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ドイツ専門医試験、挫折からの復活

ご存じの方も多いと思いますが、自分はこの夏に内科・循環器内科の専門医試験を受験し、見事に玉砕しました。
今回12月14日に再受験をして何とか合格できたのですが、そこに至るまでのストーリーをシェアします。一部公開しきれないところがあるので、後半部分は限定公開とさせてください。


挫折からの復活

ドイツ専門医試験を初めて受けてその場で落第した時、非常に落胆しました。落胆というより、試験管から不合格を告げられても、何が何の事だか理解できないような、困惑した状況でした。
試験前にメッセージをくれていた友人や同僚たちに返信することもできず、
放心状態のままデュッセルドルフの駅に辿り着き、
駅のビアハウスでビールを飲んだ時、情けなさと自分への失望感が襲ってきたのを覚えています。
  
その後、幸運にもドイツの専門医資格なしで上級医のポストを獲得することができ(この辺の裏話は酒の席でしか語れません)、家の引っ越し、子供の現地校への切り替え、などを行なって少し落ち着いてきていたので、今回は前回より少し集中して準備ができました(次項参照)。
 
ただ正直、全然自信はなかったです。
 
試験当日、前回と同様に2時間くらい前に試験会場に到着。受付をすませ、試験が行われる部屋の前にある広場で勉強をしました。周りを見渡せば、余裕で雑談している人もたまにいましたが、やはり多くは少し緊張しているように見えました。
一人、また一人と呼ばれて試験会場に入っていきます。

試験会場は複数個あり、どうやらいくつかの診療科の専門医試験がそれぞれ行われているようでした。 
 
そこで見かけたのが前回の試験官の先生。
前回の苦い思い出が蘇ります。

自分の時間になり、近づいてきたのは別の、物腰の柔らかそうな、白髪の紳士。そして何と向こうから少し雑談を始めてくれ、「名前は〜、とか、このイガクハカセというのは、どういう意味ですか?、とか」。まさかドイツの専門医試験で試験官にイガクハカセを説明する自分w
 
試験会場に案内され、中に入ると2人の試験官が座っていましたが、なんと先ほどの白髪の紳士が自分を紹介してくれるという神対応。
 
自分も前回の反省があるので、率先してアイスブレイクを行いました。まずはしっかり挨拶して握手、その後少し雑談をしつつ、先週少し風邪をひいていたから、まだ声がかすれているのと日本人のアクセントがあるので聞き取りにくいかもしれないけど、許してね、的な。
   
そこで先ほどの紳士試験官がチェックリストを出して質問をしてきました。「******Gesundheit***?」ちょっと唐突な質問で、健康(Gesundheit)という単語が入ったYes/No Qustionというくらいしか大まかに理解できず、困った困った

じっと見つめてくる試験官3人。
私「Yein (Yes and No)です」
試験官「残念ながらそれは成り立たない。この質問は試験を実行するかしないかの、最初の質問なんだ。」

なんと、では絶対間違えない質問ではないかw
極限の状態で繰り出した自分の返しは

大きく両腕を広げながら
私「ふーむ、では僕は一体全体何と答えるべきでしょうか」

試験官「もしあなたが今健康に問題があって試験を受けることに同意しない(No)というなら、今回我々は延期して新たな予約を取らないといけないですよね」
 
なるほど、そういうことか!

私「もちろん自分は今日に向けて多くの準備をしてきましたし、そしてこれをやり遂げないといけない。ですので私の答えはYes、です。
 
試験官「素晴らしい、では始めよう」

あ、あぶなかったw

その後試験(口頭試問で症例に対して考察をして検査・治療・予防へ進んでいく形)を受け、その場で合格が伝えられました。(詳細は別の項で紹介します)


異文化での医学勉強

ドイツに限らず異国で受ける専門医試験は、異文化の医学システムに挑戦する人々にとって大きなハードルとなります。今回自分は落第から再受験、そして合格した者として、その経験を通じて、異文化での試験準備や試験自体のユニークな側面について掘り下げてみたいと思います。

日本の循環器専門医試験が、筆記試験かつ少し込み入った質問が多いのに対して、ドイツの専門医試験の特徴は、口頭試問であることと、ガイドラインに沿った一般化された診療内容を問われることが多いこと、と思います。 

ただ、ポイントポイントで覚えていく、いわゆる受験戦争で培ってきたような勉強ではなく、要点を押さえつつ包括的な疾患診療の理解が必要になります。

自分が行ったことは
・欧州ガイドラインを英語で読み、ドイツ語で通読し、音読する
・ドイツ医師会が提供している最新版のCommentを通読する(音読)
・内科疾患に関しては、日本語で一旦知識をupdateし、そこからドイツ語を学ぶ
・救急外来に行って診療を見学する
・覚えた内容について同僚を捕まえて聞いたり議論することで、より効率的に吸収できるようにする

ということをしました。
 
どうしても異文化で行われる外国語の専門医試験ですので、自分が母国でやってきた医療と少し違ったりしますし、知らない用語ばっかりだったりします。
 
例えば、赤沈(せきちん): 赤血球沈降速度
これはドイツ語で
BSG: Blutsenkungsgeschwindigkeit(Blut=血液, Senkung=沈降, Geschwindigkeit=速度)です。さらにこの発音を知っていて、文章の中に取り込みながら説明する必要があります。

最終的には日本でも海外でも、専門医試験においては、普段からどれだけその内容をdiscussionしているか、ということに尽きるのかと思います。


専門医資格を持ってこれからしたいこと

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