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ドラマ「À Table!(ア・ターブル)」を見てメソポタミア文明の再現料理を作ってみた

再現料理と聞いて何を思い浮かべるだろうか。

「魔女の宅急便」のニシンとかぼちゃのパイ
「食戟のソーマ」のゆきひら流鶏卵の天ぷら丼
「きのう何食べた?」の鮭とごぼうの炊き込みごはん

などなど。アニメやドラマで登場するおいしそうな食べ物が頭の中で踊りだす。
再現料理を特集した書籍も数多く発売されており、「ONE PIECE」の敏腕シェフ・サンジがレシピ本「サンジの満腹」を出したり、「名探偵コナン」では100巻刊行を記念して「#コナン飯」を公式のダイジェストブックで特集したり…「モンスターハンター」の再現レシピ本「モンハン飯レシピブック」なんてものも出ている。

そんな中、歴史上の人物達が食した料理を、令和の時代に再現する新感覚グルメドラマがあるとか。

「À Table!(ア・ターブル)〜歴史のレシピを作ってたべる〜」

なにやら香ばしい匂いがぷんぷんする。
今回はドラマ「À Table!(ア・ターブル)」の魅力と、ドラマに触発された編集部が、メソポタミア文明の再現料理に挑戦するまでの様子をお届けする。


ドラマ「À Table!(ア・ターブル)〜歴史のレシピを作ってたべる〜」とは

まずは簡単にドラマの説明をしよう。

「À Table!(ア・ターブル)〜歴史のレシピを作ってたべる〜」
吉祥寺から徒歩20分のところに住む、結婚してから長い時間を過ごしてきた、主人公・藤田ジュン(市川実日子)とその夫・ヨシヲ(中島歩)の夫婦の物語を歴史レシピと共に描くドラマ。
マニアックな音楽映画や小説といった趣味と、親から教わった道徳と優しさの価値観が合う夫婦のテンポ良い掛け合いは必見!そして数々の歴史レシピからその時々の時代を感じ、タイムスリップしたかのような感覚になること間違いなし!
原作:歴史料理研究家・遠藤雅司(音食紀行)「歴メシ!決定版 歴史料理をおいしく食べる」(晶文社刊)

https://www.shochiku-tokyu.co.jp/atable/

大学職員の主人公・ジュンが、大学教授から教わった歴史のレシピを、単身赴任中に料理に目覚めた夫・ヨシヲと再現して楽しむ。料理をしながら歴史や偉人に想いを馳せ、見ているだけでちょっとした歴史の知識が身に付くのも楽しい。
全12話で、古代エジプトの女王からフランス・ロマン主義の劇作家まで幅広いので、気になる偉人や時代から楽しむこともできる。

第1話「マリー・アントワネット」が食べていたご飯
第2話「ユリウス・カエサル」が食べていたご飯
第3話「ソクラテス」が食べていたご飯
第4話「ビスマルク」が食べていたご飯
第5話「アレクサンドロス3世」が食べていたご飯
第6話「ヴィクトル・ユーゴ―」が食べていたご飯
第7話「レオナルド・ダ・ヴィンチ」が食べていたご飯
第8話「リチャード3世」が食べていたご飯
第9話「マルコ・ポーロ」が食べていたご飯
第10話「ベートーヴェン」が食べていたご飯
第11話「クレオパトラ」が食べていたご飯
第12話「メソポタミア文明」が食べていたご飯

そしてこのドラマ、とにかく居心地が良い。
夫婦の掛け合いが全てアドリブかと思うほどに自然で、自宅のリビングから声が聞こえているような感覚になる。買い物に出かけて料理をして、一緒に食べて、皿洗いまで、何気ない会話がドラマの優しい雰囲気を作り上げていた。

「ねえ、見て。あそこの家、多分、今夜チキンカレー」
「牛乳、クリームシチューの可能性もある」
「おお!たしかにその線もあるな…ねえねえねえねえ、あのおじさん、今夜回鍋肉とみた」
「はいはい」
「…めっちゃ見られた」

