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億男 と お金 と 幸せ の答えを考える

図書館でその本を目にしたとき、私は迷いなくそれを借りることに決めた。

「億男(おくおとこ)」

予備知識は、映画のCMで見た内容とネットで見た少しの情報だけ。

突然お金持ちになった男が主人公だということ。
そして、その男には借金があるということ、その借金を返す前に友人にそのお金を持ち逃げされてしまうということ。
内容としては、お金の仕組みが知れそうな本だということ。

私はこの本を読み終わって初めて、考えることになった。

「なぜ、私はこの本を読もうと決めたのか?」

お金が欲しいから?お金の仕組みを知ればお金が手に入ると思うから?

実際に読んでみて、それは突き詰めていけば「なぜ私は生きていることを選択し続けているのか?」に繋がってくると、考えさせられた本だった。


お金があれば・・・?

「いくらでもお金があるとしたら、あなたは何をやりたいですか?」

この問いを突き詰めていくのは、なかなか難しい。
なぜなら、生きることは苦しみと一体だからだと、私は思う。
一切皆苦というのだろうか。

お金があれば、目先の問題解決はすぐにできる。

例えば私だったら、もっと収納の多い機能的な家に引っ越すとか、家事を外注して楽をするとか。
そもそもお金が無限にあれば、生活のために働いてお金を得ることはしなくなるだろう。

でも、それを満たした先に、私の幸せがあるのか?と考えていくとそうではないとも思う。

生きる限り欲望は私の前に立ち現れるだろうし、それらを一つ一つ潰すことは、続けていけばきっと、ただの作業になっていく。

そうすれば、その先にあるのは恐らく虚しさだけ。

つまり今、私の中では、お金に関して手段の目的化が起こっている。
お金を手に入れるために働いたり、お金を無駄に使わないために家事をしたりしている。

でも本当は、幸せになるためにお金を手に入れ、幸せのために必要なものやサービスをお金と交換する。
それを置き去りにしてはいけないのに、いつの間にかお金が目的である生き方をしている。


「億男」の登場人物は

主人公の一男は宝くじで当たった三億円を持って消えた親友、九十九(つくも)を探し出し『お金と幸せの答え』を聞くために
(そして借金を返済して、別居中の妻:万佐子と、娘:まどかとの暮らしを取り戻すために)
九十九と一緒に会社を立ち上げた3人のお金持ちと接触する。

そのお金持ちたちも、迷い悩みながらお金と対峙し、それぞれのやり方でお金と付き合っている。

しかし、根本的なところでは3人は同じものを共有しているように私には感じられた。

3人とも、お金を疎んじている。

お金を通して、それをうまく使えない自分自身を疎んじている。

その状態は、お金を手に入れることができなくて悩んでいるのと同じようだと思う。

もちろん、生活苦は無いからそういったことで悩むことはないけれど、お金をコントロールできないという点では一緒だ。

そして作中でもこう語られている。

「人間には自分の意思ではコントロールできないことがみっつある、それは死と恋とお金」


欲とは未来

「あなたは本当に家や車が欲しいの?あなたが今、心の底から欲しいものは何?」

物語の終盤、そう、万佐子は一男に問いかけた。

一男は、今自分が欲しいものは何もない、借金が返せて家族が戻り、妻と娘の欲しいものが全部買えればそれでいいのだと返す。

それに対し万佐子は

「あなたはお金によって大切なものを奪われてしまった。それは”欲”よ」

と語る。

欲とは、明日を生きることを楽しみにする原動力。

心の底から欲するものが手の内にありさえすれば、人は幸福に生きていける。

かつて一男と万佐子にとって、それはお互いの存在であったし、二人の娘であるまどかにとってはバレエがそうだ。

どんなに苦しい生活であっても、それがあるから生きていける。

そう、万佐子は考えていた。

逆に言えば、心から欲するものがなければ、どんなにお金があったとしても虚しい使い道にしかならないということだ。

そして、一男は”欲”を失ってしまっている。

このとき一男は、万佐子に何度もやり直そうと持ちかけるが、それは叶わなかった。


私のお金と幸せの答え

私はこの本を読んで

”自分の幸せ”を出発点として軸に持つことで、お金というものに形を変えた自分自身をコントロールすることが可能になる、と感じた。

自分の幸せとは何で、何のために、この苦しみある生を生きるのか。

それを考え続け、見つめ続けることが、幸福へのたった一つの道筋なのだろうと。

私にとってそれは、

本を読んでいるときの没頭感や
本を読み終わった時の心の静かな平穏や
何かアイデアを思いついた時のワクワク感
人と繋がりたいと思う気持ちなどだ。

忙しさや、他の目先の欲に惑わされてしまうことも多いけれども、この「答え」を忘れないようにしながら生きていこうと思った。


それぞれのお金と幸せの答え

かくして一男は、万佐子と会った帰りの電車の中で、お金と幸せの答えを見いだすこととなった。

お金と幸せの答えは一人一人違う。

一男が見つけた答えが何であったのか、そしてあなた自身がこの物語をどう感じるのか。

ぜひそれを確かめるためにこの本を読んでいただきたいと思う。

必ず、これからの人生に有意義な、一つの答えをもたらしてくれるはずである。



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