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読書録~色々な読み方ができる物語~To Paradice by Hanya, Yanagihara

何となく表紙に惹かれて手に取ったTo Paradiceが、とても面白い小説でした。ちょうど図書館でAudiobookと電子書籍と両方を借りることができたので、活字と音声を行ったり来たりして読みましたが、Audiobookもめちゃめちゃよかったです。それぞれの章に合わせて異なる朗読者の方が読んでいて、ラジオドラマみたいで。Audibleの評価が4.5/5と非常に高いのも納得です。

本作は3部作で、1893,1993、2093と200年に渡り、ニューヨークのワシントンスクエアを舞台に物語が展開します。

どの章も、同じ名前のキャラクターが異なる設定で登場しつつも、大きな意味での物語の展開や役割の点では各章で共通性が見いだせるという、面白い作りになっています。

最後の章となる2093年は、Covid-19の状況に影響を受けたと思わせるような、ディストピアな世界が描かれます。

筆者はHawai出身のアジア系アメリカ人の女性(韓国系アメリカ人と日系アメリカ人のご両親だそうです)で、ブッカー賞にノミネートされた前作のA Little Lifeは、男性同士の友情や愛情、そして人生の苦痛を描いた作品だそうです。

本作にも、Hawaiiや、男性同士の友情や愛情、そして人生の苦痛というテーマは見て取れます。

長くて、色々なテーマやモチーフが読み取れるがゆえに、評価やレビューが色々になるのだという気がしました。読んだ後、他の人はどこに心を動かされて、どんな評価をしているのかディスカッションしたいと思うような。

例えば、私はBox, New York Time, Gardianをそれぞれ読みましたが、これがみんな着目点が違う。

それから私は、モノローグの作品が好きなんだということにも気づきました。誰かの視点で語られる物語に、どっぷり共感したり、新しい見方を発見したり、自分の嫌な部分、いい部分に気づいたり、そういう読書体験が好きで、この小説は私にそれをたっぷりもたらしてくれました。

ただ、本作は人生の苦痛がテーマとなっているように、読んでHappyになる類のものではありません。著者の他の作品も読んでみたいと思いつつも、疲れちゃいそうでちょっと気が引ける感じもします。

本作は、たまたま仕事が落ち着いていて、移動時間の多いタイミングでじっくり読めたり聴けたからよかったのですが、体や心が疲れているときにはお勧めしません。

https://www.amazon.com/Paradise-Novel-Hanya-Yanagihara/dp/0385547935


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