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組織風土改革日報№.9_コーチング名探偵と走り回る刑事の話

①前回のあらすじ

2021年4月から自律分散型組織の企画運営リーダーとしてアサインされた私(キタ/北)
自律分散型組織とは。
組織風土改革とは。
一つずつ言語化し、実現に向けてイメージの具体化が進んできた。
いよいよ施策の中身を決めていかないと。。。
そうだ、コーチング講習の開発を、上司から求められているのだった。。

~登場人物~
キタ:私
林さん:私の上司
山下さん:チームメンバーの先輩
新井さん:本社で組織風土改革を担当する女性キャリコン
本田さん:本社で管理者向けにコーチング研修を主催

②不思議な名探偵と刑事

2021年8月。
自律分散型組織導入に向け、組織管理者との継続的な雑相会を続けながら、私は白紙のexcelに、新しいアイデアを描き始めていた。

これまでの約3~4カ月は、10年後のあるべき/ありたい組織の姿に根詰めていただけに、新しいタスクに、新鮮さを感じていた私。
待ちきれない子供が、ぴょんぴょんと小刻みに飛び跳ねるかの如く、キーボードを叩いた。

コーチング講習の開発

これから暫く、私が寄り添う事になるタスクの名称だ。

一通りexcelに頭の中の情報を落とし、整理が進んだ所で、このコンテンツを、どう実績に結びつけようかに思案する。

アレコレ考えたが、実現にはまず組織管理者との合意が必要だ。とりあえず林さんに相談してみよう。

「林さん、ちょっと前にコーチング講習実施について、お話頂いたじゃないですか。」
『はいはい。覚えてますよ。』
「そろそろ着手していきますが、何とか9月末までに、実績は作れたらいいなぁ~って思ってて。」
『いいですねぇ~。うちの監督者に受けて欲しいやつ居んねん。』

話が早い。
まるで自分の主訴を見透かされているかの様だ。

「あっ、OKです。では今週中にコーチングって何やるの?とか講習概要を整理した企画書を作成しておくので、またメンバー情報教えて下さい。」
『はいはい~後で連絡するわ、宜しく~』

なんだか事件が起こる前に、解決してしまう、不思議な名探偵に振り回される刑事の気分だった。

我々はその日のうちに、企画書とメンバー情報を、共有し合った。


③あの頃の私はもう居ないんです。

「今日はお集り頂いて有難う御座います。」

今私はWebミーティングの主催者として、6名のメンバーと、同席頂いた山下さんに挨拶をしている。

もちろん、
皆さんカメラはOFFだ。
黒魔術の時間である。※日報④参照
せめて私はカメラをONのまま進める事にした。
なんだか尚更、イケニエ感が増す。。

「現在開発中のコーチング講習について、皆さんをトライアルメンバーとしてお迎えする為に、簡単に情報共有をしていこうと思います。
宜しくお願い致します」

おねがいしもぅすあぁす。

3,4名ほどの男性の低い声が重合し、粗悪なハーモニーが生まれた。
訝しげな呪文の様だ。

彼らは、林さんが管下メンバーからアサインした、どうやらコーチングに興味を持ってそうな、主任クラスの男性6名である。
私自身も、プロセスエンジニア時代にお付き合いがある方ばかりだった。

早速説明に入る。
使用する企画書はシンプルに5枚ほどでまとめた為、概要は10分掛からず伝え終わった。

「私からの説明は以上となります。ご質問ありましたらどうぞ。」

『あ、ちょっと良いですか?』
一人が発声した。カメラはOFFのままだ。
「はい、どうぞ」
もうカメラOFFのままで結構である。どうぞお話下さい。。。
『キタさん、何やってるんですか?』
「え?」

質問の意味が分からなかった。確かに何やってんだろう俺(笑)

『もう現場に来ないんですか?』
あぁ。彼らにとって、どうやら私は、まだプロセスエンジニアのキタなのだろう。

「えーとですね。。。」
2021年4月に異動した事や、キャリアチェンジの背景、対人スキルに関する資格情報、これまで投資した金額や時間をお伝えし、何となく納得いったみたいだった。

『もう自分達が知ってるキタさんじゃないんですね。』
「えぇ。皆さんの知っているプロセスエンジニアのキタは、もう居ないようです。」
『戻ってこないんですか?』
「今のところは戻るつもりはないです。。」

安い刑事ドラマの、再会した元上司部下の問答みたいだ。

『これからはコーチングの先生なんですね。』

先生。
確かにその分野に関しては事実そうなるのかも知れないが、むず痒さを感じたので、否定しておいた。

質問して頂いた方は、一通り私に事情聴取をし、満足したようだ。
『はいわかりましたー。ありざぅまぅす。』
その言葉を最後にマイクをミュートにした。

余りにも去り際が潔かったので、ただ私を弄りたかっただけの様にも感じたわけで。

「えーー。。。他にご質問は御座いますか?」

・・・

誰も何も言わない。
例によって無言の承認タイムだ。

「では、これより講座内容を整理しつつ、日程を調整して参ります。」

・・・

「では今日はこれで終わろうと思いますが、いいですかね。」

『ちょっといいですか?』

いや、あるんかーーい!

