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5類移行後の感染者搬送に関して


一.法律とか興味あるかわかりませんが

facebookに投稿しようか、そもそもTwitterのツリーにしようかと悩みましたが、たぶんあまり興味のない話題だろうということで、とりあえずnoteに書き留めようと思います。

2023年05月08日にコロナが5類移行へと変更になりました。そして公式ホームページに書いてありますが、介護タクシー川村は2023年08月のお盆に陽性者の搬送を拒否したことで現在は運輸局の調査および処分待ちの状況です。
もちろん何らかの処分が出たら不服申し立てをするつもりなのですが、それには法律や制度をある程度理解しておかなくてはなりません。そして根拠を構築しておく必要があります。

これは、その過程で自分なりの考えをまとめた記事になります。要点は明確なので、そんなにダラダラ書く必要は無いのですが、順序だてて書き留めておきます。

さて、介護タクシーの感染者搬送にかかわる法律、規則、事務連絡は大きく以下4つあります。

  1. 道路運送法第13条

  2. 旅客自動車運送事業運輸規則第13条

  3. 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律

  4. 別紙「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制の移行及び公費支援の具体的内容について(令和5年3月 17 日(令和5年4月 28 日最終改正)厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部事務連絡)」に関するQ&A

1.道路運送法第13条

(運送引受義務)
第十三条 一般旅客自動車運送事業者(一般貸切旅客自動車運送事業者を除く。次条において同じ。)は、次の場合を除いては、運送の引受けを拒絶してはならない。
一 当該運送の申込みが第十一条第一項の規定により認可を受けた運送約款(標準運送約款と同一の運送約款を定めているときは、当該運送約款)によらないものであるとき。
二 当該運送に適する設備がないとき。
三 当該運送に関し申込者から特別の負担を求められたとき。
四 当該運送が法令の規定又は公の秩序若しくは善良の風俗に反するものであるとき。
五 天災その他やむを得ない事由による運送上の支障があるとき。
六 前各号に掲げる場合のほか、国土交通省令で定める正当な事由があるとき。

2.旅客自動車運送事業運輸規則第13条

(運送の引受け及び継続の拒絶)
第十三条 一般乗合旅客自動車運送事業者又は一般乗用旅客自動車運送事業者は、次の各号のいずれかに掲げる者の運送の引受け又は継続を拒絶することができる。
一 第十五条の二第七項又は第四十九条第四項の規定による制止又は指示に従わない者
二 第五十二条各号に掲げる物品(同条ただし書の規定によるものを除く。)を携帯している者
三 泥酔した者又は不潔な服装をした者等であつて、他の旅客の迷惑となるおそれのある者
四 付添人を伴わない重病者
五 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)に定める一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症若しくは指定感染症(同法第四十四条の九の規定に基づき、政令で定めるところにより、同法第十九条又は第二十条の規定を準用するものに限る。)の患者(同法第八条(同法第四十四条の九において準用する場合を含む。)の規定により一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症又は指定感染症の患者とみなされる者を含む。)又は新感染症の所見がある者

3.感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律

第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関し必要な措置を定めることにより、感染症の発生を予防し、及びそのまん延の防止を図り、もって公衆衛生の向上及び増進を図ることを目的とする。

4.別紙「新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけの変更に伴う医療提供体制の移行及び公費支援の具体的内容について」に関するQ&A

【Q18】18.5類感染症への移行に伴い、今後、タクシー等公共交通機関がコロナ感染又はコロナ感染疑いの者の運送を断った場合、乗車拒否の正当な事由に該当しないこととなるのか。国土交通省における関係通達の改正はあるか。
【A18】(答) 5類感染症への移行に伴い、旅客自動車運送事業運輸規則第13条の拒絶ができる場合に該当しないこととなるため、コロナ感染または感染疑いの者であることをもって乗車拒否は出来ないこととなります。また、通達等の改正は特段ないと承知しています。←ここに注目※

二.5類移行後に感じた疑問

前段に書かれている「通達等の改正は特段ない」、これはいったい誰が考えて、誰が回答文書を作成して、だれが責任ある立場で回答したのだろうか?

