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創作

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短編小説や掌編小説や詩、短歌のまとめ
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#創作大賞2024

すべてが可視化されたとき

すべてが可視化されたとき

僕らの目玉は脳になった
すべてが可視化されたとき
僕らの目玉は指にもなった
すべてが可視化されたとき

すべては明瞭になった
すべては公正になった
それは素晴らしいことじゃないか
かつて目玉だった口が言った

だけど、目玉は脳じゃない
目玉は指折り数えはしない
目玉が喋ったりするはずもない
君の目玉をよく見てごらん

見えないところにあるものを
1でも10でも5でもあるものを
あのとき僕らは失った

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君にはそれしかできない

君にはそれしかできない

出来事はいつも否応なく起きる。
いいことも悪いことも、
ネガティブな感情も、
認めたくないことも、
起きるべくして起きる。
君の知らないどこかで。
君の身の回りで。
君の心の中で。

たとえば君が、
君の知らない間につくられ、
この世に訪れたように。
君がいつか
まだ準備もできてないのに
旅立たなきゃいけないように。

この世界に何かが起きて、
君はそれに対処して、
また何か起きて、
また何か対処

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短篇小説 赤い大地

短篇小説 赤い大地

今よりもずっとずっと昔、恐竜と呼ばれる生き物たちが大地を闊歩していた頃の話です。

地面にはシダやマツ、イチョウなどの草木が生い茂り、それを食べる草食恐竜と、その草食恐竜を食べる肉食恐竜がいました。

全体はちゃんとバランスが取れており、どこかが欠けてしまう、というようなことは、ずいぶんと長い間なかったのです。

ところが、ある日、空に大きな黒いものが現れました。その黒いものには、たくさんの不気味

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