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他害がある子に「手を出さずに、言葉で言おうね」を教える方法


3歳以降、特に4歳を過ぎてからは、嫌なことがあっても相手に言葉で伝えられるようになり、相手に手が出ることが少なくなってきます。しかし、中には、普段は会話が上手にできるのにも関わらず、トラブル時にはいつも手がでる子がいます。手がでる子には、「手を出すのではなく、言葉でつたえよう」を教えたいもの。では、どう教えていけば良いのでしょうか?


※上記は、発達障がいのお子さんが、集団の中で見せる事のある姿で、今回は「発達障がいの子の対応」という切り口で記事を書いています。ただし、このような様子が見られたからといって発達障がいというわけでも、発達障がいの子が全てこのような様子を表すわけでもない点はご理解下さい。

手がでている時は、どんな状態なのか?


人に手が出てる時は、本人としては良い行動がとれない、新しいことを覚えていけない状態が想定されます。

 だから、まず、あれこれ教える前に、「手を出していること自体を止める」を第一目標にすることが大事です。つまり、お友達に手を出すことが続かないような環境をつくり、手を出さないことが良いことだ、という学習に繋がるようにしていきます。

お友達に対して怒りの矛先が向いているならば、お友達の姿が見えないようにするのが一番良いです。具体的には、お友達から引き離すことだったり、大人の叩こうとしてる子と、叩かれる子の間の壁になって、視界を遮ったりすることです。

怒りの矛先が子どもだったのにも関わらず、壁になった大人に手が出る子もいますが、その場合は、「自分の気持ちを相手にぶつけたい」というよりも、「気持ちが爆発して制御できない状態」だと考えるのが妥当です。間に割り込んで入った大人に手をあげる時には、叩かないでねという意味を込めて、手で静止してあげてください。その時に、なるべく、「叩くのは悪いこと」のような説明をせずに、ただただ止めれば良いと思います。だって、脳機能が正常な状態ではないので。

これができるのは 幼児〜 マックス小学校の低学年までだと思います。 体が大きくなると大人でも止めることが難しくなりますし、学校では大人の目も行き届きにくくなるからです。

もし、言葉かけをするならば、本人が叩く代わりに言葉にできると良いな、というセリフを止めながら言ってあげると良いです(代弁)。「悔しかったね。」とか「邪魔しないでほしかったね。」のような形です。

ただし、言葉かけをしたからと言って、その言葉が子どもに浸透していくかは、あまり期待しない方が良いと思います。あくまで、いつか言葉かけが届けば良いなくらいの気持ちで行うことが大事です。また、周りで見てる他のお子さんたちへの状況の解説にもなるという点で、代弁をするのは大事なのです。

いつ「手を出さずに、言葉で言おうね」を教えるのか


落ち着いてる状態の時に、話しを聞いて理解できる子の場合、本人が周りの子たちの争いごとを客観的に見ている時に教えていきます。客観的に見て、「手を出してるお友達が居たらどう思う?」のように、聞いていきます。

ソーシャルスキルトレーニングで、カードを使って客観的にトラブルを捉えるというやり方がありますが、その簡単バージョンという形です。意外と、自分は手が出ちゃうタイプの子でも、冷静な時には「あの子は悔しかったから手を出してる」のような解説する子もいます。そこまで状況を理解できていたら、「なるほどね。でも手を出すのはダメだよね。」を必ず添えていきます。そして、「叩かないでどういう表現をしたら良いのだろう?」というのを、一緒に考えたり教えてあげたりすればいいと思います。

ソーシャルスキルトレーニングのカードは、分かりやすく描写してある代わりに、同じ場面に限定されています。現実に起こる揉め事は、メンバーも変わるし、場所も出来事も違います。ですから、カードでの練習の前に、現実の揉め事が起こった状況を理解できるのか、を確認すると良いですね。

言葉の力が未熟な子への対応


一方で、落ち着いている状況でも、言葉の理解力が説明を聞いて分かるほど身についていなかったり、言葉で自分の気持ちを表現することが難しい子の場合、とても争い事が起こった場面で「言葉をうまく使って相手に気持ちを伝える」なんてできません。

だから、そういった言葉の力が弱いタイプの子には、「叩いたら相手が傷つくとか」「言葉で言おうね」のようなことを言葉で伝達することはしません。もっと、その子が成長したタイミングを狙って伝えていきます。

