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肉豆腐(アニメ「風立ちぬ」)

フライパンがっつりと作られた肉豆腐。この日は豚バラ使用。白菜、焼き豆腐、ネギ、にんじん、マイタケでぐつぐつ。すき焼きのたれでぐつぐつ。カセットコンロで保温しながらというパワーまでは残っておらず。汁気多めにして頂きました。すき焼きよりも安上がりで、なんちゃってすき焼きみたいなメニューで、野菜もたっぷり食べられる、ご飯のおかず。すき焼きのたれは肉じゃがとこれでヘビーローテーションとなり、とうとうすき焼きを1回も作らずひと瓶終わる生活が続いています。味がすき焼きなんだからいいのです。

ジブリ作品映画「風立ちぬ」。主人公のライバルである本庄くんが食べていたのは肉豆腐定食。そして主人公二郎が食べていたのがサバの味噌煮定食なのでした。ジブリには名物料理となってゆく食べ物がしばしば登場しますが、この映画では「シベリア」というお菓子が目立っていたと記憶しています。スポンジ生地と羊羹というマッチングに、昔懐かしい味を思い起こすのでしょう。

戦闘機を設計し作る二郎。彼は飛翔への憧れを持っていた純粋な青年として描かれています。彼にとってはサバの骨の曲線も、飛翔を連想させる美を感じてしまうのです。飛ぶこと以外何もないのか?と思いきや、菜穂子という美少女に恋をしました。菜穂子は結核を患っていましたが、二人は結婚し、しばらくの間一緒に住むのでした。この結婚式のシーンは、私が知るジブリ作品の中でも特に美しさを感じておりました。花はヴァニタスといいますか、儚さの象徴。髪をアップにせずに下ろし、白い大きな花(ツバキでしょうか)を頭に飾る。夭折を予感させつつ、それでも添い遂げたい相手がいる。一途な思いが叶う瞬間。

二郎は二郎で飛行機を作るというライフワークがあるので、お互いにお互いの世界観の中で、時折辻ですれ違うような、クロスした部分だけの関係でした。いろいろな評価があるようですが、自分的には「夫婦のことはその当事者の夫婦にしか分からない」でしょうか。客観的に見るよりも、当人のお二人にとっては、ぎこちないながらも精一杯の愛情だったと捉えます。

カプローニという航空技師が幻のように登場するシーンも印象的。戦死した兵士を乗せて上空に吸い込まれてゆく飛行機の墓場のシーンは、「紅の豚」にもありました。零戦をカプローニ氏に褒められながらも、二郎の「一機も戻ってきませんでした」という言葉。いろんな解釈がありますが、戻ってこなかったのは戦士なのか、飛行機なのか、それとも夢の実績だったのでしょうか。私にも分かりません。ちなみに、零戦の特攻そのものを描いた映画としては「永遠の0」がありますので、ご参考まで。

その最後のシーンに、すでに逝去したであろう菜穂子より「あなたー生きて―」と二郎に笑顔で贈られるメッセージ。この映画、薄幸とも受け取られる菜穂子の存在がなぜ必要であったのか。それは、終戦を境に価値観と生き方をがらりと変えなければならなかった人たちがいました。苦悩を抱えた、多くの親族や知人、隣人、住むところ、財産、存在価値、生きる意味を失い、戦争で生き残った全ての人たちへのメッセージだったのかもしれません。

矛盾と葛藤を抱えつつ、生き急いでいった菜穂子という存在は、今のご時世の中でまた、今までの「当たり前」を失いかけ、何を優先させ、選択しなければならないかの岐路に立っている人たちにとっても、ひとつの答えになるかもしれません。


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