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チーズケーキ(映画「八重子のハミング」)

上記の写真は放送事故ではありません。チーズケーキなのです。手作りのヨーグルトレアチーズケーキを作りたいと思い立ったが最後おさまらず、やんごとなき事情による緊急事態宣言中に必死で材料を調達しましたが、世は巣ごもり全盛期。型がとうとう手に入らず、自宅のカレー皿を使ったのでした。味はベリグッドでしたので良しとします。余りは冷凍して少しづつ自然解凍して、ブルーベリージャムを添えたりして、ささやかなティータイムを楽しんでおりました。

映画「八重子のハミング」は若年性アルツハイマー型認知症を発症した妻と、妻を介護するご主人の、実話に基づく物語です。私の知人が「見たい映画がある、ハミングだ!ハミング」と言い続けること数年。「衣類用洗剤?」と私の脳内でブレインストーミングされ、中途半端にしか覚えていないため検索出来ず、とうとう見ることが出来たときに、初めてタイトルを知った幻の作品なのでした。見て納得、壮絶なモノを見せられてしまった(認知症介護の現場は大変、とかいう意味ではなく)という余韻を味わうのです。

チーズケーキは喫茶店で、ご主人の息抜き中、妻がここで知り合いに見守られながらチーズケーキを頂くシーンとして出てきます。高橋洋子さんの演じるこの疾患の鬼気迫るリアルさを感じて鳥肌が立ちました。アルツハイマー型認知症を調べると、症状、予後に「人格崩壊」という言葉が出てきます。文字からイメージされるものは様々。ですが、芯にあるものは最後まで消えない。そうしたギャップから来る奇異さを演じきる高橋洋子さんを御主人役の升さんはひたすら受け止め続けます。疾患を持つご本人を、読みとる側がいかにその人を知り尽くしていたか、現在も知ろうとしているか、そこに荒廃した脳と生まれて来た頃の原始の心を持つ本人とのつながりを最期まで維持できる鍵があるのかもしれません。

「明日の記憶」という映画で渡辺健さんが同じ疾患を演じておりましたが、目が正気なのです。しかも健さんのスタイリッシュさがとれず、冒頭にかなり症状が進んでしまった状態で出てきますが、「ちょっと眠い」くらいな感じ。カッコイイ健さんはいつでもどこでもかっこいいのでした。

そしてこの「明日の記憶」は奥様との純愛もの、みたいな仕上がりになっています(「明日の記憶」は原作を読んでいるのでよりそう感じます)が、こちらの「八重子のハミング」は筋金入った超合金純愛ものなのでした。ガンを抱えながら介護する夫役の升さんの、八重子さんを在宅で看取るシーンでは、、、ネタバレなので辞めましょう。

見る人の好みに左右されるのかもしれませんけれど、制作費は必死で集められ、宣伝も大体的にはされてこず、劇場も限られた場所での上映なのですが、見た人に語り継がれることで名作となっていった映画なのではと思います。


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