旅気分ラジオを買ったらモノの意味を考えさせられた
こんにちは。スプ論編集長の市川です。最近、ラジオを聞いていますか?ラジオというとオールドメディアの代表格のようなイメージですが、タイパ(タイムパフォーマンス)重視の若者の間でもラジオ人気は再燃しているという話があります。
世界中のラジオが聞けるというユニークな製品を見つけ、ちょっと迷った末に買ってみました。その購買体験から気付いたことをシェアできればと思います。
出会いはGoogle Discover
80年代生まれの私はラジオが好きで、学生時代は深夜ラジオをよく聞いていました。一時期は投稿にも夢中になり、いわゆる「ハガキ職人」の一人でした。
特定の番組を毎週聞くという習慣こそなくなりましたが、今でもお風呂や移動などの隙間時間にはラジオ(radiko)を楽しんでいます。
先日、Google Discoverに流れてきたある記事が目にとまりました。Google Discoverとは、ユーザーの興味関心に合わせて、おすすめのコンテンツを表示してくれるサービスです。
気になった記事は、ROOMIEの『集中したいときの救世主は「聴きたいものはないけど、何か流しておきたい」を叶えてくれるこれだった』でした。
イタリアのデザイン会社「Palomar」の「The CityRadio」という商品の紹介記事です。The CityRadioは世界中のラジオも楽しめるアイテムで、どの国(都市)の番組を流すかをボタンで選択できるというもの。
本体に付いているボタンは9つですが、全部で18都市のボタンが付いてきて、自由に入れ替えることができます。ノブでボリューム調整をするところも、ザ・ラジオって感じでそそられます。
スウェーデンの新興楽器メーカー「Teenage Engineering」やイギリスのデジタル機器メーカー「Nothing Technology」のプロダクトに近いものを感じます。
「ラジオ」と書きましたが、実際には「Bluetoothスピーカー」で、専用のアプリと接続することで各国のラジオが聞ける仕組みです。受信できるのも、インターネットラジオとして独自に配信しているところです。
そのアナログ感溢れる見た目に惚れ込んだものの、13,200円というお値段に躊躇し、一旦ブックマークしてページを閉じました。
自宅を海外のホテルの雰囲気にできるかも
私はリモートワークのため、子どもの保育園の送り迎え以外は1日中自宅で仕事をするという日々を過ごしています。
打ち合わせ以外で人と話すこともなく、音がないほうが集中できはするのですが、それが続くと無味乾燥度合いに辟易としてくることがあります。
そんなときThe CityRadioのことを思い出しました。私は外国語ができませんし、旅行にもそれほど行きませんが、よその土地にでかけたときにホテルで御当地のテレビを見るのが好きです。
特に海外の場合、その国のメディアに触れることで旅情が高まります。逆に言えば、普段見聞きしない言語や音楽に触れることで、ちょっとした旅行気分が味わえるかもしれません。
しかも意味のわからない外国語なら聞き入ってしまうこともなく、BGMとしてちょうど良さそうです。こうしてThe CityRadioを買おうと思い、どこで売っているかを検索してみました。
Googleのショッピングタブでセール品を発見
私はネットショッピングするとき、時間に余裕があれば商品代金+送料+ポイントでどこが一番お得なのかを調べてから買うようにしています。最近では、Googleの検索結果画面にある「ショッピングタブ」で簡易的に調べられます。
このときもショッピングタブを見てみると、あるショップでセールで半額以下の5,600円になっているのを発見。メルカリも見てみましたが出品はされていませんでした(どれだけニッチなんだ…)。
正直5,600円でも高いとは思いました。うっすら気付いてはいましたが、世界中のインターネットラジオを聞くだけなら無料のアプリもあるのです…。
そういうときはいつも、“悩む理由が値段なら買え、買う理由が値段ならやめておけ”という格言を思い出します。
このラジオが発売されたのは4年ほど前みたいで、思いっきり在庫処分感がありますが、今買っておかないともう買えないかもしれません。そう思って、ポチることにしました。
ただ、セールを行っていたショップは初めて見るところ。最近は、過大な割引などでユーザーを騙す「偽ショッピングサイト」も増えているということで、警察庁も警告をしています。
例のショップについては実店舗も運営し、リンクしてあるSNSアカウントも運用されていて、問題はなさそう。初回利用は配送先や支払い方法の入力が面倒ですが、「Google Pay」でのワンクリック決済にも対応しているということもポイントでした。ということで、そのショップで注文しました。
使ってみてわかった残念なところ
商品は注文後数日で問題なく到着しました。パッケージもシンプルでおしゃれ。日本語の説明書が付属しています。
専用のアプリをスマホにインストールし、Bluetoothで本体と接続すれば簡単に使うことができます。
都市名のプリントされた18個のボタンが付属。マグネット式で本体のボタンを入れ替えることができます。
使い勝手は概ね想像通りなのですが、ちょっと残念な点も。
まず仕組み上当たり前なのですが、本体の電源をつけただけでは聞けず、スマホ側でアプリを立ち上げる必要があります。その度に「それならアプリで聞けばよくない?」と思ってしまいます…。
通信が途切れたときにもアプリを開く必要があるのも、地味にストレスです。
あとこれは勝手に思い込んでいただけなのですが、本体のボタンを変えたらアプリ側の都市の設定も自動で変わると思いきや、手動で設定する必要があります。そんなに頻繁に入れ替えるものではないのですが、値段を考えれば自動で連動させて欲しかったところ。
惜しい点はあるものの、基本的につけっぱなしで置いておければいいですし、気分次第でボタンを押せば、普段は耳にすることないジャンルの音楽に出会えたりもするので自宅作業のお供にはピッタリです。
データにはないモノの価値を求めて
The CityRadioという物理的なモノがあり、目に触れることで、仕事を始めるときに「よしつけるか」と、ラジオのボタンを押し、気持ち的にもスイッチを入れることができます。
今どきは、スマホ一つで音楽は聞けるし、綺麗な写真を撮ることもできます。にも関わらずレコードブームが再来していますし、フィルムカメラも人気になっています。
もちろん「アナログでしか出せない味」や機能面、所有欲の影響も大きいでしょう。レコードやカメラは、二次流通も盛んです。人間が物理的な空間で生きている以上、「そこにある」というモノの価値と意味は変わらないのだと思います。
人間は常に新しい刺激を求めるものですし、商業的にはトレンドを変えることが新たな需要を生み出す手っ取り早い手段だったりもします。ファッションなんかはわかりやすいですよね。流行があるから新しい服が売れ、経済が回る。
動画視聴は配信が主流となり、DVDやVHSの物理メディアブームは再来しないかもしれません。ですが、「作品を見た体験」を形として手元に残しておきたいというニーズは強まっています。
例えば、映画館では入場者特典が当たり前のようになっていますし、韓国では映画のチケット自体のデザイン性が高く、コレクションする方も多いようです。
モノそのものではなく情報に価値があるものが「データで良い」となると、「新しいモノ」が売れなくなってしまう。消費者側も「データだけでは得られない価値」が欲しくなる。そして再び物理的なモノに注目が集まる。そういうサイクルはこれからも続いていくでしょう。
執筆・写真:市川明徳(Sprocket)
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