プラットフォーマー取引透明化法案等DX17 プラットフォーマーへの規制 ネットワーク効果を中心に

1.現プラットフォーマーの怒り

楽天の三木谷さん怒ってますね。

詳しくは以上のパワーポイントに記載の通りです。三木谷さんの海外企業対策についても言及してます。ネットワーク効果についての規制であることは本人も理解していると思われます。

2.ネットワーク効果とは

政府のネットワーク効果の説明については以下の説明を見るとわかりやすいです。

「SNSの利用の歴史を振り返ると、2000年代後半にはmixiの利用者が多く、その数は一時2000万人を超えたとされている。現在では、Facebookの利用者が2800万人(2017年9月時点)となっており、mixiからFacebookに乗り換えた利用者は多いと考えられる。その背景には、「家族や友人が乗り換えたから」というケースも多いだろう。利用者にとって、家族や友人が使っているSNSとそうでないSNSとでは価値が異なり、「家族や友人が使っているSNSを自分も使う」という選択は自然である。このように、あるネットワークへの参加者が多ければ多いほど、そのネットワークの価値が高まり、更に参加者を呼び込むという現象が、ネットワーク効果(あるいはネットワーク外部性)である。この結果、多くの利用者を抱えるサービスは、更に利用者を獲得することが可能となり、規模を拡大していく7。デジタル・プラットフォーマーの提供するサービスには、このようなネットワーク効果が働くため、「雪だるま式」に利用者を拡大していく傾向にある。

このネットワーク効果については、もう一つ重要な要素がある。それは、前述の効果とは別に、両面市場の両面をまたがったネットワーク効果も働くということである。すなわち、検索サービスにおいて、サービスを提供するデジタル・プラットフォーマーは、検索サービスの利用者と広告主という2種類の顧客を抱えており、この2者との関係でそれぞれ市場が成立している。そして、例えば検索サービスの利用者が増えると、広告主にとっても魅力的となるため、広告主も増えていく。このように、一方の市場での利用者の増加が、その市場の利用者のみならず、もう一方の市場での利用者をも増やしていくことになる。これを「間接ネットワーク効果」という。この関係で、前述の同じ市場内での利用者増の効果のことは「直接ネットワーク効果」ということもある。

このような直接・間接のネットワーク効果による「雪だるま式」の利用者拡大(図表1-3-1-3)が、デジタル・プラットフォーマーの急速な成長の大きな要因の一つとなっている。このため、特にサービス提供の初期においては、ネットワーク効果を通じた利用者拡大の流れに乗ることができるよう、様々なポイントの付与等によるキャンペーンを行うこと等により、採算性を重視せず利用者を増やす取組が行われるといったことがみられる。」

ネットワーク効果について知りたい人は、この本がお勧めです。この本は、ロックインについて経営者側から書かれている本です。

以上のネットワーク効果はエクスポネンシャルに向上していくので、支配的になりやすい。UberとAirBnBでビジネスモデルが異なると、ネットワーク効果にも違いが出る。Uberの場合、ローカルとの結びつきが強く、かつ、障壁がAirBnBよりも低いので、再現性が高く、模倣しやすい点が異なる。インターネットを介することで、情報の価値化が進み、過去よりも容易に独占性と優先的な地位を確保(ロックイン)することができるようになった。

政府は、以上の事態を踏まえ、デジタル市場のルール整備をすることとした。

①デジタル・プラットフォーマー取引透明化法案(仮称)の⽅向性 ②個⼈情報保護法の⾒直しの⽅向性 ③データの価値評価も含めた独禁法のルール整備(企業結合審査) ④デジタル・プラットフォーム事業者による消費者に対する優越的地位の濫⽤への対応 ⑤デジタル広告市場の競争状況の評価

3.規制:デジタル・プラットフォーマー取引透明化法案(仮称)

