乃木坂46版 ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』Team MOON 感想
前おき
※一部ネタバレあり。
2018年6月8日(金)~24日(日)、天王洲銀河劇場にて公演されたセーラームーンミュージカル乃木坂46版 6月公演。セーラー戦士5名がそれぞれTeam MOON、Team StarとしてWキャストで演じられた。
15日の夜、Team MOONでの公演を観劇し、それはもう感動してしまったので、早速ここに感想等々を記しておく。
今回初めて観劇したことで、『セーラームーンミュージカル』そのものについて大変感激したのだが、いざセラミュについて(乃木坂関係ない部分)書いてたら、ものっそい長くなってしまったので、本エントリでは一旦乃木坂キャストについての感想にとどめる。
語るにあたり、各シーンへの言及も必要になる都合ネタバレも含むため、未観劇の方は要注意。
STAR感想はこちら。
2019感想はこちら。
Team MOONについて
(ねとらぼ 2018年06月08日公開記事より引用、以下同じ)
さて、ここでは観劇後の感想というより、前評判的な部分について。
Team MOONは、舞台経験者も多く、また元々演技力や歌唱力などのミュージカルに出演するにあたって必要な能力のレベルが高いとされているメンバーの揃った、実力派揃いの組み合わせと巷で言われていた。
実際観劇してみると、演技・歌共に大変レベルが高く、また(舞台「あさひなぐ」の時もそうだったけど)全員のキャストとキャラクターがすごくハマっていて、高倍率のオーディションでキャストを決めた結果たまたま全員乃木坂メンバーだったんじゃないか、というくらいだ。
さらに、入り込み過ぎたのか、キャスト5人が本当にヒーローにしか見えなくなって、公式Twitterに上がっているような(おそらくリハとかの時の)私服でキャスト5人が揃っている写真なんかは、彼女らの変身前の普段の姿にしか見えなくなっている状態である。
その瞬間、使いどころがよくわかっていなかった『尊い』という言葉を、「今こそ使いどころだ!」と「言葉」ではなく「心」で理解できたものだ。
そんなTeam MOONのセーラー戦士5人について、以下書いていく。
月野うさぎ/山下美月について
美月は、ものすごく うさぎだった。
ドジで泣き虫、せっかちで天真爛漫なうさぎをこれでもかというくらい演じ切った。
特に、アニメ版CVの三石琴乃さんの演技を参考にしていた印象を受けた。声の出し方はそのもののように感じたし、アクショもアニメ的に(意図して)少し大げさに演じていたように思う。そういった部分から、原典をよく研究したのだと汲み取れた。
美月の演じる うさぎは、本人が各所のインタビューで言っていたように、月野うさぎの沢山の女の子に愛されてきたキャラクターという面を特に強く打ち出していて、だからこそそれによって、セーラームーンに変身して戦う時の勇敢さ、辛い場面や運命に直面した時の悲痛さが引き立っていた。
うさぎが初めて変身するときの何故か湧いてくる嬉しさや、後半に何度も訪れる慟哭が、心に染みるのだ。
あの名ゼリフ「月に代わってお仕置きよ」を決めポーズと共に言う時なんかは、言い得ない感動が押し寄せる。
ある意味、「変身ヒーローである女の子」像をクッキリと演じきったといえるかもしれない。
しかし、それでいて、彼女は最後まで「セーラームーン」でも「プリンセス・セレニティ」でもなく、「月野うさぎ」だったように思う。
終演し挨拶をする時は座長・山下美月としての言葉だったが、最後に舞台袖にハケるその瞬間、山下美月は月野うさぎでいた。あくまで、月野うさぎとしての姿を観客に提供していた。(どんな風だったかは是非観てほしい)
セーラームーンミュージカルに出演するにあたり、主演としてどうあるべきかを考え抜いた結果の、ひとつの答えなんだと思う。
水野亜美/伊藤理々杏について
理々杏の演じた亜美ちゃんは、彼女が演じたからこそのキャラクターになっていた。
アニメでは、比較的大人しく心優しい真面目なキャラクター。
それに対して理々杏の演じた亜美ちゃんは、凛々しくてしっかりもので、抜けているところのある うさぎを諭したりもするキャラクターのように見えた。目の前に現れた悪者に、啖呵を切る胆力も持ち合わせていた。
原典からある「天才」「真面目」という部分と、理々杏本人の気質や演技が組み合った結果、このような描き方になったのだと思う。
またキャラクター性以外の部分で言うと、めちゃくちゃ歌がうめえ。
もちろん他のメンバーも、感動するくらい上手かったのだけど、理々杏の力強い歌声が、いかにもヒーロー的というか、なんだか「悪を倒す力が漲っている」ように感じたのだ。
そんな歌を初変身シーンで聴かされたら、もはやテンションは上がり止まらないのだ。
セーラームーンのミュージカルということで、生ちゃんこと乃木坂メンバー・生田絵梨花の出演する『ロミオとジュリエット』や『レ・ミゼラブル』よりも、劇中の楽曲が現代らしいポップスが多かったため、それがより理々杏の歌声にマッチしていたように思う。
上記の両要素を受けると、理々杏の演じたキャラクターは「水野亜美」である以上に「セーラーマーキュリー」であった。
彼女は、すごく悪を倒すヒーローだった。
火野レイ/高山一実について
理々杏とは逆に、普段の明るくてひょうきんなかずみを一切封印し、クールで清楚な完璧なレイちゃんに仕上げてきていた。
