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【自閉症スペクトラム】1人遊びの子は輪に入れる?放っておく?

3歳以降は、遊びでの子ども同士の交わり合いが徐々に増えてくる時期です。特に、年中、年長では、子ども同士の遊びがより活発になります。そんな中、他児の輪には入らず、1人で黙々と遊んでいる子を見かける事があります。保育者や支援者は、こういった場合どう対応したら良いのでしょうか?

上記は、自閉症スペクトラムのお子さんが、集団の中で見せる事のある姿で、今回は「発達障がいの子の対応」という切り口で記事を書いています。ただし、このような様子が見られたからといって発達障がいというわけでも、発達障がいの子が全てこのような様子を表すわけでもない点はご理解下さい。

このテーマを小児科医の石川道子先生と、言語聴覚士のももさんとのインスタLiveでお話しました。以下は、その内容を一部抜粋し、言い回しを修正したものです。


遊ばない理由①遊びの段階のちがい

よく自閉症スペクトラムの子たちの遊びの例とされるものに、ミニカーを並べるとか、車をひっくり返してタイヤをくるくる回して遊ぶなどがあります。そのレベルの遊びをしている子は、ミニカーという物が持っている本来の遊び方(機能)にそって遊んでないのです。

タイヤの部分的なところを見てるし、並べるのは同じ色どうしを集めるとかパターンを繰り返すことに興味があるのかなと思います。

こういった遊びは、3歳や4歳の遊びの内容といわば段階が異なるため、展開されてる遊びの楽しさが共有しにくいために、一緒に交わって遊べないとい可能性があるのだと思います。

3歳以降の同年代の子にとっては、並べたり、くるくる回したりする遊びよりももっと面白い遊びがあるよ!という話になりますし、反対に自閉症スペクトラムのお子さんにとっても相手の遊びが楽しいとは限らないのです。

遊ばない理由②人の介入で嫌な経験をした

自閉症スペクトラムの子がみんなの輪に入って遊ばない2つ目の理由は、あまりに遊びに没頭しすぎて周囲が見えていないことで、他の人の介入が自分の行動をかき回される「嫌な経験を積む」ということです。

介入してくる相手が大人であっても、集中している遊びを邪魔されたくなければ、手を振り払ったりすることがあります。ましてや、介入してくる相手が子どもだと、相手の子も人と仲良く遊ぶ力が未熟です。そのため、自分のペースでいきなり関わったり、手が出たりすることがあるので、余計に嫌な思いをすることがあるのだと思います。

自閉症スペクトラムに子たちは、子どもの遊びの中に入ると、圧倒的に物を取られてることが多いんです。周囲が見えてなく相手の行動を予測してないので、物を取られることに抵抗する暇もないという形です。

そういった経験を繰り返しているうちに、子どもが側にいると物を取られることに気が付くので、手を払ったり、引っ張られたら渡さないぞと掴んだりするようになります。人に向かって「やめて。」と発言をする前に、物だけを死守する行動が出てくるのだと思います。

ここで、DCD(発達性協調運動障がい)が災いになります。不器用ゆえに物をしっかり掴めないので、結果的に物を取られることが増えるのです。

そこから普通に学習すると、人が居るところで遊ぶことは減りますよ。物はなくなるし、取らないでって頑張っても、取られちゃうという経験をするので。また、やめて欲しくて手が出た子は、「どうしてお友達に手を出すの」と怒られるし、まだ言葉では出ない子は「ぎゃー」と大きな声で抵抗して、それ自体が問題として扱われたりします。

だから、物と戯れることが楽しいなと分かったら、人を介して「これも楽しいでしょ」と遊びを広げていく過程は、子どもではなく、大人がやってあげた方が良いと思います。そうしないと意固地に一人で遊ぶとなっていきます。

遊ばない理由③物の共有が難しい

自閉症スペクトラムの子の特徴として、ものの共有が難しい点があります。1回遊んだことのある物は自分のものになってしまうので、物の所有権が日によって変わることの理解がとても難しいのだと思います。

過去に、とても賢い子が年長のころにお友達に手が出るという話がありました。そこで、先生は、できるだけ手が出ないように、本人が役割を果たせるような用事を設けて、先生が指示をした用事をして褒められる流れを作ってたんですよ。

当然なんですが、後々、僕もやりたいという子がでてきます。それで、先生が困って判断できないうちに、他児がその子の代わりに用事を済ませてしまいました。そのタイミングで、手が出たんです。その時は、自分の役割だからやめろよ!という程度ではなくて「本当に成敗してやる!」くらいの手の出し方だったようです。