独禁法以外に、新たな法律を作る様子。

(1)規制対象

「デジタルプララットフォーム」については、1ネットワーク効果があること 2多面市場であること 3インターネットを通じてサービス提供していることとする。

その上で特に取引の透明性・公正性を⾼める必要性の⾼いものを「特定デジタル・プラットフォーム(特定DPF)」として特定し、主な規律の対象とする

①当該分野における、取引先保護の必要性(利⽤者のロックインの状況等)②当該分野の国⺠⽣活及び国⺠経済への影響の⼤きさ ③当該分野内において⼀定の規模があると認められること

分野:具体的には、各種調査で取引実態が明らかとなっている⼤規模なオンラインモール・アプリストアを当⾯の対象とする。

(2) 透明性・公正性向上のための情報開⽰と⼿続・体制整備

ア.取引条件等の情報の開⽰

利⽤者に対する契約条件の開⽰や変更等の事前通知を義務付け

【開⽰項⽬の例】契約変更の事前通知、出品の拒否・停⽌の理由、データの利⽤範囲、検索順位を決する重要な要素

⾏政措置︓開⽰がなされない場合、勧告・公表。是正されない場合に措置命令。

イ.運営における公正性確保

(⼿続・体制整備)

 特定DPF事業者は、⾏政庁が定める指針に基づいて必要な措置をとり、⼿続・体制の整備を⾏う。 【特定DPF事業者による措置】利⽤事業者に適切な対応をするための体制整備(国内代理⼈等の対応体制を含む)、取引の公正さを確保するための⼿続・プロセスの整備、紛争処理体制等の整備 

⾏政措置︓必要な措置が取られない場合、⾏政措置。 (取引上の不当⾏為) 

上記に加え、法律上、⼀定の取引上の不当⾏為をしてはならないとの規定を定めるべきか、⾰新的な取組を阻害する恐れがあるとの指摘も踏まえ、真に必要性が⾼い類型を⾒極め、検討。 例:競合商品を拒絶、⾃社サービスなどの利⽤強制、⾃社の商品を有利に表⽰、事業の運営に重⼤な⽀障が⽣じる⼀⽅的な不利益変更

ウ.特定デジタル・プラットフォーム事業者による運営状況のレポートとモニタリング・レビュー

特定DPF事業者は、アイの運営状況についての⾃⼰評価を付したレポートを⾏政庁に対し定期的に提出。 【レポートの内容】①事業概要②情報開⽰の状況③運営における⼿続、体制の整備の状況④紛争等の処理状況等 

レポートを受理した⾏政庁は、当該デジタル・プラットフォームの運営状況のレビューを⾏い、評価を公表。その際、⾏政庁は、利⽤事業者等の意⾒も聴取し、関係者間での課題の共有や相互理解を図る。

(3)公正取引委員会との連携

本法における規律を超えて独占禁⽌法違反のおそれがあると認められる場合については、公正取引委員会に対し、同法に基づく対処を要請する仕組みも設ける。


(4)その他の規律

本法における規律を超えて独占禁⽌法違反のおそれがあると認められる場合については、公正取引委員会に対し、同法に基づく対処を要請する仕組みも設ける。

ア.利⽤事業者による情報提供を容易にする⼿当て
利⽤事業者が⾏政庁に情報提供しやすい制度的対応を⾏う。 例えば、報告徴収によって契約上の秘密保持義務を解除。

イ.主務⼤⾂

取引に関するルール整備を所管する経済産業省が中⼼となりつつ、 公正取引委員会や総務省の所掌事務に応じて、連携・共同して対 応する⽅向で検討。

ウ.国内外の法適用

本法の規律は、内外の別を問わず適⽤。このため、現状海外事業者にも適 ⽤が⾏われている独占禁⽌法の例等も参考に、国内代理⼈の設置、公⽰ 送達等の⼿続の整理も含め⼿段を検討