「どうぞ。」
『あ、質問という訳ではないんですが、、あの、楽しみにしてます。』

わー、ちょっと嬉しい💛
「精一杯伝えさせて頂きます!!」

そう言って、
予定の1/4の時間で説明会を終えた。

うーん、やっぱりみんな最後までカメラOFFなんだな。
講習の時もOFFにするつもりだろうか。


④刑事は手のひらで踊る

コーチング講習の目途が立った。
資料もほぼ準備した。ボリュームは2h×3回のトータル6hとした。

念のため林さんに講習で使用する説明資料を共有した。

『ちょっと焦れるな。もう少し早い展開で演習入った方がええんちゃう?』
「そうですか?マインドからしっかり伝えないと、ただの質問スキルだと理解されちゃったらマズイ気がします。」
いつもは中庸な二人だが、今回はお互いに想いを乗せて話し合う。
内容が磨かれていく。

林さんがふと真顔で私の顔を見て固まった。
「どうされました?」
『本社で組織管理者向けにコーチング教えてる組織があんねんか。私もそこで習ったんやけど。』
何が言いたいか直ぐに分かった。
「後々揉めない様に、、、という事ですね。」
『宜しくぅ。』
「承知しました。」

とは言ったものの、誰に相談すれば良いのか見当はついていない。
そうだ。本社と言えば新井さん。という事で、早速彼女にチャットする。
暫くして返信があった。
どうやらコーチングを教えているのは、彼女のお隣の課らしく、担当者を紹介して頂いた。

担当者は本田さんという、私の一回り以上、年上の男性だった。

正式に彼にアポイントを取りなおして、当日ZOOMで接続した。
本田さんの喋り方は関西訛りで、林さんとよく似ていた。体型も印象としてスラリと痩せており、なんだか声まで似ている様な気がした。

自己紹介、そしてコーチング講習企画の概要を15分ほどでお伝えする。
「・・・という訳で、何か一緒にできないかと考えておりまして。。」
『いやぁ~、助けたいのはやまやまなんですが、実は結構立て込んでまして。。。』
「あぁ、、そうですか。」
『我々は組織管理者向けでやってまして、流石に現場監督者向けの講座は準備されてないんですわ。。。』
「そうですよね。。。うぅーん。」
『キタさんコーチングの資格お持ちなんでしょう。キャリコンも勉強されているので、ご自分でやられたらどうですか?』

はいー--!その言葉待ってましたー---!!


「・・・という事がありまして、我々の部内でコーチング講習を開催し、広める事には問題なさそうです。」
林さんに報告する私。
『あ、そうですかぁ~。よかったね。ほな暴れましょか。』

特に企んでこの流れに仕向けていた訳ではないが、何となく我々の腹の中で、狙い通りに事が運んでいる現状。
私は頭の中に、やはり名探偵林と、あくせく走り回らされるキタ刑事を、思い浮かべた。

「うぅむ。流石ですね。」
『 ?? ほんなら宜しくぅ~』

軽ーく流される。いじらしいぜ。この名探偵!

こうやって、自律分散型組織導入の施策として、かなり大きな1歩を踏み出した。

これからは、先のメンバー達と、コーチング講習の実績を作り、出来栄えを評価し、それから各課の組織管理者達に合意を頂いて、大きな活動にしていかないとな。。。やる事は山積みだ。

(目的の為の事前活動で、やる事が多すぎるんじゃないかな。)
そう思いつつも、活動プロセスの中で人脈が築かれていく大切さも、身に染みた。

「あっ。」

ふと気付いた。

見事に私は林さんから、このコーチング講習の開発というタスクに関して、答えと行動の勇気を引き出されており、しっかりコーチングされていた事に。

私は林さんの手のひらで踊らされているのでは?という疑念を抱いたが、結果的に良い方向へ進んでいる気がしたので、
思考の方向をコーチング資料に向け直し、上機嫌でタイピングを始めるのであった。


日報⑩へ続く

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