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#11 オーブの行方③

「オーブ。あれ」

 ティノの声に、ティナは我に返った。いけない。過去に入り浸って、ぼんやりとしていた。
 ティナはティノが指を差した方向に目を向けた。波打ち際に、光り輝く球体を見つけ、短く声を上げた。

「オーブだ! ティノ、オーブを見つけられてすごいね!」
「えらい?」
「えらい!」

 こてん、と首を傾げて訊ねるティノに、すかさず頷いた。ティノがどことなく誇らしげな顔をしたので、ティナは声を出して笑った。

「リコリス、喜ぶ」
「そうだね。リコリスさんも喜んでくれると思うよ。オーブにどんな《物語》が閉じ込められているか、いつも楽しみにしてるもんね」

 深緑の長い髪が印象的なギルド長・リコリスは、他の人たちに比べ知識に貪欲だ。何でもかんでも知りたがるリコリスは、オーブが持っている世界の記憶――《物語》に執心している。
 薄く笑みを浮かべていることが多いリコリスだが、その実、感情自体は常に平坦。微笑みを浮かべているからといって、裏では何を考えているかわからない。けれど、オーブを目の前にしたリコリスは、とても嬉しそうに微笑む。
 また新しい知識が手に入る、と喜んでいるのだろうな。ティナはくすくすと笑みを漏らした。

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【小説×音楽×イラスト】で《世界の物語》を記録する創作ギルドです。 個性豊かなギルメンたちの日常の記…

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