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vol.014 近くて遠い島

夏に小浜島へ友人と娘と3人で出かけた時のこと。

竹富島のコンドイ浜からよく見える位置にある小浜島、その背景には深い緑の島、西表島が広がっている。夕日を眺める先にいつも見えるお隣の島。だからと言って、毎日の暮らしの中でちょくちょく遊びに行ける距離ではなく、私にとってそこは近くて遠い島だ。 

石垣島からは高速船で約30分、人口約700人の小さな島、自転車で島を巡るには少し起伏があり、意気地ない私はいつも車を借りてしまう。 

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最初に向かったのは、マンタ公園。 目の前の海は、ヨナラ海峡(マンタウェイ)と呼ばれ、マンタがたくさん泳いでいる海として知られている。

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娘と同じ歳ぐらいの子どもたちが少し離れた所からこちらをチラチラと見ては、何かを話していた。娘は、「こんにちは!」と持ち前のフレンドリーさを発揮して手をふった。それにつられて私たちも「こんにちは」と挨拶。子どもたちもそれぞれが挨拶をして通り過ぎて行った。 
 
マンタ公園から細崎漁港へとお散歩を楽しんだ後は、小浜島で一番見晴らしが良いと言われている海抜99メートルの大岳(うふだけ)へと向かった。 

ひょいひょいと軽々登っていく娘と友人の後をゆっくりと追うようにして登った。 

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頂上では、360度のパノラミックな景色の中に、青い空と海のグラデーションが広がり、緑の島々が海に浮かび、草木が風に吹かれ揺れ動き、灰色の雨雲が遠くで雨を降らせているのが一度に見渡せた。ヒリヒリするような日差しの中、そのダイナミックな景色に心奪われ、爽快な気分になった。

最後は、小浜島に行く度に一番の楽しみにしている「CANAAN COFFEE & BAKE STORE」へと向かった。丁寧に焙煎したコーヒーを淹れてくれるのは沖縄本島出身の白上大樹さん。眺めているだけで心がときめく宝石みたいに美しいケーキや焼き菓子を作っているのは、北海道出身でパートナーの桃子さん。 

店内には、沖縄の作家ものを中心にセレクトされた白上夫妻こだわりのアイテムが展示販売されている。 器やアクセサリー、ドライフラワーのアレンジメントやオーガニック素材の洋服など、どれも欲しくなってしまうものばかりだ。

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この日娘が注文したのは、「生チョコのタルト」。私は「石垣島パッションフルーツとココナツのタルト」と「エチオピア」のコーヒー。注文時に、「このケーキには、どのコーヒーが合いますか?」と聞くと桃子さんが気持ちよくオススメを教えてくれた。 

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忙しそうにテキパキと働いている二人の姿には、尖ったところがなく、カフェの落ち着いた雰囲気の中に柔らかい心地よさを演出していた。

お土産にエチオピアとメキシコのコーヒー豆を買ってお店を後にした。

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空を見上げると、今にも降り出しそうな雨雲が追ってきていた。私たちは、久しぶりの小さな旅に心を弾ませたまま車に乗り込み船着場へと向かった。

石垣島へと向かう帰りの船の中、窓の向こうで大粒の雨がザーっと海面を打ち鳴らしていた。

私の肩に寄りかかりスースーと寝息をたてている娘の顔を覗き見ると、なんだか笑っているように見えた。

先日久しぶりに再会した友人に「近くて遠いお隣の島へ、美味しいコーヒーとケーキをいただきに行きませんか?」と誘ってみた。 

秋の風が吹き始めた八重山、そろそろふらりと旅に出たくなる。


CANAAN COFFEE & BAKE STORE
https://www.instagram.com/canaan_coffee/


【水野暁子 プロフィール】
写真家。竹富島暮らし。千葉県で生まれ、東京の郊外で育ち、13歳の時にアメリカへ家族で渡米。School of Visual Arts (N.Y.) を卒業後フリーランスの写真家として活動をスタート。1999年に祖父の出身地沖縄を訪問。亜熱帯の自然とそこに暮らす人々に魅せられてその年の冬、ニューヨークから竹富島に移住。現在子育てをしながら撮影活動中。八重山のローカル誌「月刊やいま」にて島の人々を撮影したポートレートシリーズ「南のひと」を連載中。


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