小匙の書室176 ─マガツキ─
“それ”に知られたら終わり。
“それ”からは逃げられない。
一通のDMが生み出す凶悪なホラー。
〜はじまりに〜
神永学 著
マガツキ
昨年、作家活動20周年記念として刊行された『ラザロの迷宮』。内容もさることながらどんでん返しカバーも話題となっていました。
その余韻が未だ脳の片隅に存在している中、発売された『マガツキ』。
とことん正体が伏せられている“それ”が何なのか、また表紙の妖しいデザインに惹かれて購入。
神永先生の作品といえばラザロもそうですが『心霊探偵八雲』(6月にシリーズ再始動!)がもう本当に読みやすくて。
だから『マガツキ』もきっと、内容はするりと脳に入り込んでくるのだろうし、怖さもしっかり感じられるはず!
そんな期待を胸にページを捲っていきました。
〜感想のまとめ〜
◯やっぱり神永先生の文章は読みやすい。それでいて怖いところではしっかり「怖い」と思わせてくれるので、さすがとしかいいようがない。うっかり夜中に読んでしまったが為に、暗闇の向こうから“それ”がこちらを見つめているのではないかと懐疑的になってしまいました。
◯“それ”にまつわる連作短編。各話、“それ”と邂逅したことによって歪められていく様が時に恐ろしく時にグロテスクに描かれています。
想像したくないシーンもあって、食事中じゃなくてよかったなあ……と。
全体的な感想として──てっきりひたすら正体の掴めない“それ”がもたらすホラーを味わうのかと思いきや、話が進むにつれて物語の目指す意図が収斂していき、それに伴って多岐にわたることになるホラーの興趣が面白かったです。
◯では、登場人物たちを惑わす“それ”とは何なのか。
起点は『あなたは選ばれました。』というシンプルな一文なのに、そこにある薄寒いような忍び寄ってくるような怖さが背筋を撫でていきます。
“それ”は登場人物たちの側に近付く。“それ”の造詣描写が禍々しいだけに、「絶対に自分の身に降りかかってほしくない」と思っちゃう。
展開が進むにつれて“それ”の詳細が明らかになっていくものの、それはそれでまた怖いんだよな……。
◯人間に災厄を引き起こす“それ”。その被害を食い止めるため、というよりは一つの懐疑から着手される調査。それはそれまでの事象を点とし、最終的には点と点が繋がっていきます。これによって当初より「怖い!」という気持ちは薄らぐけれど、いやでもやっぱり不気味なもんは不気味。
ホラー小説も『創作』の俎上にある以上、変化は憑きもの。ホラーを書き続けてきた神永先生の、新たな一面が出ているように思いました。まさに新境地ホラー!
◯そんで、これぞホラー小説という展開と余韻。映画ならば終盤にかけて怒涛の畳みかけが行われるように、本作も後半になるにつれて“それ”との接触が増していき、一気に恐ろしさが駆け抜けていきます。
神永先生の要素がぎゅっと詰まったシーンを経て、ページを閉じた私は「ほぅ」と息を吐くのでした。
〜おわりに〜
絶対に逢いたくないですね、“それ”とは。
でもなぁ、スマホを持ってるからいつなんどき『あなたは選ばれました』ってDMが届くかわからないからなあ。
SNSの設定を見直さなきゃいけないな、と半ば冗談に思うのでした。
皆様も,どうぞお気を付けくださいませ。
ここまでお読みくださりありがとうございました📚
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