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コスメ紹介エッセイ「インスタント・パブリック」──すっぴんメイカー(インテグレート)

わたしは最近人生がとても楽しい。とにかくやりたいことがいっぱいある!
読みたい本、観たい映画や演劇、行きたいライブ、食べたいスイーツ、訪れたい場所、会いたい人。枚挙に暇がない。
あとどれくらい人生残っているかわからないけれど、とにかく人生の時間全てを使っても足りないだろう。何故ならやりたいことは無限に増えていくからだ!

しかし、やりたいこと、それ以上にやらなければいけないことが多数ある。
そのうちの一つが日常の時間の大半を占めている仕事──労働だ。

前述のとおり、わたしにはとにかく無限にやりたいことがあるけれど、ちゃんと時間を作って向き合いたいものが多くて、「やらなければいけないこと」で構成されている平日の中に組み込むのが少し難しい。
それゆえ「やりたいこと」が制限される「やらなければならないこと」をやり過ごす平日がなかなか苦痛である。

やらなければならないことをやりたいことに近づけられたらどれだけ幸福だろう?
わたしはそれを労働──職業の面で実現しようとしたけれど、無理だった。演劇が好きだからといって誰もが役者になれるわけではないし、なりたいわけでもない。好きの気持ちと才能はまた別物なのだと突き付けられた。
わたしの周囲にはやりたいことを職業に結び付けた友人が結構いる。わたしは実現できなかったけれど、夢をかなえた人たちの話を聞ける環境に在ることの幸せをかみしめている。

やらなければいけないことを少しでもやりたいことに近づける。これが幸福を掴む手がかりだということに20代半ばにしてようやく理解した。
「やりたいことを実現する」にとらわれすぎるのも良くない、というアンチテーゼでもある。

わたしにとってその一つが「化粧」だ。
就活の時に大学でメイク講座が開講されていた。それほどある日突然「マナー」として女性たちの前に現れる化粧。
社会に出るためには必要な化粧。

わたしは化粧が嫌いだった。
どうせ汗と皮脂でグチャグチャになるのに何故……と思いながら顔に塗る(しかも塗っているそばから汗が噴き出してくる)のが本当に嫌いだ。
汗で落ちない化粧を研究すればいいのだが、そこまで化粧に心血を注ぐことが出来ない。なぜなら化粧は作業だから。

そんな作業を少しでも楽しいものに変えてくれるのが化粧品たちだ。
百貨店のショーケースに美しく陳列されている化粧品──いわゆるデパコス、町の薬局やバラエティストアで気軽に買える化粧品──プチプラコスメたちのおかけでわたしは今日も日々を楽しいものにできている。

最近のわたしの毎日に寄り添ってくれているコスメがこれだ。

インテグレートのコンセプトが今のわたしととても近しかった。

あなたの毎日に、
ちょっとしたLovelyが降り注ぐ。


インテグレートがあなたに届ける“Lovely”は、
特別な日も、何でもない日も、気分が上がる“いいね!”な瞬間。
「かわいい」だけでなく、「素敵」「うれしい」「楽しい」という
意味まで込められています。


日々をもっと楽しく、自分をもっと好きになれる。
インテグレートと一緒に。

資生堂 インテグレート公式サイト「Concept」より引用

誰かのための「かわいい」ももちろん素敵だけど、今のわたしはわたしの日々を肯定するためにメイクをしているので、このコンセプトにとても共感したのだった。
……と、いいつつビジネスアスリートOLの朝は余裕がない。メイクの時間すら惜しい。時間かけて化粧施すのは休日でいい。とにかくぎりぎりまで眠っていたい。これが或る限界アラサーOLの実情である。

そんな日々を「すっぴんメイカー」は肯定してくれた。
まず、これ一つで外の世界に飛び出しても人権を持つ顔にしてくれる。日焼け止めを塗る作業って、地味に面倒くさくないですか? どんなに忙しくても化粧水→乳液はサボらなくはなった(ここをサボると崩れることを知った)のだけど、日焼け止めから更に下地を塗るという作業が面倒で面倒で、少なくとも平日の朝は無理だった。

でも「すっぴんメイカー」はSPF50+ PA++++! さらっとしたテクスチャーで石鹸で落とせるほどなのに、この数字は驚異的である。(ポイントメイクを重ねているのでクレンジングは使っているが) これだけ数字があれば東京のコンクリートジャングルの照り返しにも間違いなく打ち勝てる。

日中は目の前の仕事を倒すのに精いっぱいだし、昼休みもTwitterで推しの情報収集をするオタクなので、なんと化粧直しという習慣があまりない。(限界にもほどがある) (ただ、テカリはツヤだということにしてごまかしてきたが、あまりにひどいときはあぶらとり紙を使うようになった。これもとても遣い心地が良いのでいつか紹介したい)

けれど「すっぴんメイカー」はあまりひどい崩れ方をしない! マスク擦れで多少落ちていることはあっても、粉を吹いたり地割れが起きる、ということは少ない。(どちらかというと肌のコンディションによって日々変わっているのだろうな、と思う) 

塗っていることを忘れるような軽いつけ心地と、水っぽい感触で潤い重視なテクスチャーなのだ。塗るというより、薄い光のベールを纏うことで肌がトーンアップする、というイメージだ。それゆえカバー力は控えめなので、隠したい人には向かないかもしれない。わたしはファンデーションがマスクにつくのが苦手なので、これくらいがちょうどよい。

「すっぴんメイカー」を塗った後、肌の調子によっておしろいをはたいてわたしのベースメイクは終了する。あとはササっと眉を整えて、アイシャドウをブラシでワンストロークして、余裕があれば軽くリップをひとぬりして、メイク終了。わたしの平日メイクは五分で終わる。

たった5分。この5分も寝ていたいと思う。この5分の作業が寝起きのふにゃふにゃ溶解のわたしに輪郭を与えてくれる。プライベートのわたしを、パブリックのわたしへと送り出してくれるのだ。

5分仕上げの、インスタント・パブリックな顔でわたしは街を歩いている。もうすこし丁寧に仕上げたほうが良いに決まっているが、他人様に失礼のない程度の顔に5分で仕上げられるのはすごいことなのではないか? そんな謎の自己肯定感に満足しながら、わたしは毎朝靴を履いている。

インスタント・パブリック。これがわたしの「やらなければならないこと」へのアンサーだ。決して投げやりなどではない。毎日何分もかけて丁寧に化粧が出来たらそれは幸せなことだと思う。(メイクがやりたいこと、の人たちだと思う) けれど、わたしはそれでは疲れてしまう。だからこそ、インスタントな顔で余力を残すのだ。「わたしはまだ本気を出していないだけですよ」「まだまだ綺麗になれる余地がありますよ」、と。

時には全力でメイクをして、職場の人たちを驚かせてしまうのも楽しい。(口には出さなくとも、人は他人の変化に敏感なものだ) インスタント・パブリックはこれから新しい変化を生みだせる無限の余力を持っているのだ。

「やらねばならないこと」もきっとそうだ。わたしは「やりたいこと」を仕事にできなかった人間だが、いつ、どこで「やらねばならないこと」が「やりたいこと」と結びつくか、あるいは「やりたいこと」に転じるかわからない──そんなことを考えながら、日々に食らいついている。

そんな日々へと歩き出すわたしに寄り添い、カラフルな日常に変えてくれるコスメたち。昔は鉛筆やノートと同じく「必要だから」仕方なく買っていた備品だったけれど、今は自分を好きになれる後押しをしてくれる美品だ。


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