落ち着いてから、その子がどう考えたかを先生が聞いてくれたら、「先生が僕に紙芝居を取らせてくれたので、紙芝居は僕のものだと思ってた。」と言ったそうです。また、「きっと、お母さんが、僕のために紙芝居を置いておいてくれた」と思っていたので、他児が自分の家の私有財産なのに勝手に取ったと思い違い、あいつは泥棒だ!いうことで怒ったそうです。これは僕のものじゃないということを言語的に説明してあげると、とてもびっくりしてたそうですよ。

年長さんで、かなりIQ高い子だったんですけど、このような理解になることがあることにはっとさせられました。

物の所有という暗黙のルールを理解するには


「今日はこのおもちゃで遊ぶ」という自分の所有権が分かるようにしてあげると良いと思います。例えばかごの中におもちゃを入れるとかです。

ここで問題は、入れ物からおもちゃが出たときに、再び所有権が分かりにくくなります。

そういったときは、物にシール貼って、所有権が分かる目の手掛かりを示す方法もあります。最初は、ルールがはっきりした方が落ち着いて遊べるのではないかと思います。

万が一トラブった時にも、どっちのシールが貼ってある?という点で整理できますよね。そして、どうしても貸してほしかったら、「かして」のルールを適用できます。

そのうち、お友達と一緒に遊んだ方が大作が作れると分かれば、今日は合同でやろう!という気持ちにもなりやすいかなと思います。たとえば、興味関心の近いお子さん同士で遊んだら、電車の線路が思っていたよりもすごく長く繋げられたとか。所有マークがあると、お友達の輪に入れたから、こんな長くなったというのが分かりやすいメリットもあります。

なぜ発達障がいの子だけ特別?

こうやって発達障がいのお子さんに合わせた対策を講じていると、「どうしてこの子だけが特別なの?」と言い始める子もいると思います。

でも実は、ユニバーサルデザインだと、この方法はみんなに適応しなきゃいけないと思います。

そして、実際に取り組んでいた園があるのです。3歳児になったらみんなかごをもって、その中におもちゃを分けます。

そうすると、定型発達の子は少ない玩具では遊べないと気づくので、お友達と一緒にやろうという形に広がっていきます。

一方で、自分の流儀に執着するタイプの子は、少ないおもちゃで人から侵略されない状態をしばらく楽しむことができます。時間が経つと、周りをちらちら見るようになって、周囲はより規模の大きい物で遊んでると気づく場合があります。その時に、大人が介入しながら大きな集団に混ぜてもらいますが、その代わり「自分だけのものじゃなくなるよ」と話します。それで、大きな集団を抜けたいときには、僕のおもちゃ返してって抜けたらいいからね、って教えていく形です。

大人になったら、マニアックな趣味をやってる人って人に邪魔されたくないと思います。そういう場合には、あの人凄いよ、専門的だよ、となりますよね。でも、子供の場合って意外とそういう事が許されず、一人で遊んでるのがダメみたいに言われることが多いです。

もちろん、みんなと遊ぶ楽しさも経験した方がいいとは思いますが、その子のタイミングじゃない時に急いで輪に入れようとすると、みんなの中に入るのがとても嫌な経験になることは注意が必要ですね。

感覚が過敏で集団の中に入れないみたいな子もいますし、DCD(発達性協調運動障害)で、操作が上手くできないために、遊びが広がらない子もいるので、お子さんの状態を見て輪に入れるかは慎重に動いた方が良いですね。

遊びは段階だけでなくやり方を観察する

「つもり遊び」という遊びのレベルは、遊びとしては高度と言われますが、一見つもり遊びのようにお人形をもったりしている子も、よく遊びの様子を見ると、ぬいぐるみを持ってるだけで、特に何もしてないといった場合もあります。

多分、いろんなもので操作して遊ぶことが上手に出来ないから、見たことを再現、セリフを再現しているだけで、遊びとしては「つもり遊び」でも遊びとして成熟していない子もいるんですよね。

過去にジャングルジムでよく遊ぶ子がいたんですけど、よく見ると確かにジャングルジムを上って降りてを何回も繰り返しているんですけど、登り口と降り口、コースが全く同じなんです。
お友達がコースの途中に居ても、ちょっとどけたりして、絶対自分のコースを壊さないで、もくもくと遊んでいる子がいましたね。

遊びが、同じ繰り返しになってる時には、少し介入した方がいいですよね。本人は嫌かもしれないけど。それ以外のやり方もあるんだって気づいた方が、もっとジャングルジムを楽しめるかもしれないですよね。

そのルートをひたすらたどっていくことに、心地よさを感じているからこそ、そのような遊び方だと思うんですけど、やはり思考としてそれ以外のパターンがあるとか、それ以外の遊びの展開があるって広がらないお子さんは、少し大人の介入が必要です。

無理に広げるというよりも、アイディアを広げる形ですね。

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