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集団生活で友達に手が出る子への対応(4歳〜)

3歳以降、特に4歳を過ぎてからは、嫌なことがあっても相手に言葉で伝えられるようになり、相手に手が出ることが少なくなってきます。しかし、中には、普段は会話が上手にできるのにも関わらず、トラブル時にはいつも手がでる子がいます。こういった場合、園生活ではどのように対応すれば良いのでしょうか?
※1歳や2歳の時は、嫌なことがあると手が出たることは、よく見られることです。

上記は、発達障がいのお子さんが、集団の中で見せる事のある姿で、今回は「発達障がいの子の対応」という切り口で記事を書いています。ただし、このような様子が見られたからといって発達障がいというわけでも、発達障がいの子が全てこのような様子を表すわけでもない点はご理解下さい。

このテーマを小児科医の石川道子先生と、言語聴覚士のももさんとのインスタLiveでお話しました。以下は、その内容を一部抜粋し、言い回しを修正したものです。

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https://www.instagram.com/hattatsu.hoiku.gakkou/?hl=ja

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手が出てしまうタイプとして2つ考えられることがあります。

①人を意識せず、たまたま人に手が当たっているタイプ
②人にアピールする形で、人を意識して手を出してるタイプ

どちらのタイプかで、対策は変わると思います。

人を意識せず、たまたま人に手が当たっているタイプ


人を意識していないタイプのおもしろいエピソードがあります。小学校に入って運動会でかけっこをした時に、自分が抜かされると、お友達を突き飛ばす子がいました。それで、本人に聞いてみたら、「人と一緒に走って、自分が1番の時には視界は開けて向かう方向が分かるんだけど、人が来られると前が見えなくなって視界が遮られるので、手で払った。」と言ったんです。そして、尋ねた時には「え?え?〇〇君だったの?」という反応でした。つまり、誰を突き飛ばしたかも分かっていなかったようです。

発達障がいをお持ちのお子さんの中には、DCD(発達性協調運動障害)を持っている子もいるので、運動に集中すると、他のいろんな情報を上手くとれていない場合があるのです(人一倍、走る方にエネルギーを使うので)。よく、車の前に飛び出す子なんかも、走る方に意識が向いていて視野が狭くなっているのだと思います。

夢中になっている時は上手く情報がとれないので、「どうしたら良いかな?」と考える暇もなく、反射的に相手に手が出ているのだと思います。

だから、お友達に「何するの!」と言われても、「別に何にもしてない!」ということを言う子がいますが、本当に無意識だったりします。このタイプの子は、早い時期から人と言い合うような経験が増えてしまいます。

園での対応

叩いた子に悪気はなくても、事実として、叩くことが起こっています。
その場合、大人としては

「今、こういうことをしてるように見えたよ。」「叩いたの覚えている?」

のように、客観的にみた状況を伝えた上で、本人に叩いた認識があるのかを聞いていきます。なんせ、本人に認識がない場合があるので、いきなり「何してるの?叩くのはダメでしょ。」と言わないことです。

そして、お友達を叩く行為自体は辞めさせないといけないので

繰り返し叩けない環境に調整します

例えば、何か没頭してそうな時には、大人が人と人との距離を取れるように調整します。また、周りの人をよく見ているタイプの子には、「○○ちゃん、一生懸命やっている時にそばに行くとびっくりして、手が飛んでくることがあるのよ。」「だから、一生懸命やってるときに、邪魔しないでいてあげてね。」「近づく前に、声をかけてあげてね。」などと伝えていきます。

わざとじゃなくても「ごめんなさい」は必要か


「叩こうと思って叩いたんじゃないのは良く分かったけど、お友達にあたってたみたいよ。」と事実を本人に伝えた上で、「お友達にあたってた時にはどうするかな?」と本人に回答を求めてみると良いと思います。

その時に、大人としては、「謝る」という方法が本人から出やすいようにヒント出したりします。自分がこのシチュエーションでは謝った方が良いと考えられた時には、素直に謝れることが多いです。

でも、本人が叩いていることに気づく前に、「謝らなきゃダメでしょ!」と言うと、事実を完全に受け止めてないうちに、謝罪を求められて、混乱するするので注意が必要です。

中には、「絶対に、自分はそんなことしてない。」と言い張ってくる子もいます。そういった場合には「そうだよね、夢中になってると、周りのお友達に気づきにくいことあるよね。」と本人に伝えていきます。「叩いているのは、気づいてないなって思ったよ。すごい夢中でやってたもんね。凄い集中力だからね。」と。

ポイントは、本人の主張は受け止めつつ、「(夢中になっていると)こういうことがある」ということを責めずに伝えていく姿勢です。それが、繰り返していく中で何回も言われていくと、子どもにも自覚が生まれてきます。自覚が生まれてくることで、「夢中な時は、気をつけよう。」という形に繋がりやすいと思います。

