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組織風土改革日報№.8_一寸法師、組織開発に燃える

①前回のあらすじ

2021年4月から自律分散型組織の企画運営リーダーとしてアサインされた私(キタ/北)
参加予約した事をうっかり忘れていた『ティール組織』のウェビナーに出席したところ、日本のティール組織第一人者と呼び声高い、嘉村賢州さんと出会う。
対話し、教えられ、気付き、ついに他人事の世界だった『自律分散型組織』に自分なりの解釈と動機を得た私は、一人祝杯を挙げ、勝手に泥酔し、迷惑な二日酔いの朝を迎えるのであった。

~登場人物~
キタ:私
山下さん:チームメンバーの先輩
新井さん:本社で組織風土改革を担当する女性キャリコン

②幕間:一寸法師の正体

「頭いてぇ。。。」

二日酔い。。。
自律分散型組織への、私なりの意味付けに成功した祝杯として、芋の味がする、三国志で有名な馬の名前を冠にした、焼いたお水を飲み過ぎた様だ。

脈打つ度に、頭がザクザクと痛む。。。
肝臓でアルコールが分解され、生まれたてのアセトアルデヒドちゃんが、私の体内を駆け巡りながら、等身大の”さすまた”で刺しまわっている。。。

きっと昔の人は、アセトアルデヒドに、”一寸法師”という名前を付けたに違いない。

一寸法師の侵入を許し、内部破壊され、泣きながら土下座する鬼に、今の自分を重ねながら、今日の仕事を案じる。

まだ朝は早い。

水をたらふく飲んで、薬を飲み、シャワーを浴びて、業務開始時刻までには、何とかスッキリした。

一寸法師。
怖いぜ。


③自律分散型組織の概念(定義)を整理

業務開始後、私の知識の一部となったや書籍/資料/方針と、私の知識の一部を切り取った資料をひっくり返し、これから我々製造部が目指す『自律分散型組織』の抽象的概念化および言語化を始めた。

これから私が整理する組織概念は、今後1000人以上に渡る従業員の、組織方針となるのだ。

言語化に要した時間は15分かからなかった。
意外な程、もう私の中にあった。

我々の自律分散型組織は、
『組織の目標 と 自分の目標を統合し、実現に向けてメンバーと協力して自ら進んでいける様な、独自の工夫や仕掛けを、自ら生み出す組織』
これを概念(定義)とした。

次にこの組織概念を、改めて資料に落とし込み始めた。
面白いように、全てが結びついた。

・従業員の『健康』と『情熱』の根幹をなす姿として。
・企業理念や上位方針は方向性として。
・個人や組織の成長サイクルの起点として。
・改革に迷った時、立ち戻れる共通言語として。

その中に、コーチングなどの対人支援も、有効性をしっかりと結びつけておいた。

面白い事に、個人的な想いが乗っかりまくっている割に、パワーポイントは20枚ほどにスッキリ収まった。
(第一報は最大70枚ほどに膨れ上がったが。。。)

もちろん、事前に作成した、結果的にはティール組織の説明書となってしまった資料も、補足として役に立っているのだけれど、ここまで効率的で明瞭な内容になった理由を、一言で言うなら

筋(すじ)が良い
のだろう。

枝分かれ的に説明したい要素が、中核概念と結びついて、ストーリーで示されているものは、簡便で効率的だ。

念のため、私の思考バイアスが強すぎないか、山下さんにレビュー頂いた。

『すごく分かりやすいです。流石です。』
「ありがとうございます。分からない所はありましたか?」
『前回見たものは、これが自律分散型組織か。と思ったけど、、うん、今回の資料は、組織として機能している所まで、イメージできますね✨』

良かった~。

完成した資料を、電子掲示板に添付し、アップデートした。
数名の方からリアクションがあり、ポジティブなコメントを頂いた。

自律分散型組織のコトバとしての探求は、一旦ここまでとし、次は自律分散型組織導入に向けた、具体的な方法を考えよう。

④組織ってどこまでいっても人なんだよね

組織とは、人。
組織風土とは、人の意識。
組織風土改革とは、結局は人の意識改革なんだよなぁ。。。
頭の中がグルグル。
ちょっと紐解きにチャレンジしてみる。

組織開発なり、風土改革なり、広い意味での組織デザインを因数分解すると、以下の2つがあるとされる。

 ・ハード面:可視要素。制度やルール、意思決定プロセスなど
 ・ソフト面:不可視要素。人の意識や関係、動機など

さらに、私なりにソフト面を分解すると、こういうのもありそうだ。

 ・人の行動面:リーダーシップ、関係性、言動全般
 ・人の意識面:アンコンシャス・バイアス、モティベーション

これらを踏まえた上で、あえて、組織風土改革を、”成長”と捉えるならば、私の活動は、そこに纏わる人間の、一定方向への意識成長を促す、という事とも言えるのだろう。

もう少し深める。
さらに人にスポットを当てて、成長を考えてみよう。

人は経験によって学習する。
デーヴィッド・コルブの理論だ。

※インターネットより引用

実に核心を衝いている。
(私はこの理論の正しさを、身をもって感じていたし、決めつける訳ではないが多くの方にとっても、このモデルに得心が行く事だろう)