なんて自然で優しい会話。こんな会話ができる家族や友人と長い年月付き合っていきたい。

メソポタミア文明の再現料理に挑戦

さて、ここからはドラマの再現料理に挑戦する。
ありがたいことに「À Table!(ア・ターブル)〜歴史のレシピを作ってたべる〜」には、レシピをまとめた公式インスタがあるのだ。

どれもこれも美味しそうで選ぶのが難しいが、今回、編集部では「メソポタミア文明」の料理として、「古代小麦とラム肉のシチュー」と「メルス(古代メソポタミア風ガレット)」に挑戦することにした。

「世界最古の文明って、なんだか凄そうだから」

理由が浅いだろうか。最も古いものが最も凄いなんてことはないのだが、始まりから学べることはたくさんあるだろう。

古代メソポタミア文明は、ティグリス・ユーフラテス川流域、現在のイラクとシリアあたりで生まれた世界最古の文明。紀元前3000年ころから都市国家が栄え、楔形文字を用い、60進法や太陰暦などの文化が形成された。
もともとそのあたりは塩分の多い不毛の湿地帯で、人々は川魚を食べて生活していた。そこに灌漑や排水技術のイノベーションが起こり、農業地帯に変わった。小麦や米、大麦などの穀物、リンゴなどの果物、ネギ、にんにく、きゅうり、カブなどの野菜が栽培された。
また、羊やヤギ、牛、豚などの家畜も飼っていた。鶏肉も食べられており、ガチョウやアヒル、キジバトなどはご馳走だった。
彼らの生活に欠かせないのが、パンとビール。メソポタミアの人たちは麦芽からパンを作り、それと水を混ぜて自然発酵でビールを作っていた。3度の食事でビールを楽しむほどのビール好きと言われ、王や貴族だけでなく庶民も愛飲していた。

「À Table!」12話より

ドラマの12話を見ると、何千年も前から、人々が食べ物をおいしく食べようとしていたことに気づく。ただ生きるための食事ではなく、交流し、楽しみ、そのひとつに食事があったのだ。

材料を集める

料理を作るためには、まずは材料が必要。ということで、さっそく紹介する。
これが古代メソポタミア文明の再現料理を作るために必要な材料である。

▽古代小麦とラム肉のシチュー(4人分)
ラム肉…200g
エンマ―小麦…50g
セモリナ粉…20g
にんじん…80g(1/2本)
にんにく…1片
水…600g
クミン粉…小さじ1
コリアンダー粉…小さじ1
ミント…2枝(1枚は飾り)
古代メソポタミア風だし…600ml
-水…1.2l
-アサフェティダ粉…1つまみ
-クレソン…15g
-マスタードシード…2つまみ
-クミン粉…2つまみ
-けしの実…3g
-きゅうり…30g
-ビール…30ml
-牛すじ肉…30g

▽メルス(古代メソポタミア風ガレット)(4人分)
大麦粉…50g
エンマ―粉…30g
セモリナ粉…20g
デーツ…10g
ピスタチオ…10g
干しイチジク…5g
干しぶどう…5g
干しりんご…5g
にんにく…1片
ハチミツ…適量
コリアンダー粉…2つまみ
クミン粉…2つまみ
水…100ml
ビール…20ml
牛乳…30ml
サラダ油…適量
バター…5g

https://www.instagram.com/a_table_recipe/

…セモリナ粉って、なに?
…アサ…フェティダ…粉?