4.規制:個⼈情報保護法の⾒直しの⽅向性

(1) 個⼈データに関する個⼈の権利の在り⽅

 ■本⼈の関与を強化する観点から、保有個⼈データの利⽤停⽌等の請求、第三者提供の停⽌の請求に係る要件を緩和し、個⼈の権利の範囲を広げる。

 ■保有個⼈データの利⽤等における本⼈の利便性向上の観点から、本⼈が、電磁的記録(デジタルデータ)の提供を含め、開⽰⽅法を指⽰できるようにする。

 ■名簿の流通により本⼈の関与が困難となっている現状を踏まえ、オプトアウト規定により第三者に提供できる個⼈データの範囲を限定することとする。

 (2)事業者が守るべき責務の在り⽅

 ■個⼈の権利利益の保護及び公平性の観点から、⼀定以上の漏えい等、⼀定の類型の場合、委員会への漏えい等報告及び本⼈通知を義務化する。

 ■情報化社会の進展によるリスクの変化を踏まえ、事業者は、不適正な⽅法により個⼈情報を利⽤してはならない旨を明確化する。

 (3) 事業者における⾃主的な取組を促す仕組みの在り⽅

 ■認定個⼈情報保護団体制度について、現⾏制度に加え、特定の事業活動に限定した活動を⾏う団体を認定可能にする。

 ■個⼈情報の取扱体制や講じている措置の内容、保有個⼈データの処理の⽅法等の本⼈に説明すべき事項を、法に基づく公表事項(政令事項)として追加する。


(4) データ利活⽤に関する施策の在り⽅

■イノベーションを促進する観点から、個⼈情報と匿名加⼯情報の中間的な規律として「仮名化情報」を創設し、事業者内部における分析に限定するための⾏為規制や仮名化情報に係る利 ⽤⽬的の特定・公表を前提に、個⼈の開⽰・訂正等、利⽤停⽌等の請求への対応義務等を緩和する

 ■提供元では個⼈データに該当しないものの、提供先において個⼈データになることが明らかな情報について、個⼈データの第三者提供を制限する規律を適⽤する

(5) ペナルティの在り⽅


■現⾏の法定刑について、法⼈処罰規定に係る重科の導⼊を含め、必要に応じた⾒直しを⾏う。

(6) 法の域外適⽤及び越境移転の在り⽅

⽇本国内にある者に係る個⼈情報等を取り扱う外国の事業者を、罰則によって担保された報告徴収・命令の対象とし、事業者が命令に従わなかった場合は、委員会がその旨を公表できることとする。

 ■外国にある第三者への個⼈データの提供時に、移転先事業者における個⼈情報の取扱に関する本⼈への情報提供の充実等を求める。

5.規制:データの価値評価も含めた独禁法のルール整備(企業結合審査)

(1)問題点

現状では、デジタルサービスの特徴を踏まえた企業結合審査の考え⽅が必ずしも明確化されていない。 

市場画定の考え⽅︓価格引上げにより需要者が購⼊を切り替える程度を考慮して判断 ⇒無料サービスや多⾯市場(例︓検索サービスのデータを利⽤した広告ビジネス)の場合の考え⽅が不明確 

競争制限の有無︓市場シェア等から統合後の競争圧⼒の有無を判断 ⇒売上が少ないが保有するデータに価値があるベンチャーの買収等の場合の考慮要素が不明確 

届出義務の基準︓国内売上⾼が⼀定以上の場合(国内売上⾼200億円超の企業が同50億円超の企業を買収する場合等)※ ⇒売上基準を満たさない場合の審査⽅針が不明確

(2).企業結合ガイドライン等の改定の主な内容

ア.⼀定の取引分野の画定

①デジタルサービス等の特徴である多⾯市場の場合の考え⽅ 

それぞれの利⽤者層別に⼀定の取引分野を画定することが基本だが、プラットフォームが異なる利⽤者層の取引を仲介し、異なる利⽤者層間でお互いの利⽤者が増える効果(間接ネットワーク効果)が 強く働くような場合には、それぞれの利⽤者層を包含した⼀つの⼀定の取引分野を重層的に画定。 

