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アイドルは労働者? 「光GENJI通達」と夜10時以降の生放送


この記事は、1月10日に配信したポッドキャストの文字起こしです。

欅坂46と日向坂46の所属事務所が18歳未満の夜間労働ルール徹底で合意

金山 『欅坂46と日向坂46の所属事務所が18歳未満の夜間労働ルール徹底で合意』っていうニュースを昨日(注:1月9日)見て。見ました?

安達 見たんですけど、中身までは知らなくて。すごく気になってたんです。

金山 弁護士ドットコムニュースが1月7日にシェアしてました。

欅坂46と日向坂46をマネジメントしているSeed&Flower合同会社が、労働組合の総合サポートユニオンと、夜間労働のルール運用の徹底などについて労使協議の結果、合意したっていうニュースです。

(総合サポートユニオンもnoteで当該内容を説明していました)

どういうことについて合意したかっていうのが、3点あって。

1つ目が、18歳未満の夜間労働を午後10時まで、中学生は午後9時までとするルールの運用を改め、徹底すること。 2つ目が、定期的な専門家のカウンセリングを実施すること。 3つ目が、ハラスメントや労務環境の相談窓口を設置すること。

この3点について、団体交渉の結果、合意しました、と。

18歳未満の労働者を22時以降働かせてはいけない

金山 この1つ目の深夜労働ルールなんですけど、これは労働基準法上の規制です。労働基準法上で、18歳未満は年少者、15歳未満は児童と定めています。

そして、それ以上の年齢の人よりも、労働時間などについて厳しい規制が設けられていて、その内の一つで深夜労働についての規制があります。交代制勤務の引き継ぎの30分間といった例外的ルールもありますが、原則は、18歳未満の人は22時以降働かせてはいけない、ということになっています。

アイドルは「労働者」?

金山 そして、これは労働基準法上のルールですが、そもそも、アイドルとかの芸能人の場合は、この労働基準法が適用されるかどうかという問題があって。関連付けて見ておきたいのが安達さんの好きな「光GENJI」通達です。

安達 はいはい。それ、めっちゃ気になっていたんですよね。

金山 その光GENJI通達って、どういうものかと言うと。光GENJIの、私詳しくないんですが、1988年にめちゃくちゃ人気が過熱してヒートアップして、中学生のメンバーが2人。

安達 あっくんと晃くん。

金山 あっくんと晃くんが、生放送のテレビに出演できないとなって。でも人気が過熱していたから批判が殺到して、テレビに出してくれと。何人でしたっけ?

安達 7人。

金山 7人か。だから7人中5人しか出られなくて。

安達 そうそう。

金山 「出してくれ」っていうのが殺到して。そしてそもそも、その問題に対応しなきゃいけないってなったときに、メンバーは労働者に当たるのか、っていうテーマが出てきた。それでいろんな委員会みたいなところでディスカッションがされた結果、いわゆる「光GENJI通達」(あるいは、「芸能タレント通達」)というのが出た。

どういう通達だったかと言うと、4つの条件を満たした場合は、労働者にはあたらない、っていう内容でした。その4要件というのが。

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4要件を満たすと労働者にはあたらない

金山 1つ目は「その人の歌や演技は、他人が成り代わることができない」。その人でしかできない個性が重要な要素であると。

2つ目が「支払われる報酬が時間に応じて定められていない」。稼働時間に応じた給与ではない。

3つ目が「プロダクションなどとの関係で時間的に拘束されない」。一般的な従業員みたいに、朝の10時から夕方の7時まで、月曜から金曜まで働いてくださいっていうような拘束形態じゃない。

4つ目が「契約形態が雇用契約でない」。これ、タレントの方とかだとプロダクションとの業務委託契約とかになるのかな?と思うのですが、

その4つの要件を満たしたら、労働基準法が想定する、規制の対象として保護をしなきゃいけない、いわゆる「労働者」には当たりませんっていうことで、労働基準法上の規制が及ばないから深夜労働もOK、みたいな取り扱いにしたんですね。

それであっくんと晃くんは夜の10時以降、テレビに出られたと。

この労働者に当たるか、当たらないかっていうのは、個々に判断しなきゃいけません。タレントは一律労働者に当たらないから、夜いくらでも働いていいっていうわけじゃなくて。別のタレントの方について「いや、あなたはよく見ると労働者です。契約内容的に労働者的扱いを受けていますよね?」っていう場合もあったりするので。これはそれぞれ、個々に判断されるべきものです。

深夜ルールの話

金山 それから深夜ルールなんですけど。労働者として扱われないとなったら、「じゃあ、もういくらでも働かせていいよね?」っていうのは、絶対違うじゃないですか。

だからその後、テレビ放送などについては、その労働基準法上の本来のルールに準じて、夜の10時以降は、18歳未満はテレビに出せませんっていう自主規制ルールっていう形で運用しているようです。

ただ一方で、テレビに出ない、リハーサルとかレッスンとかライブの準備とか。そういう部分は見えないから、たくさん働かせてしまっているところも多いんじゃないのかな?夜10時以降。

なので、そこは自主規制的な形で運用ルールを徹底してくださいという。

安達 事前に収録したものを流したりとかもありますよね?

金山 22時以降?

安達 うんうん。

金山 そうですね。そういう、テレビとかは一目で分かるじゃないですか。夜10時以降、生放送で出演していたらだめって。一方でリハとかは多分、夜までやったりするじゃないですか。その辺も、ちゃんとタレントを守るために自主規制してくださいねっていうのを、今回合意したってことだと思います。

ちなみに、総合サポートユニオンという労働組合は、個人でも入れます。ホームページを見ると、団体交渉は組合員じゃなきゃ、できないんですよ。推測ですが、所属タレントとか所属スタッフの方が、サポートユニオンに加入して、「環境を改善したいです」っていう交渉をするのに動いたのかな? と思います。

この総合サポートユニオンは、少し前に話題になった、マネージャーの働かせ放題問題っていうのもあって。そういう問題に関しても対応しているみたいです。

裁量労働制っていう、本人の裁量に委ねているから時間に対してじゃなくて、成果に対してお金を支払うよっていう制度があるんですが、マネージャーって実質、時間的な拘束をされていて、「それは裁量労働制の対象じゃないよね?」と。裁量労働制の対象じゃないってことは、時間に対してしっかり時給、つまり、残業代を払わなきゃいけないから、その残業代を支払ってないっていうことは「未払いですね、じゃあ払ってください」、っていうような話です。

欅坂46の話

金山 ちなみに、欅坂46はメンバーが26人いて18歳未満が2人います。日向坂46のほうは、メンバーが20人いて、18歳未満が4人。 (※2020年1月時点。現在は↓)

安達 あ、そんなものなんですね。

金山 そう。意外と少ないなって思いました。

安達 意外と少ない。AKBとかはどうなんでしょう?

金山 AKBはもっと若い方の割合大きいと思いますね。その場合どういうルールでやっているかは、調べてみないと分からない。公表はしてないんじゃないかな?

多分、こういうの今後、増えていくんじゃないかなと。

少し前に、いきものがかりとかが所属する会社のマネージャーが、さっきの裁量労働制の話で「裁量労働制の対象じゃないです」っていう結論になったので。芸能事務所も今後、働き方を見直しましょう、って絶対出てくると思います。

安達 なるほど。

金山 ありがとうございました。

安達 ありがとうございました。



ポッドキャスト、補足エピソードまで是非聞いてみてください

「労働者」の定義は、今後ますます重要度を増すトピックだと思います👶






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