持っています。

— ストリートファッションが好きな人は製品の背景・蘊蓄などに魅力を感じるものですが、そのようなこだわりはありますか?

ロゴの書体一つ取っても野球をベースに制作していますので、細かい点はとてもこだわっていますね。

ブランドのアイコンとなるアイテムの一つ「ベースボールシャツ」も当然ながら野球がベースになっていますが、球場で着用していても自然なアイテムなので野球観戦に行く人が着用される事もあります。本来であれば使われないであろうニットでベースボールシャツを作るなど、生地を載せ替える事でファッション性を高めてみたり。

面白い取り組みだと、野球の審判の服にはボールを入れる為のポケットがあるのですが、それをシャツに取り付けたアイテムもあります。

とにかく、野球で使うアイテムに遊び心を加え、ファッショナブルにするのがKEBOZの良さですね。

— ファッションスタイルはどこからインスピレーションを受けていますか?

オーナーが過去、見てきたもの・着用していたものがベースになっていますね。そのフィルターを通して、「市場に無く、プラスアルファで作ったら面白い物」がKEBOZを構成しています。昔の野球のポスターからインスピレーションを受ける事もあるようで、そこはファッションデザイナー的な道程と似通っているかもしれません。

特に「昔、自分が買えなかった物」がベースになりやすく、それを買えるようにしたいという気持ちが強いようです。余談ですが、価格を低めに設定しているのも、オーナーが過去、洋服を十分に買えなかった経験から「買いやすい価格」に設定されています。ブームが来ると転売され、プレ値で販売される事も多いので、そのような事も回避したいという思いもありますね。

KEBOZ公式オンラインストア

— 確かにKEBOZの製品は、実際に手にとってみて値札を確認すると「安い」と感じるくらいの価格設定になっています。製品のクオリティ(デザイン・品質)が高い事も理由だと思いますが、それができている理由は何なのでしょうか?

とにかく「やりたいことを徹底的にやる」が社是のように全社的に浸透しているので、それがクオリティに繋がっている認識はありますね。極端な話、今の時代は誰でも服が作れてしまいます。インターネットや本からでも十分な知識は得られますし、「今っぽい」服作りは誰でも可能になっています。そんな時代にモノで差別化するには、自分というフィルターを通してアウトプットされたモノしかありません。だからこそ、オーナー自身が過去にインプットしてきたモノが重要だったのではないでしょうか。アパレル出身じゃないからこその発想もたくさんありますので、それもKEBOZの遊び心に強く影響していますね。

商品を購入するとステッカーが付いており、ショッパーはナイロン製で普段使いもできそう

「体験価値」を重視するKEBOZならではの出店戦略

— 出店場所がアパレルとしてはとてもユニークですが、ブランドとの相性を考えての事でしょうか?

蔵前は日本のブルックリンと呼ばれる場所で、物作りがとにかく活発なんです。なので、その街の良さというのはありましたね。しかし一番の理由は「やや中心から離れている場所」だからです。大阪の堀江などもそうですが、「KEBOZ」にわざわざきてもらえる場所を選んでいます。

このご時世、オンラインで何でも手に入りますから「お店に行って買う」という行為が過去より大きく減ってきています。我々の時代には、「このスタッフカッコいいな」「あの人がいるからお店行こう」という来店動機があったものですが、それがやや希薄になっている今、わざわざ「そのお店に行ってみたい」を再現したいのです。

— 内装もユニークですし、店舗によっても違いを感じますが何か理由があるのでしょうか?

内装の至るところにも野球の要素は散りばめられていますね。スタジアムチェア(実際に使われているものをモデルに作成)やバットの装飾、グローブをモチーフにしたソファや本物のグローブなども置いています。ガチャガチャを回すと非売品のアイテムが貰えるようにもしています。

1回500円のガチャガチャは顧客の射幸心を煽る

ガラナというドリンクも販売しているのですが、これは北海道のソウルドリンクです。デザインだけは完全にKEBOZのオリジナルでデザインしています。KEBOZカラーで作る事でブランドを覚えてもらいやすく、また飲んだ後に自宅で飾っていただけるようなデザインにしています。

ケボズガラナは懐かしい味がした

これらは当時の裏原の文化に影響を受けたものが色濃く出ています。
お店によって内装を変えているのは、お客様が近隣以外の店舗にも行ってくださることが多いからですね。(現在、東京・大阪・名古屋・福岡・北海道に出店)全部が全く同じ内装ですと、我々が大切にしている「遊び心」が無く、お客様にも楽しんで頂けません。置き物の工夫から店舗の個性など、どの店舗に足を運んで頂いても楽しめる環境はご用意しております。

— 製品・店舗とお話をお伺いしましたが、お客様の「体験」に強いこだわりを感じます。それが今のお客さまの熱狂の要因でしょうか?