どんな言い方でも「責められている」と感じる子の対応

自閉症スペクトラム(以下ASD)のお子さんの中には、状況を淡々と説明していたとしても、「非難されてる」と感じやすい子がいます。

ASDの子の中には、どうしても○(正解)が欲しい人がいます。正解が欲しい人たちにとっては、「あなたの答えは、不正解よ。」と言ってるように聞こえるのだと思います。

だから、状況を伝える前に「これからいう事は、あんまり気持ちよくないと思うんだけど。」のような前置きをします。

もし「わー!聞きたくない!」となれば、「嫌な話だったから、嫌な気持ちになるの当たり前だよね。」と肯定してあげたらいいと思います。その気持ちご、受け止めていくことを根気よく続けると、変わってきます。

人にアピールする形で、人を意識して手を出してるタイプ

このようなタイプは、「とっさの時に言葉が使えないので、手が出る」という傾向がありますことです。

手が出ているうちは、言葉を上手くつかえない状態になってるので、言葉が使える気持ちが落ち着いた状態に戻さないといけないです。

どうやって落ち着きを取り戻すかというと、言葉がつかえない状態の時に、沢山の人の情報を処理することは難しいので、環境的にその子を移動させたり、周囲の人を減らすことです。

人から「手を出すのはダメ」と言われて、ダメと言われて気分だけどんどん悪くなるけど、本人が止めれない状態だと思うんですね。

だから、手が出る対象になった子が特定の子の場合には、特定の子を視界に入らないようにすることが大事です。「なんで、特定の子を離すんだよ!先生は敵か!」みたいに、余計取り乱す可能性もありますが、叩くことが継続しないことが一番重要なので、仕方ないです。

脳の情報処理がスムーズにできていない状態の時は、いつもの言語表現はできないし、いつもの言葉がけが聞けないと思って、大人が対応すると良いと思います。

最も避けたい誤学習

1番かわいそうな誤学習は、叩く行為をしている時にそばに大人が来たら、「めんどくさい奴が来た」ということで一旦は行動を止めるものの、大人が見てないところで人を叩くパターンです。

大人が「上手くできない自分の味方になってくれる」という信頼関係が結べているといいんですけど、大人がめんどくさいと思うと、凄く支援しにくくなるんです。

そういった場合は、ゲーム風に対応していきます。「あ!!先生がいないと思って叩いてたね。」とか「実は見てましたよ、後ろで。」のように言っていきます。この時、めんどくさく指摘をごにゃごにゃ言われるよりも、見てないって思ったでしょ?といった楽し気なやり取りに変えていきます

そして、この方法で誤学習を減らすためには、本人が見られてると思わない状況で、しっかり褒める場面を作って、プラスのことも一緒に入れてことです。こっそりみて、些細なことでも、周りが当たり前にできていても、「その子基準で頑張ったこと」をほめていきます。

例えば、本当はお友達にガツンと叩きたかったけど、ちょっと堪えているな、という瞬間に、すかさず褒めていきます。「凄い今我慢したね。」と。手が出てるって場合には、直前のちょっとしたイライラが積み重なってることが多いんです。だから、イラっとしたけど我慢したことを褒めてあげると、とっさに手が出る行為が、すごく防げるようになりますよ。

余談ですが、叩かれる相手の子も、たまたま1回はあると思うんですけど、2回3回続くことは普通は無いんですよね。年齢が大きくなればなるほど、人の地雷を踏むポイントを子ども同士が理解していくのです。しかし、続けて相手の地雷を踏む子というのは、互いに特性持ちだったりします。なので、お友達になるのはもう少し先が良いかな、という感じですね。

被害が大きくなりがちな、体格の良いDCD児

体格が良くて、DCD(発達性協調運動障害)を持ってる子は、かわいそうなくらい相手に被害与えてしまうことがあります。それは、力の調整が上手ではないからです。そのタイプの子は、絶対加害者にならないように動くことが大事です。

幼児期のうちから、加害者にならない経験を積ませてあげる。間違っても、誤学習して「叩けば何とか解決していける」と思わせないようにすることです。

たまたま手が当たることもあるので、しっかり状況を確認しながら、「よく起こるかもしれないよね。」と本人に知らせていくことを、丁寧にやっていかなければいけないですね。

人がいっぱいいる場所は予測できないような事件が起きやすいので、しっかり見たり、聞いたりしていこうねと学習させます。初めての場所とか、人が多い場所とかは気をつけよう、と思えるように。

なので、自分が上手くコントロールできない時は、「集団から外れて気持ちを落ち着けてから、集団の中に入ればいいからね」と幼児期の先生が教えてあげると良いです。いつも居なきゃいけないわけじゃないからって。

幼児期のうちにクールダウンの方法とか、人に危害を与えなくて済む方法や平和に過ごせる方法を身に付けてもらいましょう。

幼児期だと活動を抜けても支障は少ないのですが、学校だと学習が入るので、支障が大きいので、できるだけ幼児期のうちに、が大事です。


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