A-03 STがChatGPTに聞いてみた!「リッカムプログラムってなに?」

こんにちは、ことばやコミュニケーションの専門家 言語聴覚士のSuke(すけ)です。
この記事ではことばの専門家である言語聴覚士(通称ST)が、ChatGPTに様々な質問をしてみるシリーズの第3段です。

1.リッカムプログラムとは?

 唐突ですが皆さんは「リッカムプログラム」をご存知でしょうか。聞きなれない単語であり、テレビや日常生活ではまず出てこないキーワードと思いますが、この「リッカムプログラム」は"幼児吃音の治療法"の一つです。
 前回の記事では、吃音の原因は解明されていない、治す薬もまだ開発されていないとお伝えしましたが、成果が出ている治療法も存在しており、その一つがこの「リッカムプログラム」です。この方法は、世界中に広まり、現在では様々な治療効果のエビデンス(論文発表)も出されています。
 さて、どんなプログラムなのかChatGPTに聞いてみると、どのように説明してくれるでしょうか。日本人のSTの先生方でSNS等で説明くださっている方もいらっしゃいますが、ChatGPTは海外の情報も収集しています。国内と海外でなにか説明に違いはあるのでしょうか? そんな疑問から今回のキーワードを聞いてみました。

2.実際にChatGPTに聞いてみた!

「リッカムプログラム」ってどんな治療法?

 リッカムプログラムは、子どもの吃音症状を対象とした行動療法であり、 オーストラリアの心理学者であるリッカム博士が開発しました。この治療法は、オペラント学習という学習理論を応用して、子どもの流暢な発話を強化し、 吃音を減少させることを目的としています。
プログラムの特徴:
 ①専門性: リッカムプログラムは、言語聴覚士によってのみ実施され、数カ国の職能協会によって公に承認されています。
 ②親の参加: 親や養育者は、専門的な知識を持った臨床家による継続的な訓練及び監督の下で、プログラムを行います。親は子どもの発話に対して言語的随伴刺激を与えることが求められます。
 ③重症度評定: 子どもの吃音症状の重さは、重症度評定(SR)尺度を用いて常に測定されます。この尺度は0から9まであり、0は吃音がまったくみられない、9は非常に重度の吃音を示します。

治療の進め方:
 ステージ1: 吃音がまったくみられないか、ほとんどみられない状態を目指します。
 ステージ2: 長期間持続的に吃音がまったくみられないか、ほとんどみられない状態を目指します。

治療の効果:
 リッカムプログラムは、子どもが普段の発話パターンを変更するよう指示されることはなく、親も普段の発話パターンや家庭生活のスタイルを変えることなく、子どもの吃音に対して効果的なフィードバックを行います。
 治療を受けた多くの児童が流暢に話せるようになると報告されています。
国際的な認知と普及:
 リッカムプログラムは、オーストラリアを含む各国で治療の有効性が認められており、日本でも言語聴覚士が学び、広がりつつあります。
研究と発展:
 オーストラリア工科大学付属の「オーストラリア吃音研究センター」など、世界的にも珍しい吃音の研究・臨床機関が存在し、リッカムプログラムの効果に関する研究が行われています。

 リッカムプログラムは、子どもの吃音治療において、親と臨床家が協力して取り組むことで、子どもの発話の流暢性を高め、吃音を減少させることができる効果的な方法とされています。
 このプログラムは、子どもたちが自信を持って話すことを学ぶための支援として、国際的にも広く認知されている治療法です。また、日本を含む多くの国々で、言語聴覚士による専門的なトレーニングを通じて普及が進んでいます。
 吃音のある子どもたちが、より流暢に、そして自信を持って話せるようになるための一助となることを目指しています。

ChatGPTより(2024年6月現在)


3.その回答ちょっと待って!!!

おやっ!?と思うポイントが2点あったので、取り消し線の部分を修正補足します。

修正① 開発者は…
 開発者はリッカム博士ではなく、MarkOnslow(マーク・オンスロー)先生です。リッカム(Lidcombe)という名前はシドニー郊外に実在する地名です。
(リッカム博士に関する情報がありましたら、是非コメントください!!!)