お客様の体験は社内でもとても重要視しています。その体験からか、お客様同士がお店で会話し、仲良くなる事も珍しくありません。

(実際に筆者は店頭でガチャを回している際に若者に声をかけられ「何が当たりました?僕はこれを狙っているんですけど…」という会話がありました。)

昨今ではよく「オンラインとオフラインの境目をなくす」「OMO」という言葉を耳にしますが、我々はそれをお客様に強要したくはありません。それは、お店でしか楽しめない体験が確実にあるからです。特に店舗で得られる体験というのは大事にしたいのです。先ほどの、「お客さんが話しかけてくれる。お店でお客さん同士が仲良くなる。」は他のブランドにはあまり無い要素ですし、それを実現できているのは今の取り組みがあってこそです。

— 製品・店舗だけでなくスタッフを全面的に露出しているのもKEBOZの特徴のように感じますが、意図的にやっていますか?

お客様からは「KEBOZのスタッフと喋るのが楽しい。」というお声をよく頂きます。セールストークばかりでなく、世間話ができる・気軽に寄れる。憧れてもらえるスタッフを目指しているからこそのお声ではないかと。「店舗はお客さまと楽しむ場」ですからね。だからこそ、スタッフの露出はお客様の体験と密接に関わっていると認識しています。

結果、お客様からの口コミにより、KEBOZの輪が広がっています。店舗に友人を連れて来てくださるケースや、知人の話を聞いて来店されるケースが多いですね。もちろん、instagramの投稿が好きで見に来てくれる方も大勢いらっしゃいますので、お客様の接点となる部分は絶対に手を抜きません。

公式Instagramのフォロワーは14万人を超える

Appifyを活用したWEB戦略の展望

店舗とECを同じ体験にする必要は無いと考えていますが、それでもWEB・モバイルアプリを通しての体験価値は上げていきたいと考えています。今考えているのは、「WEBコンテンツの充実」ですね。ただ単に物を販売する・記事を掲載するだけのECでは嫌ですから。WEB上でもお客様が楽しめる場にしていきたいです。特に店舗数が増えてきていますから、より一層WEBでの体験価値が問われるようになってきています。WEBメディアのような見え方にするのが理想ですかね。YouTubeもスタートしていますし、読み物でも動画でも、見るだけで楽しんで頂ける場を創りたいです。

そのような場の構築に、Appifyにてノーコードで各ページのデザインが編集できる機能はとても相性が良いと考えています。ショップとしての個性が出しやすいですし、店舗ごとのページをアプリ上で作成する事も可能ですから。店舗との境目を無くすのではなく、WEB・モバイルアプリの特性を活かして楽しめる場を構築していくのに、この柔軟性はありがたいですね。

また、店舗やお客様が増えますと、お客様一人一人のお顔が見え辛くなります。そこはWEBの力を借りてお客様の購買履歴を確認し、その上で仕掛けをしたいですね。Shopify×Appifyで、どの接点でどのお客さまが何を購入されているか?がとても簡単に確認できるので重宝しています。

また、意外と商品ご購入の際にアプリの会員証の確認から、「◯◯店にも行かれた事があるんですね。」と会話が弾む事もあり、至るところでモバイルアプリ導入の恩恵を感じます。アクセス状況を確認しても、95%がモバイルからの流入ですし、それならサクサク動くモバイルアプリがお客様にとっても利便性は高いです。あと、お客様の視点で「当たり前にあるもの」は導入していきたいですね。会員ポイントなどはその一つです。Appifyと連携して、アプリでバーコードが出せてポイントが貯められるという一連の行動を格安で実現できるのはShopify×Appify(VIP含む)の強みだと感じます。

編集後記

製品・店舗・WEBとECを統括される水田さんにお話をお伺いしてきましたが、終始一貫していたのは「お客様が楽しめる場」「遊び心」「やり切る」という姿勢でした。中の人たちが「自分たちが楽しい(と思える)場所作り」を常に考え・動いているその熱がお客様に伝播し、それが今の熱狂に繋がっているように思えます。

KEBOZの店舗には旅行で来られる方も多く、遠い場所だと沖縄から来られる方もいるそうです。神宮球場で野球を見るために旅行するから、KEBOZを着用して球場に行き、そこから店舗に来られる方もいらっしゃれば、KEBOZのポップアップショップがあるからその近隣で旅行を計画し、そのまま店舗にも寄る場合もあったりと、「わざわざ来てもらう」が全国規模に波及しているのは興味深い現象です。

instagramに投稿するビジュアル一つ取っても、わざわざ神宮球場を借りて撮影するなど、やる事全てにこだわりと徹底ぶりが見られますが、そのような熱量こそが強いブランドとお客様の熱狂を作り上げていると感じさせられるお話でした。

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