謎の粉が多すぎる。材料を見た瞬間に頭を抱えることになるとは思わなかった。
果たして揃うのか、不安を抱えたままスーパーへ。

いくつかの店舗を回った結果、ラム肉,コリアンダー粉,けしの実,干しぶどう以外をなんとか入手した。ラム肉のシチューなのにラムないのかよ、というツッコミを入れた方へ、ごめんなさい。

ドラマでも「材料揃うの?」「揃わないものもあるけど、そこは代用して。なんちゃってレシピってことで」といった掛け合いがあったので、今回はなんちゃってレシピということで許していただきたい。

逆に「絶対に見つかる気がしない」と思っていた謎の粉3種が見つかったのが驚きだが、
スパイス専門店の店員さんが「アルヨ」「ソレモアルヨー!」と続々と持ってきてくださった。

左のSOOJIがセモリナ粉。デュラム小麦を粗挽した粉。
右がエンマ―小麦。イタリアのファッロ料理などでも使われる古代小麦のひとつ。
中央上の赤い蓋がアサフェティダ粉。臭いが強く、「悪魔の糞(Devils dung)」とも表現される。

材料も(ほとんど)揃ったので、ここからさっそく作っていく。

古代小麦とラム肉のシチューを作る

①まず、古代メソポタミア風だしを作る。鍋に水1.2lを入れてアサフェティダ粉,ざく切りしたクレソン,マスタード,クミン粉,けしの実(※見つからず省略),きゅうり,ビールを加えて水が半量になるまで煮る。
ろ過してできた液体を新たな鍋に注ぎ、牛すじ肉を30分弱火で煮込む。

②続いて、ラム肉(※牛肉で代用),にんじんを一口サイズに切り、にんにくをすり潰す。

③別の鍋に水600mlにラム肉(※牛肉で代用),古代メソポタミア風だし,エンマ―小麦,セモリナ粉,にんじん,にんにく,クミン粉,コリアンダー粉(※見つからず省略),ミントを入れて火にかける。

④時々混ぜながらアクを取り、30分煮込む。

⑤器に盛りつけミントを飾り付けて完成!

メルス(古代メソポタミア風ガレット)を作る

①ボウルに大麦粉,エンマ―粉,セモリナ粉,刻んだデーツ,ピスタチオ,干しイチジク,干しぶどう,干しりんご(※見つからず省略),みじん切りにしたにんにく,ハチミツ,クミン粉,コリアンダー粉(※見つからず省略)を入れて混ぜ、水,ビール,牛乳を少しずつ注いで混ぜ合わせる。

②フライパンもしくはホットプレートにサラダ油を引いて①を入れて焼く。
片面が焼けたらひっくり返してもう片面を焼き上げる。

③火が通ったら表面にバターを塗って完成!

実食

さっそく、ジュンとヨシヲのように食べてみる。

まずは古代小麦とラム肉(※牛肉)のシチューから。

…想像以上に小麦がクリーンヒット!頭の中のシチューとは違い驚きがあるが、ミソポタミア風だしがほんのりコクを演出。
ドラマでヨシヲが「塩がほしい」と言っていた気持ちにも納得。再現することでキャラクターの気持ちにも共感できる、これが再現飯の魅力のひとつかもしれない。

続いて、メルスもがぶり。

生地自体は素材の味だが、ドライフルーツがしっかり甘味を出している。
ハチミツの量を調整したらより甘く、現在のお菓子としても人気が出そうな一品。
うま~~~い!素材の味に箸(※正確にはフォーク)が止まらない!

……ガリッ ゴリッ

メルスを食べる中で固いものが当たり、見るとピスタチオの殻。
実は編集部員・タンタンがピスタチオを殻ごと投入して力業で砕き、慌てて取り除くも、焼きあがったメルスに欠片が…
ピスタチオの殻は固く口内を傷つけかねない。これから試す方は、ピスタチオの殻を剥いてください。

ピスタチオを殻ごと混ぜて砕こうとする編集部員・タンタンと絶望するヤマ

というわけで、再現料理への挑戦はこれにて終了。
再現料理をすることで、作品の登場人物の感情に寄り添い、より深みをもって作品を解釈することができる。

「À Table!(ア・ターブル)〜歴史のレシピを作ってたべる〜」はSPOOXで配信中なので、興味を持った方はぜひ視聴して歴史と夫婦のドラマに想いを馳せてほしい。


(文・ヤマ)

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