自分の感じた疑問はここに尽きます。前半の運輸規則第13条云々は、まぁそういう話になりますよね、ってなると思います。道路運送法第13条5号とも繋がります。でも「通達等の改正は特段ない」などとナゼ断言できるのだろう?まず、5類移行になったからといって感染力が弱まったわけでも無く、感染者数が絶対に増えないなどと断言もできません。そもそも道路運送法第13条6号には「国土交通省令で定める正当な事由があるとき」という言ってみれば通達等の改正などで対応するよう促す、余地を残しています。

そもそも旅客自動車運送事業運輸規則第13条5号の根拠となる、『感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律』第1条は、「感染症の発生を予防し、及びそのまん延の防止を図り、もって公衆衛生の向上及び増進を図ることを目的とする」ものです。そこにはもちろん介護タクシーの運転手も含まれます。感染が再拡大する状況においては、通達等の改正は特段ないなどと言えるはずもありません。どうしてこんな事を書けるんだ?

このような疑問から、事務連絡を発出した厚生労働省に、疑問の答えとなるような文書の情報公開請求をしました。請求の過程については省略しますが文書を入手するまでに、およそ2ヶ月ほどかかりました。

三.情報公開文書からわかること

先ずは情報公開請求で入手した行政文書を公開します。内容はファイル名の通り、問18の回答に関するメール全てです。

①厚生労働省 新型コロナウイルス感染症対策推進本部 渡邊智之課長補佐から国土交通省への照会メール(2023年03月23日)

5類移行に向けた、自治体への実務説明会」において、問18に該当する問い合わせがあり、国道交通省に照会した、ということが解ります。
つまり「5類移行になったらタクシーは乗車拒否できないんだよね?」といった問題提起は、厚生労働省と地方自治体とのやり取りから出てきたものであることも解ります。

厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部渡邊課長補佐から国土交通省へ照会メール①

②年度明けの催促メール(2023年04月19日)

回答者が国土交通省當銘氏に絞られたらしい、ということが解ります。

厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部渡邊課長補佐から国土交通省へ照会メール②

③回答作成のための文書依頼(2023年04月25日)

②と③の期間、6日間のどこかで、電話による回答内容の打ち合わせがなされたことが解ります。
そして注目の「通達等の改正は特段ないと承知しています」の部分に関しても、この時点で回答内容に含まれていることも把握できます。
さらには「通達等の改正は特段ないと承知しています」の部分を削除しても構わないのではないか?といった提案が、厚生労働省渡邊氏から国土交通省當銘氏に対して示されていることが明らかです。

厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部渡邊課長補佐から国土交通省へ照会メール③

④国土交通省 大臣官房 危機管理室 當銘博専門官による回答メール(2023年04月26日)

「通達等の改正は特段ないと承知しています」の部分を削除しても構わないのではないか?といった提案に対して、国土交通省當銘氏は削除する事無く回答に明記したことが解ります。
削除しなかった理由についても書かれていない事から、国土交通省側では、その程度の認識であったと理解できます。

国土交通省 大臣官房 危機管理室 當銘博専門官による回答メール

四.介護タクシー運転手はどうすべきか?

個人的には、今回の情報公開請求する前の時点では、この回答が厚生労働省主導で作られたのではないか?と思っていました。だって、いかにも運転手の感染リスクに対して軽視し過ぎているじゃないですか?少なくとも国土交通省の人間であれば「今後通達等による改正もありうる」という余白は残すはずでは?だって道路運送法13条にすら省令で対応で出来るヨンって書いてあるじゃん?そう思っていました。ところが行政文書を見てビックリ!

さてここからは個々の事業者、運転手の判断です。たしかに介護タクシーは公共交通です。5類移行後に感染症者を乗車拒否する事は望ましくありません。とはいえ介護タクシーです。一般タクシーと違い介助することが大前提である以上、大きな感染リスクが付きまといます。それは同時に介護タクシーが媒介となって高齢者や障害者など重症化・死亡リスクの高い乗客への感染拡大リスクにもなります。単純に介護タクシーは乗車拒否できない、などと言ってしまえるものでしょうか?

そして視点を広げてみましょう。今はどこも運転手不足です。業界や行政が試行錯誤していますが、運転手の待遇改善なくして運転手不足問題は絶対に解決できません。それは感染対策においても同じです。感染対策も運転手の待遇改善だということを、これからの常識として考えられないのか?

わたしたちはコロナ禍を経験して、だれもが感染対策の知識を深めました。5類移行になってもコロナは感染を続けていますし、重症化や感染力も変化し続けています。感染対策をコロナ前に戻すとか、タクシーは陽性者の乗車拒否ができません以上!、などとそこで思考停止するのではなく、アフターコロナの感染対策について考え続ける意味があるのでは?

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