小匙の書室269 ─バーニング・ダンサー─
二年前、落下した隕石により発現した『コトダマ遣い』。コトダマ遣いである刑事・永嶺は、過去の疵を抱えながらも、新設された『警視庁公安部公安第五課 コトダマ犯罪調査課』通称【SWORD】へ移る。
そして配属初日、『コトダマ遣い』の犯罪としか思えぬ事件が起きて──。
〜はじまりに〜
阿津川辰海 著
バーニング・ダンサー
私の好きな作家の一人である、阿津川先生。
著作の一つ『阿津川辰海 読書日記 かくしてミステリー作家は語る〈新鋭奮闘編〉』は第23回本格ミステリ大賞を受賞しており、著者がいかにミステリを愛しているのか、わかるかと思います。
そうした数々のミステリに触れ、抱えきれぬ愛に裏打ちされた作品は6作連続で「このミステリーがすごい!」ランクインするほど。
そんな著者最新作がついに刊行!
※8/17には『王様のブランチ』(TBS系)で本作が紹介され、Amazonの『ミステリー・サスペンス・ハードボイルド』において『ほしい物ランキング』1位、『売れ筋ランキング』で3位を獲得。(8/19当時)
いや〜雑誌連載当時から早く読みたいと思っていたものです。
異能力が絡むというのは、ドラマ『SPEC』が意識にあったそうで、私は未視聴なのですがドラマに感化されたならばきっとエンターテイメント性も抜群なのだろうと思っています。
シリーズ展開も視野に入れているとのことで、〈館四重奏〉と並ぶ看板になるのかな。
ともあれ、私は逸る気持ちを堪えきれそうにないので、早速ページを捲っていきました──。
〜感想のまとめ〜
◯相棒の死をきっかけに、『警視庁公安部公安第五課 コトダマ犯罪調査課』通称【SWORD】へ移る永嶺。
配属初日から顔を合わせるメンバーの個性とクセの強さに惹かれ、また、『コトダマ』として登録されている一覧表を眺めるや、私はこの作品が放つ面白さの沼へ片足を突っ込むこととなった。
過去の疵を引きずりながらも、班長として課された永嶺の使命。
第二作、三作とシリーズを経るにつれてキャラクタ小説としての味わいが深くなりそうだと思った。
◯工場で発見された遺体は、コトダマ遣いの仕業としか思えぬ様相で。
──この作品(ゆくゆくはシリーズとして)は遺体の状況から考えられる使用された【コトダマ】とその遣い手の正体を推理し、【コトダマ】の使用条件にも思考を巡らせて、さる理由から生け捕りにしなければならないのだ。
捜査に際して各キャラの能力が判明するのだが、これがまあ楽しいこと楽しいこと。色んなところに推理の要素が散らばっているのだ。
◯事件の捜査をしながら、一丸となっていくSWORD。いがみあっていたり、怯えていたりする人物たちだが、凝り固まっていたものが解れたり能力を発動したりする度に私の中で彼・彼女らの印象が目まぐるしく変わるのだった。
個人的には桐山が好きだ!!
と、思ったが、坂東も好きになった!!
コトダマ遣いとして各キャラが背負っている過去や、世間の風評による窮屈さが、彼・彼女たちを事件を通して成長かせるファクターとなり、人間ドラマとして非常に読ませるのだ。
◯コトダマ遣い同士の戦い。ミステリとしても勿論のこと、アクションパートにも相手の能力を推理する瞬間があり、物語にエンターテイメント性を見出すことができる。
『燃やす』のコトダマ遣いが起こした過去と現在の事件。私も無能力なりに犯人逮捕への気持ちを滾らせた。
いったい、『燃やす』の目的とは何か? そして、能力発動のための必要条件とは何か?
捜査が進むにつれてコトダマ遣いvsSWORDの構図が確かなものとなり、これがまた熱くさせてくれるのだ。SWORDをとり仕切る三笠の振る舞いにもスカッとさせられた。
いかにして『燃やす』を追い詰めるのか、物語のうねりに期待値が高まっていった。
◯次から次へと舞い込む情報と、それらを精査することで見えてくる真実。コトダマ遣いの特徴と併せながら築かれたそれに、どうして高揚しないわけにはいくまい?
伏線が回収され、怒涛のように展開は流れ、あまりの面白さに息が乱れるかと思った。
SWORD初事件は無事に解決できるのか。
強大な敵を前に浮かび上がる永嶺の本心とは──。
早くシリーズの二作目を出してください!!
〜おわりに〜
くじ引きで当たりを引いた感覚。それが本作読了直後に抱いた純真な感情です。
とにかく最初から最後まで面白くって、何度「読み終わりたくない」と思ったことか!
これはいずれドラマ化とかしそうだな……。
ミステリの楽しさあり、アクションあり、ドラマあり、鮮やかな伏線回収あり!
二作目はどんなコトダマが絡むだろうか……。
ここまでお読みくださりありがとうございました📚
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