小匙の書室124 ─逃げまくった文豪たち─
「逃げてたくなったら逃げてもいい」
それでも動けないあなたに、文豪の後ろ姿は何かを与えるかもしれない──。
〜はじまりに〜
真山知幸 著
逃げまくった文豪たち
こちら2023/7/12に発売された書籍。
ネットギャラリーさんのサイトを見て回ったときに目に留まり、「こんな面白そうな書籍があったなんて!」と早速ダウンロード。
文豪の歴史に明るくない私ですが、紹介されている何人かは破天荒な人生を歩んでいるのはぼんやりと知っていました。
では、実際にそれらはどんなものだったのか?
「逃げ」の肯定にも期待しつつ、読み進めていきました。
〜感想〜
それでは本書の読みどころを紹介してまいりましょう。
◯文豪のイラストとわかりやすい来歴。
名前は知っていてもどんなご尊顔だったか、あるいはどんな作品を上梓していたか。それらがまずは簡潔に紹介されているので、さっと「そうだそうだ、こういう文豪だった」とすぐに思い出すことができます。
※巻頭には本書に登場する文豪の生没年表が掲載されているのも、学びを得るポイントとして良い。
◯逃げまくった文豪のエピソード。
本書のメインテーマ。
どんなに偉大な文豪も、逃げるときは逃げる、それも時にはちゃめちゃに。
だいたい4〜6ページにそのエピソードがぎゅっと詰め込まれているのですが、中身が濃いこと濃いこと。
今の時代性に鑑みれば眉を顰めてしまうものもあるけれど、大概が「そこまでやっちゃうのか!」とむしろ笑ってしまうような破天荒なものが多かったです。
ここにある全てを参考にして現実から逃亡するのは難しいでしょうが、「いざとなれば先人の轍がある」と考えれば多少心は軽くなるだろうし読む意義が芽生えることにもなるでしょう。
◯文豪も人間なんだって、思える。
教科書に載っていたり、各ジャンルにおいて崇高な存在として語られたりしていても、この逃亡劇を前にしては彼・彼女らも人間なのだなと思えます。
そして、逃亡先で自分のやりたいことをやっている姿を知れば、現実から逃れるのは必ずしも悪いことではないのだと自覚を持つことができるのです。
日々の忙殺に塗れて自分を見失ってしまったとき、文豪の後ろ姿から客観性を取り戻せるかもしれません。
◯逃げエピソードのリザルト。そして名言。
著者、真山さんによる独自の視点で、各文豪の逃げエピソードに点数が付けられています。
『技術点』『芸術点』『減点』。
あなたなりの点数を付けてみるのも面白いかもしれませんね。
そして最後は、文豪による名言で締め括られます。
生きるのが何となく辛くなったとき、ビタミン剤になること間違いなし。私は太宰治先生の名言にグッときました。勝手な意見ですが、本書を総括しているようにすら思うのです。
〜おわりに〜
国語の授業なんかで習って以来、あまり身近に感じなくなっていた文豪たち。
本書を介して彼らの人となりの一部を覗き見ることができたのは良い経験になりました。
エピソードに着想を得て生み出された作品のことも紹介されているので、それを読むときには「ああいう経験があったからこそなんだなぁ」としみじみに思うことになりそうです。
ここまでお読みくださりありがとうございました📚
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