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男が好きで、男が嫌いで。 ー僕たちはヘラりたがりー

大好きなドラァグクイーンであるイズミ・セクシー先輩に、「凌ちゃん恋愛しない方がいい、愚かになりそう。」とぽろっとこぼされた。

図星すぎるその言葉を噛みしめながら、その夜は帰ったのだが、愚かにならない恋愛について考えれば考えるほど手も足も出なくなって、ドツボにハマっている気がする。

そもそも、そんなに恋愛をしてきていない自分が、リアルな恋愛をしたことが実際あるのだろうか……? 色恋の話をしているとき、自分はめちゃくちゃカッコつけたそれっぽいことをよく言う。すべては「ブスね〜」と言われないための予防線だ。本音を言えば、僕はめちゃくちゃ愚かになりたい。居心地の悪いのが恋だと思っている。とどの詰まりはドラマの中の恋愛しか知らないし、ヘラればへらるほど生きてるって実感できる!!

と、これも口先だけなのかも。実のところ本気になった恋愛は1度か2度。忘れらない相手も1人くらいなもの(そしてその1人を更新するために出会いを求め続けてる)。これまで生きてきた30年間、本気になれないのが僕の悩みだ。でも周りの男友達(ノンケ、ゲイ問わず)の話を聞く限り、彼らもどうやら悩むらしい。アラサーの壁。男盛りの嘘と本当。男の人生の正解って何? 

男は”メンヘラ”しかいない?

3年前、本格的にゲイコミュニティに飛び込んだ自分は「男と付き合えれば恋愛とか楽勝じゃね?」とか正直思っていた。すべては友情の延長戦だと思っていたから。25歳のとき7年越しにヨリを戻した高校時代の彼女と結婚の約束までしてうまくいかなかったのをきっかけに、自分のセクシャリティの揺らぎは本格的に波打ち始めて、それまで頑なにバニラ前後みたいなことを貫いてきたのも、もうタチネコとことんヤってやれと吹っ切れてたのが始まりだ。まあこれもよくある話。

これまで、自分は”メンヘラ”の自覚がなかった。脈ありっぽい女の子たちと付き合ってはみるものの、友達といる方が楽しくて、ろくにデートの時間も割かず別れるのがいつものパターンだった。これは対象が男になった今も同じで、Netflixの無料お試し期間くらいで熱が冷める。性欲というパワーをきっかけに人に興味を持つと大抵こういう結果だ。

どうやらこの性欲のパワー、周りの殿方からも聞く限りただのセックスの話でもないらしい。何をするにおいても、ちんこでジャッジをしてきた男たちが、感情とか言葉とかいうものに左右されるのがアラサーなのかも? 

愚かになれないと熱が上がらない。けど、熱が上がらないものは興味すら湧かない。大人たちが口を揃えて言う、「自分の好きな人とではなく、自分のこと好きになってくれる人と付き合えばいい。」なんて言葉、口先だけだろって思っている。いや……本当はわかってる、今の自分が欲張っているだけなのも、ただ純粋になにをし続けても、満足できない性分なのも。だけど体力があるうちは、自分が思い描いてる運命の人に出会えるのを待ち続けているだけなんだと。ちなみに言っておくと、ディズニー作品はあらかた見ている。参考までに。

小学校からの友人である俊之くん(ノンケ)は、見ている限りちんこで恋愛をジャッジできなくなっている。彼も自分同様、過去の恋愛を新しい恋愛で上書きしようと試みているように見える。恋愛における痛みを感じないと、それ=恋愛ではないフェーズなのか? 彼は自己肯定のためにTinderで無差別マッチ(無課金なので限界まで右スワイプし続ける)をしているらしい。取り急ぎ欲しいのは、この世に自分の需要があるのかどうか。これは、ゲイが肌色の多い画像をSNSにアップするのと似ている気がする。そもそも自分は売り物なのかどうかを確認する作業。言葉にすると怖すぎる話だ。

最近は俊之くんも落ち着きを見せているが、いっときのメンヘラ具合はすごかった。真夜中の新宿から、デートの報告をしにタクシーに乗ってうちへ来るなど、ドラマな恋をしようとしすぎていた。ここでまた怖い話なのだが、(自分含め)本人たちがドラマな恋の先に望んでいる結末は、ドラマとは真逆の”安定・安心”といった恋愛が地続きになっていることを心底望んでいることだ。

”安心・安定”な恋愛は、何かを捨てないと得られないことを、僕たちは知っているけど信じてはいない。だってヘラって、それを乗り越えてこそ本物の恋なんだから。

言葉を使って恋をしてこなかった男たちが、ある日突然言葉とか感情とかを私信し始める。そうなった途端に、自らヘラりたがるのはもしかしたら自然なことなのかもしれない。ふわふわと性欲だけで移ろっていた彼らが、ある日突然地盤を固めようと躍起になる。社会の目だったり、友達の変化だったり、ただ抱き合って眠りたい夜が増えたり、このままじゃダメなのかも? と自問する。アラサーの葛藤は、ヘラるところから始まるらしい。

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