平和のかけら#3 スーサイド パラドクス
鉄の扉が勢いよく閉まった。何もない部屋にはその金属の音はよく響く。手錠を掛けられた両手首には細い痣が痛々しく浮き上がっている。
「はぁ、ようやく終わったか……」
アラビア語かなんかで情報を吐けと怒鳴られるがもう喉も枯れて自分の名前すら言う気になれない。
静かな室内には両手に括り付けている手錠と鎖の擦れ合う音が鼓膜を伝う。
捕まってから二週間かそこら、十分な水はおろか新鮮な空気すら吸えていない。狭い個室の中自分の血や汗で湿った空気が嫌というほど肺に入ってくる。極度の脱水症状