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遺体収容が追い付かない(タイ)

今回の投稿には、遺体にカバーをかけた状態の写真を掲載しています(流血などはありません)。予めご承知おきください。

バンコク首都圏では、ベッドが足らずにコロナに感染しても入院できない人が「千」単位でいるようす。

当然、自宅待機となるのですが、タイには日本の保健所のようなシステムがありませんから、感染者と病院の間に入ってベッドの空き状況を把握し、入院先を調整してくれる機関がありません。それゆえ、自宅待機者の人数や症状など、正確な把握はできません。ましてや一人暮らしでスマホも持っていなければ、支援を求めることすら困難です。そして、そうした自宅待機者の中には間違いなく、病状が悪化して亡くなる方もいらっしゃいます。

7月20日。バンコク都内だけで3人の遺体が路上で発見されました。全員、病死したとみられています。

こうした場合、財団法人である慈善団体が救急車を派遣して遺体を収容し、仏教寺院に運んで火葬を行います。もちろん遺体収容だけではなく、交通事故や火災発生時などに負傷者を病院に搬送したり、時には団体職員が救命活動を行ったりもします。こうした活動資金は、市民の寄付で成り立っており、共助の一例と言えましょう。

※こうした慈善団体が入院を希望する患者と病院の間を取り持つこともあります。しかしそれらは単発的なサービスであり、システム的な活動ではありません。例えば、救急出動した団体職員が努力しても入院先が見つからなければ、「少し日を置いてから自分で探してください」という対応になります。よほど命に係わる緊急性があれば、必ずどこかの病院が受け入れてくれるので、こうしたことは起きませんが。

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話を戻します。

ネットで広がっている情報によれば、都内プラナコーン区の路上で、20日10時頃、1人の男性が路上に倒れているところを目撃者が慈善団体に通報。救急車が派遣されました。慈善団体職員が酸素吸入器などを使って救命活動をしましたが、残念ながら、この50歳の男性は14時頃息を引き取りました。なお簡易検査キットの結果は、「コロナ陽性」を示したそうです。

通常、救急隊はその場で遺体を収容し、しかるべき仏教寺院に搬送します。しかし今は亡くなられた人がコロナ感染しているケースが考えられますので、遺体の収容に際しては正規の防護服を着用した職員が派遣されることになっています。また、コロナで亡くなられた方は略式葬儀を行った直ちに火葬されますので、火葬を協力してくれる仏教寺院との綿密な連携も必要です。

※タイでは、火葬は仏教寺院で行われます。但し、私も詳細は理解していないのですが、すべての寺院に火葬施設があるわけではありません。また土葬を基本とするイスラム教徒は、政府が指定した土葬用墓地に埋葬されます。

つまり、調整に時間が必要なわけです。そのため、治療にあたった救急隊は別件対応のため、その場から出動。引き続き財団本部が関係団体との調整を担いましたが、感染者の急増によって完全防護の職員が対応しきれていません。こうした事情から、残念ながらご遺体がしばらく路上に放置されてしまうケースが出てきているのです。遺体の収容が追い付かない…。

先述のプラナコーン区の路上で亡くなられた男性は、結局、20日22時頃になるまで、そのまま放置されている状態でした。道路に鉄柵が置かれ、タイ語で注意書きが書かれています。「通行禁止。。。Covid遺体あり」。

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同じプラナコーン区では、他にも男性1人が路上で息を引き取っているのを通行人が発見。20日22時30分頃に遺体が収容されています。こちらはコロナ感染者かどうか不明なのですが、「陰性」であることがハッキリするまでは、「陽性者」として対応することが基本になっています。

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さらに、20時30分頃、都内クロントーイ区の大型商業施設敷地内でも、身元不明の男性の遺体が見つかりました。政府による営業規制で、首都圏など13都県では、商業施設の営業は20時までとされています。閉店後、警備員が敷地内を見回っていたところ、この男性の遺体を発見したということです。但し、こちらもコロナ陽性だったのかは報道されていません。

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お亡くなりになったこの3人に、どのようなご事情があったのか。それはわかりませんが、大都市バンコクでの孤独死というのは、あまりにも不憫です。ご冥福をお祈りしたいと思います。

コロナによる営業規制で400万人以上の失業者がでている、と報じられているタイ。政府による生活支援は、ほんとうに雀の涙(それすらも受給できていない人が少なくありません)。それゆえ、路上生活者も増えていますし、食事も満足に取れない市民が増えています。

政府はいったい、何をしているのか。

国民の怒りは徐々に高まっています。政府ばかりを批判しても問題は解決しませんし、また政府だけが悪いわけでもないでしょうけれど、国民の不安と不満が鬱積している今、そのどうしようもない、抑えきれない感情が、間違いなく為政者に向いています。


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