②価格ではなく品質等を⼿段とした競争が⾏われている場合の考え⽅ 

商品の品質等が悪化⼜は商品提供にあたっての利⽤者の負担費⽤が上昇した場合に、利⽤者が当該商品の購⼊を他に振り替える程度を考慮。

イ.競争の実質的制限

【⽔平型企業結合】︓デジタルサービスの特徴(多⾯市場、ネットワーク効果、スイッチングコスト等)を踏まえた競争分析の考え⽅

 ■利⽤者が増えることにより他の利⽤者が増える効果(直接ネットワーク効果)⼜は間接ネットワーク効果が働く場合には、当該効果も踏まえて企業結合が競争に与える影響について判断。 

ネットワーク効果やスイッチングコスト等により、利⽤者が他に切り替える障壁が⾼い場合には、競争圧⼒が働きにくいと判断。 

【垂直型企業結合・混合型企業結合】

 ■データが市場で取引され得るような場合に、川上市場の事業者による他社へのデータの供給拒否等により、川下市場の閉鎖性・排他性が⽣じる場合があることを考慮。 重要なデータ等を保有するベンチャー企業等を買収するにあたり、当該企業が参⼊した場合に有⼒な競争者となることが⾒込まれる場合に、参⼊可能性を消滅させる競争への影響を考慮

 ■データの競争上の重要性の評価に際しては、収集・保有するデータの種類、⽇々収集しているデータの量、データ収集の頻度、サービス等の向上への関連程度を考慮(⽔平型企業結合についても同様)。

ウ.審査⼿続の明確化

■届出基準を満たさなくとも、買収に係る対価の総額が⼤きく、かつ、国内の需要者に影響を与えると⾒込まれる場合には、当事会社に資料等の提出を求め、公正取引委員会は企業結合審査を⾏う。

 ■買収に係る対価の総額が400億円を超えると⾒込まれ、かつ、事業拠点等が⽇本にある、国内向けに営業活動を⾏っている⼜は国内売上が1億円を超える場合には、当事会社は、公正取引委員 会に相談することが望ましい。事業者負担に配慮し、まずは上記運⽤によることとし、届出基準に係る法改正は現時点では⾏わない。

6.規制:デジタル・プラットフォーム事業者による消費者に対する優越的地位の濫⽤への対応

これは、以下の記事ご参照


7.規制:デジタル広告市場の競争状況の評価

①デジタル広告市場の構造 デジタル広告市場の取引実態はどのようなものになっているか(価格決定プロセス、各種契約形態など)。垂直統合化されたデジタル・プラットフォーマーの市場⽀配⼒をもたらす「⼒の源泉」は何か。

 ②デジタル広告市場の透明性・公正性 デジタル・プラットフォーマーと広告主・メディアとの取引等において、どのような不透明・不公正な状態・⾏為が発⽣しているか。(例:広告効果や取引内容、⼿数料などの透明性、データアクセス) 

③デジタル広告市場における競争阻害⾏為の懸念 デジタル・プラットフォーマーによる寡占化が進む中で、どういった競争阻害⾏為の懸念があるか。(例:⾃社広告枠優遇、他プラットフォーマー排除、垂直統合に伴う利益相反、データアクセス遮断)

 ④パーソナル・データの取得・利⽤の透明性 ターゲティング広告や、そのためのパーソナル・データの取得・利⽤(プロファイリング)について、個⼈がその仕組みや実態を⼗分に認識していない現実の中(認知限界)、個⼈の懸念を払拭するため、どの ような取組が⾏われているか。それらは⼗分に機能しているか。(例:判断材料のわかりやすい開⽰と⼗分な理解の上での同意、プロファイリングの⼗分な開⽰、ターゲティング広告の透明性など) 

【今後の進め⽅】 

○1⽉末まで、上記論点などについて、様々な関係事業者、有識者、消費者などから広く意⾒を公募。 

○デジタル広告分野の関係事業者や消費者に対し、事業者間取引(BtoB)と消費者取引(BtoC)のそれぞれについてアンケート調査やヒアリングなどの実態調査。 

年明け以降、WGにおいて、関係者からのヒアリングも含め、各論点毎に具体的に議論し、来春⽬途で中間整理。

スキ、その他の行為は、元気玉として有効利用させていただきます。皆様のお力を少しでも世の中の改善に使わせていただきます。