読書録~妊娠出産に関するエビデンスを行動経済学者が読み解く~Expecting Better By Emily Oster
以前に読んだことがありましたが、2021年に改訂されたと知り、また本書を手に取りました。
行動経済学者である著書が第一子の妊活を開始した際に、妊娠に関して巷でいわれる言説の根拠となるデータを調べていき、出版に至ったそうです。
私も経済学を勉強した身として、本書の姿勢には凄く共感でき、今回も楽しく読みました。
本書はあくまで、妊娠に関して一般的に言われる注意事項について、どのような研究に基づいており、どの程度エビデンスレベルが高いものか(ランダム化実験か、観察実験か、サンプルのサイズはどの程度か)を解説するものであり、医学的に何かを推奨したりするものであはありません。
しかし、筆者は産婦人科向けの教科書も購入し、読み進めながら妊娠期間を過ごしたそうで、基礎的な生物学的な解説もあります。
ピルをやめてさあ妊娠しよう!となった著者が、年齢が上がるにつれどれだけ妊娠が難しくなるのかや、ピルをやめてから生理のリズムが戻るまでどの程度時間がかかるのか調べるところから本書はスタートします。
この、年齢による妊娠率の変化で取り上げられている論文がとても興味深く、確か、生殖医療がでてくるよりずっと前のイギリスのデータに基づきカーブが推計されているのですが、そんな時代でも45歳で自然妊娠する人がいたらしいです(もちろん数はとても少ない)
統計的な情報は統計的な情報として、いかにこの領域が個人差があるものかに驚かされます。
妊娠のプロセスにそって、妊婦が直面しそうなトピックを一通りカバーしています。
妊娠を考えている人だけでなく、比較観察実験やランダム化実験に基づく論文を読むことが求められる学問を勉強する学生さんも、論文を評価、判断するエッセンスを学ぶのにも役立つ本だと思います。初版(2014年)を数年前に読んだ私ですが、改訂版を読んでもやっぱり面白い!
彼女はその後子育てに関する同様の趣旨の本を出版していることも最近知ったので、そっちも読んでみるつもりです。
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