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全米オープンテニスを見ながら、テニスについて考えた。


テニスと出合ったのは中学1年のとき。もうずいぶん長い付き合いになる。

中学・高校は軟式テニス部のキャプテンだった。大学時代はバンド活動に明け暮れてほとんどラケットを握らなかったが、社会人になって硬式のスクールに通い始めた。以来、見るのもするのも大好きなスポーツのひとつである。

どうしてテニスを始めようと思ったのだろう。ひとつには「体が弱かった」ということがある。肋膜炎という肺の病気の影響で、小学校時代はまともな運動をしてこなかった。女子のテニスウエアがまぶしかったというのも大きい。父親に勧められたこともあって、あまり深く考えずに入学早々にはテニスコートに立っていた。

中学・高校を通じて僕は「前衛」だった。軟式テニスはダブルスしかなく、いまでこそルールは変わったが、当時は前衛プレーヤーはサーブもせず、ひたすら前に張り付いていた。

ストロークをするのはレシーブだけ。ボレーやスマッシュが僕の主戦場だ。ポーチボレーは結構上手だったと思う。高校では一度だけ団体戦で県大会に出場した(そのときのことは前にここで書きました)。社会人になって(今度は硬式で)何度かダブルスの試合に参加したこともある。あまり勝てなかったけど試合の緊張感はやっぱり特別で、一時期は毎週のように仲間たちとコートを借りて練習していた。

テニスはメンタルなスポーツだ。

思いきり打てばいいというものじゃない。プレッシャーを感じると途端にミスを連発する。あっという間に試合に負けて、汗ひとつかかなかったことも。最大の敵は自分なのだ。だから難しいし面白い。

ボルグ・マッケンロー

昔、ジョン・マッケンローというプレーヤーがいて、僕はこの稀代のサーブ&ボレーヤーが大好きだった。

全米オープンやウィンブルドンで、ビヨルン・ボルグとの数々の死闘を繰り広げた。ボルグのパッシング・ショットを何度も食らってめちゃくちゃ悲しい顔をしていても、また次のプレーで果敢に前に出ていく。あの勇気がたまらなかった。

伝説のウィンブルドンの試合を基にした「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男」という映画がある。試合の再現はもちろん、ふたりの心情も丁寧に描いたノンフィクション映画で、試合後すぐに引退したボルグとマッケンローが深い友情で結ばれたことを知り、胸が熱くなった。

マッチポイント

テニスを題材にした映画といえば、ウッデイ・アレンが監督した「マッチ・ポイント」も秀逸だ。元プロテニスプレーヤーが上流社会にのし上がることを夢見て殺人事件を犯してしまうというサスペンスロマン。コードボール(ネットにかかったボールのこと)がコートのどちら側に落ちるかで、人生が全く変わってしまうことを暗示していた。ヒロインのひとり、スカーレット・ヨハンソンの魅力が抜きん出ていたように記憶している。

小説だと、村上龍の『テニスボーイの憂鬱』が忘れられない。いかにもバブル時代にそこら中にいたような男の話だ。しかし、テニスにまつわるクラシック曲は? これが皆無に等しいのはどういうわけだろう。誰か知っている曲があれば、ぜひ教えてください!

テニスボーイ

いま、全米オープンが行われていて、大坂なおみも錦織圭も順当に勝ち進んでいる。

大坂なおみはいろいろな意味で、テニスの世界を根底から変えてしまったビッグプレーヤーだと思う。願わくばこのままプロの世界にいてほしい。彼女ならもっと大きなことを、テニス以外の世界でさえも変えられるような気がするからだ。

錦織圭にも頑張ってほしい。全盛期は過ぎたとはいえ、彼の決して諦めない姿勢には本当に心が震える。4時間近くひとりで闘って、5セットのタイブレークでようやく勝ちを拾った彼が、その後の記者会見で「テニスは本当にめんどくさい」と言った気持ちは痛いほどよくわかる。

もう一度彼の底抜けの笑顔が見たいものだ。


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