ですから、言葉の力が未熟なタイプの子が手を出し始めた場合に最初に取り組むのは、「手を出す経験を増やさない」ということです。集団活動中に手がで始めたのであれば、思い切って集団から離す方法もありということです。それは、本人が興奮している状況で集団の中にいると、本人も意図しないうちに人を叩いたり、物を壊したりという経験を積んでしまうかもしれないからです。

集団活動中に癇癪が起きて、集団から離す場合も、「活動に参加はしないけど、遠くから見ている」という形で落ち着ける子と、「集団の活動が見たらダメ」という子がいます。前者の場合はこの位置から見ようねと指定すればよく、後者の場合は、集団が見えないところに移動させた方が良いと思います。

社会性の発達がゆっくりな子は、集団生活の経験をすることはもちろん大事なのですが、最初から全て周囲の子と同じペースを求めると、本人がしんどくなって、手がでやすい状況になる場合があります。反対に、短い時間、限定された場面、少人数、といった形であれば、楽しく集団生活が経験できる場合もあります。


大人になって他者と共存していくために


子どもが成長し大人になった時に、どんな環境で生きていくとしても、人が全く居ない社会はないと思います。たった1人での仕事は物凄くレアです。

そうすると、人と接していつもの自分のように振る舞えない時に(カッときたり、ドキドキして不安になった時)、どう振舞えばOKなんだろう、ということは、大人になるまでのタイミングで身に付ける必要があります。

例えば、「これは、まずいな」と思ったら、席を外して一回リセットかけることが、重要なやり方の1つなのです。

幼児期はそういった方法を自分では取れないので、「自分が調子が悪い時は一旦はずれて、また復帰すればよいよ」という方法を大人が体験としてさせてあげると良いと思います。離れて戻ってくる方が、手を出したりするよりも、平和的解決だという経験をしていくということです。

知的に高いお子さんは、集団活動中に自ら勝手に外れて、勝手に入るという方法を取る場合がありますが、集団生活では「自分勝手」とみなされて大抵怒られています。でも、自分の気持ちのコントロールのために、そういった行動を選べているのであれば、本当は認めてあげて欲しいです。

「席を外してリセット」を、誰が教えていくのか


活動中に、気持ちが崩れて、手が出そうになった場合、誰が活動の外に出すかは大事なポイントです。

相手の子どもに対して手を出してる状況で、担任の先生が壁になってくれたことに対して、「先生も、相手の子どもの味方なのか?!」と逆上して担任の先生にも手が出た時には、外へ連れ出す役目は、担任以外の先生がした方が良いです。担任の先生が刺激になるからです。

しかし、集団が落ち着いたタイミングで、叩いていた子を部屋に連れ戻す役目は、その子と関係性ができている担任が行った方がよいですね。迎えにきてくれる人が、信頼できている人でないと、見捨てられたような気持ちになるので。

担任の先生が、集団の活動にかかりきりの場合は、まずは集団の活動を終えてからでもいいともいます。きっと、怒っている時間は長いタイプの子が多いためです。

最初から、担任に手が出ていない場合は、状況的に叶うなら、部屋から出すことも、戻すことも関係性ができている担任が行うといいと思います。担任というのは、「関係性が一番できている」「その人の話なら落ち着いてきける」前提ですが・・・

暴れて外に出すのも大変な子はどう対応?



時々、外に出すタイミングで大暴れする子がいます。その場合、外に出さなくても、場所の移動できればよいので、寝そべったりしたら寝かした状態でクッションの上で休んでもらう形でも良いと思います。

また、取り乱している子は、「自分が安全じゃない」と思っている状態です。だから、初めて外に出される時は、「外に出されることが安全かわからない」ので、取り乱すことが多いと思ってください。

そう考えると、声かけは、強い声かけじゃない方が良いです。「気持ちが落ち着くまで外に行こう」「先生見てるからね」のような形です。ちょっと外いこっか、くらいの感じで。

最初は、絶対抵抗しますが、1回出れば、2回目3回目はそんなに抵抗しないと思います。1回出て大丈夫だったという、経験を積める方が望ましいです。もし、1回目外に出す時に、本人が恐怖でいっぱいな時に、みんなが押さえつける形を取ると、恐怖をプラスしちゃうので、外に出されるのが怖いことになるので、注意が必要です。

少なくとも、叱責しない方が良いですね。もの落としたり、壊したりすると、あわてた声で叱責すること多いと思いますが、大人の方の興奮が子どもにも伝わるので、余計に行動が強まる場合があります。

「大丈夫だよ、どうにか落ち着くからね」というメッセージを大人がいつも子どもに対して出すことが大事だと思います。


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