小匙の書室116 ─ゆうずどの結末─
その⬛︎⬛︎を読んではいけない。
禁忌の書籍、ここに生まれる──。
〜はじまりに〜
滝川さり 著
ゆうずどの結末
発売前から気になっていた作品。なんてったって全国の書店員さんが絶叫したとかなんとか……。
積極的にホラー小説を読む人間ではありませんが、こんなにも期待値を高められてしまっては手に取らない選択はあり得ないわけで。
私は早速書店に赴いて本作を購入するのでした。
『ゆうずど』は何を意味するのか。
読んではいけない⬛︎⬛︎とは何なのか。
人それぞれに結末があるとのことで、それも含めて恐る恐るページを開いていきました。
結果、私は気持ちがいいくらいに怖さを覚えることができたのです。
〜感想〜
まず、非常に読みやすかった。それでいて怖いところではきっちり怖さをもたらしてくれるので、先を読みたいけれどどんな怖さが待っているのかわからない不安が常に付き纏っていました。
主な感想は以下の通りです。
◯呪われた小説をめぐるホラー。
角川ホラー文庫から出版されているその本は、一行でも読んだら呪われる。
これは読書家からすれば致命的な呪術ですよね。読みたいけど呪われるから読めない。
しかも捨てても捨てても戻ってくるのです。古典的なセオリーなのに、それでもやっぱ怖いものは怖い。
本作は、そんな曰く付きの書籍をめぐる連作短編でした。登場人物たちの元に姿を現した『ゆうずど』。果たして彼らは呪いから逃れられるのか……。
◯色んな恐怖が楽しめる。
収録されている章にはどれも『ゆうずど』による怪奇現象が蔓延っているのですが、そのアプローチには様々なものがありました。
視点人物の心情に気持ちを重ねることによってひたひたと迫り来る恐怖を感じたり、『ゆうずど』の脅威を用いた生々しい痛みがあったり……。
もうね、言葉は変だけれど気持ちがいいくらいに怖かった。
※『ゆうずど』の存在そのものの恐怖が幅を利かせているから、副次的なホラーに気付けないのです。だからこそ余計にドキドキさせられました。
◯結末を迎えたくない、小説。
その理由は長く語りません。
とにかく結末を迎えることが、嫌なのです。
でも、これはネガティブな色合いを含んでいるわけではなくて……。
とにかく読んでほしい。
そして私の言わんとすることを理解してもらいたい。
◯メタ的で斬新な呪いの回避法。
こちらも読んでみればわかるのですが、一つだけ言っておきます。
『ゆうずどの結末』が話題になればなるほど、おそらく書店からその姿は消えていきます。あなたは買えないとわかった途端にどうしても中身が気になって、何が何でも欲しくなってしまうことでしょう。
そのとき、どうするか。
それがあなたの、分水嶺です。
◯『ゆうずど』とは何を意味していたのか──。
もちろん、そのことも明かされます。
最終章で登場するのは著者である滝川さり先生。
こういう演出は好きです。
著者自身が『ゆうずど』についてを語っており、私小説風な展開が良かった。
最後の最後までホラーを堪能することができました。
〜おわりに〜
率直に面白かったです。
「怖い」という感情が研ぎ澄まされるような、そんな読書体験をしました。
さて。私の購入した『ゆうずど』は、捨てたら戻ってくるのでしょうか。
そもそも、私は呪いを回避することができているのでしょうか。
皆様の結末も、是非とも知りたいですね。
ここまでお読みくださりありがとうございました📚
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