モウリフウカ

土いじり。畑。森。詩。文章。翻訳。文学。するめ。 現在は韓国でテキスト収集のためにフィールドワーク中〜

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マガジン

  • 定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—

    『定本版 李箱全集』を日本で出版すべく、その重要過程である定本作業を記録するマガジン。

  • 翻訳作業日誌 —『定本版 李箱全集 翻訳版』のために—

    『定本版 李箱全集』の翻訳版、『定本版 李箱全集 翻訳版』を出版のために。翻訳作業中にうまれた事、考えた事、を記録するマガジン。

  • 日記(2023年2月12日〜長野にて)

    2022年〜 長野県のとある村での生活を日記を連ねたマガジン。

最近の記事

定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第六十三回〉

二〇二四年一〇月二〇日  夜中に椅子に座り、長細い机にパソコンと資料を置いて作業をする。韓国で集めてきた大量の資料にまだ手がつけられていない。当然のことだが、今必要な資料だけを取り出して、今必要な資料だけに目を通すからだ。背後や右側に資料や書物の影を常に感じている。そういう緊張感も相まって、夜中になる指先も足先も冷えきってしまう。  最近は他にやることがあまりに多いため、作業時間は一日に2、3時間になってしまっている。その他のことですらつまみ食いみたいにコツコツと進めている

    • 定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第六十ニ回〉

      二〇二四年一〇月四日  映画「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版」をみた。何度見ても同じ場面で涙が流れる。韓国で足繁く「ゲ謎」をみた私、聞こえてるか?まだ観に行ってるぞ。今までの特典で一番お気に入りかもしれない。だが「第一弾 入場者特典」とある。 ……”第一弾”? 二〇二四年一〇月六日  本屋のアルバイト面接に落ちた。殺す。 二〇二四年一〇月九日  現在は雑誌『朝鮮と建築』(1931年)に掲載された「鳥瞰図」の注釈作業中。私は恐ろしく集中力が持続しない性分だが、今日は

      • 定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第六十一回〉

        二〇二四年九月一五日  生活が慌ただしい。図書館で借りた本を読み、ノートに書き写したり、帰国の挨拶をしたり、友達に会ったり、作業の遅さや自分の将来に頭を抱えたりしながら、自分自身の生活をする。大変だ。   そして作業も進めている。現在は、雑誌「朝鮮と建築」(1932年)に掲載された《建築無限六面角体》のテキストデータを作成している。いまさっき、九割五分終わった。コツコツやれば作業は終わるというものだが、自分の命が終わるが先か、作業が終わるが先かといつも考える。  テキスト

        • 定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第六十回〉

          二〇二四年九月一〇日  日本に帰ってきた。帰ってきたのは8月13日午後18時だった。  8月13日の韓国も暑かった。7時くらいに起きて荷造りのラストスパート。捨てたくないものも多少捨てて、韓国に来た時のスーツケースよりは少し軽くなった。大好きなマムズタッチのラストディナーは昨日終えた。もう満たされた状態で帰れる。下宿先に知り合いはいたが、私のことを不快にさせる天才なので挨拶もせずにでた。日本に着いたら連絡先も消すつもりで出た。風呂、トイレ、キッチンが共同の下宿だった。女性

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        • 定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—
          61本
        • 翻訳作業日誌 —『定本版 李箱全集 翻訳版』のために—
          1本
        • 日記(2023年2月12日〜長野にて)
          5本

        記事

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十九回〉

          二〇二四年八月九日  今日は9時に起きて、ムンク展を見にいった。 3時間ほどかけてみて回った。正直、初期〜中期作品が面白かった。 美術館を出て、銀行へ。300万ウォンまでしか引き出せないポンコツコースの利用者なので、また月曜日に銀行に来て全額引き下ろさなくてはいけないらしい。 そして、よりによってウォン安が進んでいて腹立たしい。金が増えると思って勤労したというのに…減ることがないのを祈って月曜日に換金しに行く。  帰って、風呂に入って寝て、ご飯を食べながら映画をみた。何が

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十九回〉

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十八回〉

          二〇二四年八月七日  今日は朝から活動する。そのために昨日はよく休んだ。 天気は曇りで25度くらいだった。図書館に行って、韓国滞在中、最後の資料収集日となる日だ。  資料は過不足なく収集できた。しかし「この書誌情報がもう少しあったらいいいな」「このテキストは印刷したけど、必要な時にいちいち書籍を探すのが面倒だから別途また印刷しよう」程度の軽い調査日だ。それと、2日にキム先生と面談したときにオススメされた本が、中古でも品切れ、新品でも絶版だったので図書館で全ページ印刷しよう

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十八回〉

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十七回〉

          二〇二四年八月二日  鍵を探してスーパーへ。お客様センターのお姉さんに 「き、き、昨日、その、か、鍵、鍵を落としたんです、よっっ、その、えっと」 私は日本語でも韓国語でも、落ち着きがない時、緊張している時はこんな感じの喋り方になってしまう。毎回そうなるわけではないが、今回は吃る要素満載なので喋るのがとにかく大変。 「どこで落とされましたか?」 「えー、えー、えー、あ、そこです!(セルフレジのあたりを指差す)」 「少々お待ちくださいね〜」  パソコンをガチャガチャと触