最初に登場した時、一瞬誰だかわかんなかったくらい。声色から佇まいから、ホンモノがあそこにいるとしか思えなかった。
かずみん本人が自分のブログで、
と書いていたけど、いざ観たら、やいやいや何を言ってんだめっちゃ良かったわというほかない、本人の不安が懸念でしかないことを知らしめてくれるくらいに素晴らしいレイちゃんだった。
幼少から『セーラームーン』という作品を愛していたからこそ持ち合わせる、作品への、キャラクターへの理解と愛情が型成したものが、かずみんの演じたレイちゃんだったのだ。
また、ある意味これがすごく響いたポイントなんだけだれども、変身や戦闘のシーンが、とても良かった。かずみんのセラミュに懸けている想いみたいなものが存分に表れていたように感じた。
なんせ彼女は「子どもの頃に憧れていたヒーローに、本当に変身する」ということを本当に叶えたのだ。
そのことで発現した強烈なパワーが、火野レイ/セーラーマーズを演じるに際して、ものすごく効いていた。
その喜びとか、感動とか、だからこそ背負っている重荷とそれを超えようという覚悟とか、そういったものがあの変身と戦いの場面で、ビシバシ伝わってきた。これは、ある種、演技力や経験で出せるものではないと思う。
そんな純度高い想いが産む力を見せつけてくれたのが、一実マーズだった。
自分も特撮好きでヒーローに憧れる気持ちはとても理解できるので、変身することを実現した彼女の姿を見ると、もう、泣いちゃわずにはいれないのだ。
木野まこと/能條愛未について
能條演じるまこちゃんを観て思ったことは、まず「初登場シーンかっけえー」である。うっすい言葉で書いてしまったが、本当にあのシーンによっていきなり心を掴まれちゃったである。
車に轢かれそうになった うさぎを、通りすがりに助けるという場面なのだが、それだけで「女優・能條愛未」に魅了されてしまった。
漢らしく落ち着いていて、ぶっきらぼうだけど優しさを持ち合わせており、誤解を受けがつで孤独を内に秘めているというまこちゃん像を、あの1シーンの演技力だけでズガンと魅せつけてくれたのだ。
さらに言えば、上記のことを、まるで目の肥えていない素人に肌で感じさせてしまう彼女の女優としての実力ったらないじゃないか。あの瞬間に『少女革命ウテナ』(※能條が主演を務めた舞台)を観なかったことを、心底後悔したくらいだ。まだ褒め足りないくらい、そのことに感動したのだ。
それくらい、女優・能條愛未は素晴らしかった。もちろん、その後のシーンも見所満載であるが、最初の最初っからその実力の高さを魅せつけてくるもんだから、かつそのこと自体がまた、めちゃくちゃカッコいいのだ。
それでいて、演技力によってまことちゃん像を身につけただけではない。
まこちゃんの秘めた乙女心の部分が、能條の乙女な一面ともリンクしていて、キャストとキャラクター間で切っても切り離せない親和性を産んでいる。
加えて、能條はかずみん同様幼少期からセーラームーンが好きで、それどころか、セラミュを観たことで芸能界を志したのである。終演後の挨拶では、元々持っていたセラミュへの憧れと、今出演していることへの感動を口にし、それも大変良かった。
誰しも抱く子どもの頃のヒーローへの憧れを、そして狭き門である芸能界への夢を、彼女はどちらも叶えたのである。
愛野美奈子/樋口日奈について
これはもう、まず何よりハマり役だったと思う。
ひなちまの持つ明るさやふんわりした空気と落ち着きによって生まれる独特の余裕が、4人の先輩ポジションである美奈子ちゃんの振る舞い・佇まいとシンクロしていて、大変良かった。
東京タワーで敵に襲われピンチに陥った4人+タキシード仮面の前に、「私が来たからには、もう安心よ」と言わんばかりの笑顔で現れる最後の戦士・セーラーヴィーナスが大変カッコよかった。一幕終盤で現れ、全体的に出演しているシーンは少ないけれど、それを感じさせないくらいの存在感で持っていってしまうんだもの。
敵に追い詰められ、セーラームーンとタキシード仮面がピンチに陥り、そんな中登場してまんまと活躍してしまう、あの空気感はひなちまならではのものじゃなかろうか。
母的な優しさを持ち合わせる彼女だからこそ、最初に一人戦い続けた先輩で5戦士でもリーダーのポジションである愛野美奈子/セーラーヴィーナスを演じる懐があったのは、ひなちまなんじゃないかと思う。
さらに、やっぱり歌がすごく上手かった。彼女の透き通って張りのある歌声が「ミュージカル」にかなりマッチしていたように思う。
今回のように舞台での演技や歌を観ると、(本人は恥ずかしがっている)子どもの頃に習っていた歌舞伎の経験がすごく発揮されている気がする。声の出し方とか、舞台上の見栄の感じとか、際立ってレベル高かった。古典演劇において受け継がれてきた技巧が現れていたように思うのだ。
本人の気質、過去の経験を遺憾なく発揮した日奈ヴィーナスは、まさしく今得るべくして得た役割なのだ。
まとめ
さて、駆け足でTeam MOONのセーラー戦士5人について感想を書き綴ってきた。
今回観劇して感じたのは、やっぱりヒーローが目の前に現れる感動はひとしおだ。5人揃い踏みで並んだ時、セリフを5人ないし4人で揃えて言う時が最高にかっこいいんだもの。
Team Starも観る予定なので、10人の戦士をこの目で見る喜びを噛み締めつつ、楽しみに待ち構えたい。
観たらStarについても何か書きます。
明日飲むコーヒーを少し良いやつにしたい。良かったら↓。