全ては些末なこと

 今朝、妻と喧嘩をした。原因は些末なことの積み重ねであるが、些末なことを捨て置けないのが人間ではないか。些末なことに対する価値観とか好みとか考え方とか、諸々の不一致が積み重なって人間関係が崩壊するからバンドは解散するし、夫婦も離婚するのだと思う。じゃあその状況を回避する為に、諍いの原因は些末なことなんだから、それを気にしなければいいじゃないかと、、、言われると、それは何だか違う気がする。それをスルーしてしまったら、人格とか尊厳とか、そういう人間の根幹が揺らいでしまうと思うからなのかもしれない。

 些末なことほど大切に、大事にしなければならないと思うだ。でも、そう考えれば考えるほど、人生が途端に窮屈なものに感じられて仕方がなくなってくる。安全で安定した生活を送りたいと思いながら、それを担保するための堅実さや安定感というものからは解放されたいという相反する欲求が常に自分の中にある。そう感じることそのものが、誰にでもある些末なことだとも思う。誰もかれもが、そのように日々感じていて、でも本当に大切にしたいこと、大事にしたいことに時間を割くことが出来ずに、職場にスポイルされ、友人にスポイルされ、一体何のために生きているのか、よく分からなくなっていくような気もする。

 最近、職場で仕事ができると評判の売れっ子の後輩が、「職務やポジションによっては、無理難題をたくさん人に押し付けざるを得ないこともあると思います。その過程で人の心を失ってしまうこともあるのかもしれません。でも、生きるために必要なら、それも致し方ないことだと思います。」と淡々と語っていた。あぁ、危ういなと思った。仕事にハマってきているなと。仕事以外の全ての物事が些末なことのように思えてきているのだろう。でも絶対にそれは違うと思う。どれだけ出世をして、どれだけ大金を稼いで、どれだけの地位と名声を得たとしても、人間の心を失ってはいけないのだ。

 今の世の中、理屈、コスパ、論破などなど、感情を度外視した事柄がもてはやされることが多すぎるように思う。それもこれも全ては些末なことなのだと思う。人間として生きていく上で、人間としての心を守って生きていかなければならないということに比べたら、全ては些末なことなのだと、そう思う。

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