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十七回〉

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十六回〉

          二〇二四年七月二八日 バイト先でまだおばちゃんと口論。 私たちは、自分の仕事のほかに、余裕があれば相手の仕事を手伝う感じでやっている。今日は、おばちゃんは私が近くにいて、もうすぐおばちゃんのペースに追いつき私自身の仕事をするだろうと予想したのか、おばちゃんは自分の仕事だけをしていた。あーまたか〜と思ったが、別に怒ったりはしなかった。 しかし、私がおばちゃんに同じことをしたらブチ切れた。厳密にいえば「同じことをした」というよりも、まず自分の仕事をやり切ってからおばちゃんの分を

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十六回〉

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十五回〉

          二〇二四年七月一九日  帰国前に一度先生に会っておいた方がいい。お貸しした本も返ってきていないし、質問したいこともある。そう思ってメールしたところ、先生は16日から21日までスイスのジュネーブにいるらしい。ジュネーブ?ジュネーブ会議か?旅行か?今の時代にスイスへ旅行に行けるなんて、やっぱり大学教員はそこそこお金になるのかしら…と下品なことを考えた。  出国前に電話が来た。スイスから帰ったらまた電話するとのことだった。多分、もう一度お会いしてくれるだろう。電話の中で「どう?作

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十五回〉

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十四回〉

          二〇二四年七月一一日  今日は休み。昨日はバイト先にて、七月いっぱいでバイトを辞めると伝えた。最近のバイトは穏やかだ。おばちゃんと喧嘩することが減ったし、私はずっと歌っている。何もせずに歌っている時間がたまにある。いまハマっているのは、嵐。「Happiness」の歌詞があまりに哲学的すぎるのに、こんなに軽やかで楽しい曲だと気がついて悶えていた。最高だ。  朝10時に起きて、郵便局へ。総重量40キロの本や資料を日本に送る。このために昨日(10日)は、資料確認作業を行なった。紙

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十四回〉

          小森はるか『二重のまち/交代地のうたを編む』をみた

          二〇二四年六月二九日  2011年3月11日、午後2時46分。当時小学5年生だった私は、卒業式の準備をしていた。椅子を並べたり、カーペットを敷いたり、掃除をしたりと、卒業していく6年生ために5年生が準備を行うのが私が通っていた小学校の習わしだった。小学校所在地は京都。揺れた瞬間、大多数の人が気づいたが、広い体育館をウロウロしていた人の中には揺れにまったく気づかない人もいた。  私は体育館のステージから30メートルくらい離れたところにいて、ステージの両脇にある花瓶が揺れている

          小森はるか『二重のまち/交代地のうたを編む』をみた

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十三回〉

          二〇二四年六月二六日  消しゴムハンコのショップを開くことにした。早速そのために準備を進めている。私は渡韓する時にも消しゴムハンコをたんまりと持ってきたほど消しゴムハンコにのめり込んでいて、やりだすと3時間ぶっ続けでやってしまうこともしばしば。勉強や研究に集中したくないときも、まず消しゴムを手に取ればなんとかなる。日本にいたとき、好きなラジを聴きながら彫ること、好きなテレビ番組をみながら彫ることが私の何にも代え難い至福のひとときだった。月500円くらいでも稼ぎになればいいな

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十三回〉

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十二回〉

          二〇二四年六月一九日  朝早起きして映画館に。今日は「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」を観にいく。先週もみたけどまた観たいと思っていた上、入場特典のクリアカードが可愛くてそれが欲しかったから、簡単に劇場2回目の鑑賞を決意。  絶対間に合うように出発しているのに、駅から映画館まで走らない日はない。少し遅刻して入場。すると座席がこれだった。↓  2回目の鑑賞でまたなにか書きたくなってしまった。ということは良い作品だったということだ。  可楽市場という市場で買い物。市場という場所では、

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十二回〉

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十一回〉

          二〇二四年六月一二日  明日。というかもう今日。母親が韓国に来る。入国審査までの手続きをすべて説明することはできないので、詳細がまとめられた記事を送信した。それにもかかわらず、一切読まぬまま色々と尋ねてくる。イライラする。とはいえ気をつけてきてほしい。  なんと今日も働いた。今週に至っては週2日出勤なのにウジウジしながら出勤。昼ごはんは会社で出前をとってくれて、料金も支払ってくれる。ありがたい。だが、その日勤務している職員全員と一緒にご飯を食べなければならないのがかなりの苦

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十一回〉

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十回〉

          二〇二四年六月七日  全集作業に何も関係がない文章を書きたくなって、エッセイを新しく始めた。やめたきゃやめればいい。続けられるペースと範囲で続ける。題して「マイ・フライドポテト・エッセイ」。 幼少期から大好きなフライドポテトを、最近になって「大好きだ」と言えるようになった。言わなければいけないほど美味しいフライドポテトに出会ったので、書くに至った。フライドポテトって、毎日食べたいんだよな。「鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎」を観た。私の精神世界は手塚治虫やつげ義春に類似していると思っ

          定本作業日誌 —『定本版 李箱全集』のために—〈第五十回〉

          マイ・フライドポテト・エッセイ

           私にとってフライドポテトは、長年片想いし続けてきた”誰からも好かれる幼馴染”のような存在だ。だから、今更とても恥ずかしくて言えやしない。こんなにも皆に視線を注がれ老若男女から愛され続ける食べ物に対して、声を大にして好きだと言ってしまえば、この密かに思い抱いてきた熱々の好意が笑われてしまうのではないかと思っていた。  フライドポテトが灯りに照らされてぬらぬらと輝きながら、こちらを見据えて横たわっている。私の眼は、一緒に食卓を囲む誰かの視線を追いかける。誰が、どこを見て、何を

          マイ・フライドポテト・エッセイ