私はこの理論が好きだ。
こういうのが欲しいのだ。


組織デザインの、確からしい成長サイクル。

見ただけで、『あっ、確かに!』『なるほどねぇ。』自分の経験から、素直に意味付け出来てしまう様な、何かしらの理論。
私の、皆の、解像度を高める為の武器。

煮詰まってきた所で、”新井さん”にコンタクトを取った。

彼女は、最近繋がりを持った、本社人材開発部の人材エンジニアであり、年齢が近く、そしてキャリコンの先輩であった。

彼女の職務は私と同じ組織風土改革が中心だが、私の様な一つの部とは規模が異なり、全拠点全組織、つまり企業全体の組織風土を考える立場である。

当日はWEBミーティングで顔を合わせた。
『あ~北さん、こんにちは~』
「新井さん、お忙しい所すいません。今日は有難う御座います。」
『いぇいぇ~、今日はどうされたんですか~?』

京都弁だろうか。
訛りを含んだ喋り方が、彼女の元々備えている柔らかい雰囲気と相まって、独特の喋りやすい空気感を生み出している。

ここまでの経緯を簡単にお話しつつ、組織開発のストーリーについて迷っている旨を、本音を交えながらお話した。

『なるほど~、状況よくわかりましたよ~。こっちでやってる取組みなんですけど~』

そう言いながら、資料を画面に表示させて、私と関係ありそうな部分を説明してくれた。ついでに彼女が担当している研修の紹介も頂いた。
結構抜かりないぜ。新井さん。

『あと、これなんか、結構参考になるかもしれませんね~ えーっとドコあったかな。あ、コレコレ。コレです。』
ゆったりとした話し方の割には、間を埋めるような喋りと、素早い動作で、分厚い辞書の様な本を引っ張り出した。

(纏っている空気感とは違って、実はせっかちなのかもしれへんな~。。
あぁいかん、訛りが写ってもうてる。)

画面に映し出された辞書の様な本は、銀色の表紙に青い字でこう書かれていた。

組織開発の探求 中原 淳 + 中村 和彦 著


「おおそうですかぁ~、参考にさせて頂きます~。」
そう言いながら、テーブルの下でスマホを操作し、Amazonで購入手続きを済ませた。

『参考になれば!ところで、キタさんが目指しているビジョンはあるんですか~?』
「はい。従業員全員の、健康と情熱です。誰一人として社会から離脱する事なく、夢を見つけて活動できる企業にしたいですね。」
『素晴らしいですね。組織ってどこまでいっても、結局人ですもんねぇ。』

同じ世界観を持つ人がココに居た。
同志の存在が、とても有難く、心強く感じた。

人の成長や、集団としての効果的活動。
そんな事を、朝な夕な考えているうちに、いつの間にか専門性が磨かれ、気付かないうちに孤独にもなっていた様だ。

だけど、こういった瞬間に、私自信が繋がりを求める人間である事に気付かされるのである。

やはり、どこまでいっても組織とは”人が作っている”のだ。

⑤組織開発のステップを知る

先日新井さんの勧めで購入に至った『組織開発の探求』は、2日ほどで本は手元に届いた。分厚くて読み応えのありそうな本だ。

嬉しくて、生まれたての娘に見せびらかしていたら、アゴに頭突きをされ、顔を引っ掻かれ、本にはヨダレをかけられた。
どうやら0歳に組織開発は早かった様だ。

まずはこの”大人の読み物”を、パラパラと読んでみた。
組織開発の進め方や難点、関連の深い理論家に至るまで、委細の話が丁寧にまとめられていた。

改めて、最初から細かく読むことにした。

そして、漸く出会ったのである。


~実践的な組織開発の3ステップ~

①見える化
②ガチ対話
③未来づくり

出典『組織開発の探求』 中原淳+中村和彦著
※画像はインターネットより引用

見える化のステップで重要なことは、潜在的な問題を顕在化させることが見える化であり、誰もが認識している問題を図やチャートにすることではない。きれいな図やモデルにすることを見える化と捉えがちだが、現場に存在する有象無象な潜在的問題を可視化することが求められるのである。

ガチ対話のステップでは、何かを決めたり判断するのではなく、お互いの意見や考えの相違を明らかにする。そのためには、腹を括ってお互いが真剣に対話することが求められる。

ガチ対話を経て発散的にアイデアが出て、お互いの意見の背景となる考えを理解しあった後で収束する。これが未来づくりである。組織としてまとめるために未来におけるビジョンを共同して創り分有するということであろう。


組織開発や人材育成の研究者として、高名な方々。
一見複雑化しそうなこのテーマのストーリーを、シンプルにまとめつつ、且つ誠実だ。

やはり筋の良さを感じた。

このアイデアを、自律分散型組織と共に、広めよう。

先日は一寸法師にザクザクやられた鬼の立場だったが、
今私は、大きな組織の中で、少しで状況を良くしようと、あくせくする一寸法師の如く、静かに燃え滾っていた。

次はコーチングの講習立ち上げだぞ。。


日報⑨へ続く

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