見出し画像

塗るつけまつげとパルガントンのパウダーで、女子高生になれた気がしたあの頃

まず唐突に年齢開示をすると、私は今年で34歳になった。
昭和62年。1987年。辻内世代(野球ファンにしかわからない括り)。ハンカチ世代の1つ上と言った方がわかりやすいかもしれない。

もうアラサーとも言えない、30代中盤に差しかかった女だ。
そして当たり前のことだが、そんな私にも10代だった時代があった。 

◇◇◇

高校生になりたての頃の私はセブンティーンを愛読していた。
えみちぃこと鈴木えみさんや、なおちんこと徳澤直子さんなどに憧れを抱き、少しでも彼女達の美のエッセンスを吸収しようと毎号目を血走らせて熟読していた。

モテ特集に掲載されていた「冬場にマフラーを膝掛けがわりに使っている女子は可愛い」という謎の説を信じ、授業中常に膝にマフラーを乗せていた時期もあった。

(見かねた友人に「寒いなら膝掛けブランケットを買った方が良いと思うよ」と尤も至極な指摘を受け、その後普通にブランケットを買った。マフラーよりずっと暖かかった…)


そしてセブンティーンと言えばメイク特集だ。
メイクの知識は皆無だったので、とりあえずセブンティーンで紹介されている化粧品を買えば安泰だろうと思い、手が出る価格のものを少しずつ買い集めた。

まずはデジャヴュの「塗るつけまつげ」ことファイバーウィッグ。

今のデザインではなく、この気の強そうな目のイラストが描かれた赤いボトルのものだ。
これは私と同年代の女性はかなりの確率で所持していたと思う。

塗ったそばからカールは下がるし涙でカスがポロポロ落ちるし、最近のフィルムマスカラよりだいぶ使いにくかった記憶があるけれど、それでも毎日使っていた。
マスカラの繊維で少し長くなったまつ毛がなんだか新鮮で嬉しくて、鏡を見る回数が増えた。

そしてパルガントンのシアトリカルパウダー。

これも恐るべき所持率だったと思う。
ドラッグストアで買った日焼け止めを適当に塗って、その上からこのパウダーをバフバフとはたいていた。
正直どういう効果があるのかはよくわかっていなかったが、パフで塗りたくる工程が楽しくて「ああ、私ってセブンティーンっぽい…(?)」とウットリしていた。

他にも、ベビーピンクのチューブタイプのリップグロス、ビボのアイフルアイライナー(目のイラストがビッシリ描かれている)、資生堂の眉墨鉛筆などを買った。

しかし私が通っていた高校はメイク禁止だったので、使うのは主に塗るつけまつげとパルガントンの2種類。
これくらいならメイクがバレることはまず無かったし、使うだけで「私今メイクしてる!セブンティーンの女子高生みたいだ!」という自己満足に浸れたのだ。
それは誰のためでもない、自分のためだけの時間だ。

もちろん、セブンティーンの紙面に登場する煌びやかな女子高生と田舎の痛ダサい女子高生の私(痛さの例として、スクールバッグを安全ピンでデコり、行ったこともないA BATHING APEのシールを貼り付けて最高にクールな仕上がりだと自負していた)は著しく乖離しており、今思えば全然セブンティーンの女子高生のようにはなれていなかったのだけど、それでも自己満足のパワーはすごい。

おかげで3年間、自分のことを「それなりにトレンドを取り入れつつ、我が道を行く女子高生」だと勘違いしながら過ごすことができた。

今思い返すともう!めちゃくちゃ!!めちゃくちゃに!!恥ずかしいのだが、それでも私にとっての高校時代は楽しいものだった。

良い友達や先生に恵まれたことは確かだが、塗るつけまつげやパルガントンのパウダー達により少しだけ底上げされた自己肯定感のお陰でもあった…のかもしれない。

残念ながら今の私は、もうどちらも使っていない。
しかし「私のベストコスメ」を挙げるとしたら、メイクの楽しさを教えてくれたこの2つなのかな、と思うのだ。

この記事が参加している募集

#買ってよかったもの

58,983件

#私のベストコスメ

2,616件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?