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やさしいおすすめのすすめ

先週読んだ小説がおもしろかったので、妻にすすめた。本屋大賞を獲った、『成瀬は天下を取りに行く』という本。
「ネタバレしないで、どこが良かったのか教えて」と即興PRを求められる。主人公がとってもまっすぐな女子中学生で、ほかのキャラクターも魅力的で良かった。ただそれだけなんだが、説明が物足りなかったらしく、ふーんという反応だった。

「おもしろかったからあなたも読んで」「どこが?」「ふーん」という尻つぼみな流れ。僕のおすすめ熱量は、徐々に空気中に分散していった。
思い返してみると、逆もあった。『六人の嘘つきな大学生』というミステリー小説を、妻に教えてもらった。「謎やばい」「会社の後輩、一日で読んじゃったって」「へー」のばし棒から、おすすめ熱量がすーっと逃げていく。
でもしばらくして、突然僕はそのミステリーを読んだ。謎が解けていくのが面白すぎて、半日で読んじゃった。PodcastドングリFMでおすすめされているのを聴いて、じゃあ読むか、という気分になった。なぜだろう。

読む気になったとき僕は、面白い本が欲しかった。妻は、新しく本を読みたい気分じゃなかった。ただ、それだけでしょう。おすすめ人が何を言ったかは、あんまり関係ないと思う。
今読んでくれなくてもいい。いつか、何かのタイミングで、手に取ってくれればいいな。そんなやさしいおすすめが、僕は好き。

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