札幌のカフェ「ミンガスコーヒー」で、これからのことを考えた。

大雪に見舞われた札幌。予約していた飛行機は早朝に欠航となったが、次の便は飛ぶという。「着陸できなければ羽田に戻る」という条件付き。飛べたとしてもJRは早々に運休していて、新千歳から札幌まで移動できる保証はない。

「なんとかなると思うから、行きましょう」

彼女はどこかうきうきした様子でそう言った。地元民が言うなら従うしかない。羽田に向かうと僕らが乗る便はすでに満席だった。

飛行機は激しく揺れたし、機長も一度は着陸を断念したけれど、再度のチャレンジで無事、新千歳空港に降り立った。

ロビーに出ると目の前にバスのカウンターが。なんと5分後に札幌行きが出るという。バスには2時間近く揺られたけれど、僕らはその日の夕方には奇跡的に札幌の地下街を歩いていた。

旅の主な目的は新しく住む部屋の内覧と契約。まだ改装中の部屋に入り、広い間取りと大きな窓にふたり歓声を上げた。

彼女のほうの仕事は決まった。問題は僕。札幌をベースにして、東京には月5日間ほど出向く。それでいまと同じ量と質をキープしたいと考えている。

軌道に乗るまで少し時間がかかるだろう。でも焦らず楽しみながらやれたらと思う。「どんな形になっても、あなたには編集者の仕事をしていてほしい」と彼女に言われた。そのことを励みにしたいと思う。

帰りも雪にやられた。JRはまったく動かず、臨時便のバスに3時間揺られてなんとか新千歳に。最終便に変更していてよかった。羽田からの足は途中で終わり、タクシーに乗ってやっと午前1時過ぎに帰宅した。

札幌滞在の中日に、大通公園近くのカフェ「ミンガスコーヒー」に立ち寄った。夜遅くまでごきげんなジャズを流す、札幌の老舗カフェのひとつだ。

僕らが訪れたのはお昼のまだ早い時間。折からの大雪のせいかお客さんはまばらだったけど、巨大なスピーカーから流れる心地よいピアノトリオとドリップで淹れる本格的なコーヒーの深い味わいにすっかり心がほだされた。

そこで彼女と、開店間近なセンイチブックスの話になった。

自分の棚の紹介カードにQRコードを入れてもいいことになっている。でも自分のホームページもないしなあなんて話していたら「notoがあるじゃない」と言われた。なるほど。ここはもはや僕の表現の場になっている。僕という人間を知ってもらうのに、ここより最適な場所はない。

センイチブックスではとりあえず、僕が過去に編集した本と自分で購入していた音楽関係のとっておきの本を並べることにした。新刊をのぞいて、基本的に本体価格の半額で売ることにしている。販売にそれほどこだわっているわけではない。10冊ほどのラインナップを見て、面白がってくれれば僕にとって法外の喜びだ。

ということで、センイチブックスを訪れた人がここにも顔を出すことがあるかもしれない。これからは音楽だけでなく、センイチブックスに置いてある本やこれから出す本のことも書いていこうと思う。乞うご期待。

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