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男性の育児休業が取得しやすくなる? 育児・介護休業法の改正内容まとめ

2021年6月に、育児・介護休業法が改正されました。

今回の改正における最も大きな変化は、男性の取得を促進するための新たな育児休業の枠組みが作られた、という点です。この枠組みは「男性版産休」といったキーワードでも報じられています。

育児休業の現在

改正内容を確認する前に、現在の育児休業取得状況を概観します。

2020年度において、女性の育児休業取得率は81.6%、男性の育児休業取得率は12.65%となっています。📊

男性の育休取得率は大幅な上昇傾向にある一方で、取得者のうち、育休期間が5日未満の割合は約3割(28.33%)という状況でもあります。📈

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厚生労働省|令和2年度雇用均等基本調査 結果概要より引用

政府の目標は「2025年までに男性の育休取得率を30%にする」。

そこで今回、子の出生直後の時期に、男性が育児休業を取得しやすくするための枠組みが新設されました。

そのほかにも、現行の育児休業を労働者がより取得しやすくしたり、事業主に義務を課したり、といった変更点もあります。改正の全体像を整理します。


育児・介護休業法改正のポイント5つ+雇用保険法の改正

ポイントは5つです。

👶1.「出生時育児休業(=男性版産休)」が新設される
👶2.休業取得しやすい雇用環境の整備、(自身及び配偶者の)妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知や意向確認を行うことが義務付けられる
👶3.育児休業が分割して取得できるようになる
👶4.1,000人超の企業には育休取得状況の公表が義務付けられる
👶5.有期雇用労働者の育児・介護休業にかかる取得要件が緩和される

上記のように育児休業が変わるのに伴い、雇用保険法の育児休業給付金についても整備がなされます。

👶6.育児休業給付金もあわせて改正される


内容を簡潔に確認します。

1.子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組み(「出生時育児休業」)の創設 【2022年10月】

出生時育児休業」、いわゆる「男性版産休」は、子の出生後8週間の間に、最大4週間まで取得ができる育児休業です。対象となる性別は限られていないものの、女性は当該期間中には産後休業を取得できることから、実質的には男性が取得することを想定した制度です。

出生時育児休業は、「現行の育児休業」(←「出生時育児休業」と区別するため、カッコ書きにしています)にと組み合わせて取得が可能です。

▶️なお、「出生時育児休業」を取得せず、出生の直後から「現行の育児休業」を取得するという選択肢ももちろんあります。(出生時育児休業は4週間までのため、最初から長期の育休を取得したい、など)

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厚生労働省|リーフレット「育児・介護休業法改正ポイントのご案内」より引用)


○育児休業中の就業について

「出生時育児休業」中は事前の合意の範囲内で就業が認められますが、上限は「休業期間中の所定労働日数の半分以下の日数、かつ、就業日の労働時間が所定労働時間数の半分以下」となる見込みです(今後省令で決定)。

なお、「現行の育児休業」中の就業は原則不可であり、労働者と事業主双方が合意した場合に限り、一時的・臨時的に認められます。

一時的・臨時的な就業は、例えば次のような例がこれにあたります。⭕️

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厚生労働省|リーフレット「育児休業中の就労について」より引用

▶️事前に合意した範囲で働くことができるようになるのは「出生時育児休業」期間中のみであり、「現行の育児休業」期間中は引き続き原則就業不可であることに注意しましょう。


2.休業取得しやすい雇用環境整備、申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務化 【2022年4月】

次の2点(雇用環境の整備、個別の周知・以降確認)が事業主の義務になります。具体的な内容は、省令において示される予定です。

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厚生労働省|資料「令和3年改正法の概要」より引用)


3.育児休業の分割取得 【施行日未定】

「現行の育児休業」についても、2回まで分割して取得することができるようになります。つまり、「出生時育児休業」と併せて取得した場合には、最大4回に分けて育休取得ができることとなります。

また、現状では、1歳以降に育児休業を延長する場合、延長開始のタイミングが1歳、1歳半の時点に限定されています。この開始日を、配偶者の育児休業の取得状況に合わせて柔軟に設定できるようにすることで、配偶者と交代して育休取得できるように改正されます。👪

▶️これにより、育児休業の取得しやすさは一層増すのではないでしょうか。

4.育児休業の取得状況の公表の義務化 【2023年4月】

従業員が1,000人を超える企業は、育児休業の取得状況を公表することが義務付けられます。(公表する項目は、今後省令で決定されます。)📊


5.有期雇用労働者の取得要件の緩和 【2022年4月】

現状、有期雇用労働者は、申出の時点で次の①②の両方を満たしている場合に限って、育児休業を取得できることとなっています。

①同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること
②子が1歳6か月に達する日までに、雇用契約の期間が満了することが明らかでないこと

2022年4月以降、①の要件が撤廃され、②を満たしていれば育児休業の取得要件を満たすこととなりました(=つまり、無期雇用労働者と同じ要件になりました)。

ただし、労使協定を締結した場合には、①の要件を設けることが可能です。


6.育児休業給付金の対象拡大 【施行日未定】

新制度についても育児休業給付金の対象となります(=出生時育児休業給付金)。また、分割取得した現行の育休制度も育児休業給付金の対象になります。📝

育児休業給付金は、1か月につき10日、かつ、80時間を超えて就業した場合、その期間については支給されません。この要件は、出生時育児休業給付金についても同様に適用されるようですので留意が必要です。


選択肢が広がる従業員、企業がすべき対応

まずは、2022年4月より義務化される、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備、個別の制度周知、意向確認の措置について、事業場の実態を見直すことがスタートになると思います。

環境整備の具体的な内容は、育児休業にかかる研修の実施、相談窓口の設置など、今後省令で示される複数の選択肢から選択することとされています。

個別の制度周知も非常に重要です。内閣府「男性の子育て目的の休暇取得に関する調査研究」によれば、男性の6割以上が育休取得について企業からの働きかけがなかったと回答しています。義務化にともない、企業側にも制度の正しい理解と働きかけが一層求められます。


2010年まで、配偶者が専業主婦(夫)の場合は育休取得を認めない企業が大半だった〜育児休業改正の経過

育児休業は、1927年に女性を対象に、事業主の努力義務として制度化されたのが出発点とされています。

その後、1991年に至って、男女平等に権利が付与されました。

しかし、2010年までは、労使協定を締結することで、配偶者が専業主婦(夫)の労働者に対しては、育児休業取得を認めないことができる仕組みとなっており、企業の多くはこの労使協定を締結していました*。

*…社労士TOKYO 2021年9月号 高村静「改正育児・介護休業法による男性版産休制度導入に向けて」

この「労使協定による専業主婦(夫)除外規定」は、2010年6月の法改正で廃止されました。

そのほかにも、育児休業に関する制度は次々とアップデートされています。

改正経過

厚生労働省|育児・介護休業法の改正経過<育児に関わる制度> 資料2

従業員が働きやすく、育児がしやすい社会の実現に向けて、最新の制度に対する十分な理解は事業主・従業員双方に求められると言えそうです。

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