修正② 評定の段階は…
重症度評定は、内容が更新されており2024年現在は「0〜10の11段階」が最新の情報です。この評定は、言語聴覚士とプログラムを受けるママやパパとの間で同じ値に記録が出来ることがとても重要なポイントです。

4.私のことばで補足①~③!

 私のことばでリッカムプログラムを一言で説明すると、「オーストラリア発祥の、親子で楽しく行う幼児吃音の行動療法」です。この治療法は、「吃音症状が出ていない時に正しい刺激を行うことで、スラスラ話せる良い状態を増やしていこう」という考え方のアプローチです。
 ChatGPTの回答に補足したいポイントは3つです。
① 毎日 10〜15分の練習タイム行う
 日常生活の中で、遊びや宿題などをテーマに会話の時間を作ります。この練習タイムの中で、正しい刺激(上記の言語的随伴刺激)を行っていきます。良い状態で1日をスタート出来るように、朝に行うことが推奨されています。練習タイムの内容は、お子さまの好きな絵本、玩具などを使用して遊びの中で自然な会話を促していきます。



②言語聴覚士と定期的なセッション
 吃音症状の経過、正しい言語的随伴刺激が行えているか、練習タイムが楽しくできているか、こんな時はどうしたらいいの?質問など、言語聴覚士が正しくプログラムが進んでいるかを定期的にチェックしてサポートします。ステージⅠは、週に1回ほどの頻度で面談し積極的に正しい刺激を与えていく期間、ステージⅡは吃音症状が良くなった状態をキープしながら、徐々に刺激を減らしていく期間です。合わせて言語聴覚士とのセッションも徐々に頻度を減らしていきます。

③ワークショップを受けた言語聴覚士が推奨
このプログラムは言語聴覚士であれば誰でもできるわけではなく、専門のワークショップを受講することが推奨されています。発祥地のオーストラリアから先生が来日し、対面でのワークショップが年に1回ほどの頻度で開催されています。すでに受講済みの言語聴覚士は約500名ほどです(2024年5月現在)。


5.どんなお子様が対象?

 リッカムプログラムは6歳までの未就学児が推奨されています。それは、脳の発達が関係して正しい刺激の効果がおおよそ6歳ごろまでが高いこと、小学校へ入学すると生活習慣が変わり施設に通うことが難しくなる、などの背景があるからです。
 これは、「7歳以上のお子様は受けられない」というわけではありません。どの程度まで改善するかは個人差があり、少しでも改善することで生活が楽になるのであれば、プログラムを受ける意味はとてもありますので、小学生への実施も行われることがあります。
 一方、「吃音は必ず治さなければならない!というわけではありません」。日常生活の中で、不安や悩みや苦しさが無ければ、無理に治療を進める必要はありません。


6.どこでリッカムプログラムを受けられる?

 専門のワークショップを終了している言語聴覚士は、自治体の福祉機関をはじめ、小児の病院やクリニック、民間の障害児通所支援施設(児童発達支援や放課後等デイサービス)、特別支援学校や学校支援級、個人開業のことばの教室など様々あります。
 このリッカムプログラムは毎週の頻度で言語聴覚士とのセッションを受けるため、お住まいから通える範囲の施設を推奨です。ウェブサイトやSNSなどで、「リッカムプログラム 〇〇県」など地名を加えて検索すると見つけやすくなります。もし、通えそうな候補の施設が見つかれば、まずは電話やメールなどにて一度お問い合わせをしてみましょう。


7.受けられる施設が見つからない場合は…

・検索しても通えそうな施設が見つからない…
・候補の施設を見つけたが、〇〇ヶ月待ち…

などなど、リッカムプログラムを受けたくても受けられないとお悩みの方がいらっしゃいましたら、私のことばの相談室では、オンラインにて吃音のご相談や、リッカムプログラムを提供しています。
 小児科の先生の診断書や紹介状などは必要なく、年齢も問いません。まずはご相談にてお話しを伺いながら、リッカムプログラムをご提案しています。
 初回は無料相談を実施していますので、お気軽に下記のホームページよりお問合せください。


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