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おしるこ(映画「鉄道員(ぽっぽや」)

冬の定番おしるこ。おしるこ大将軍の私としては、毎年これを頂かないことには冬が来たことを実感いたしません。お正月のお雑煮に用立てたお餅があまるので、三が日のうちどれか1食は、あまったおせちの残りとともに、必ずおしるこにしてしまいます。そして思い出に残るおしるこメモリーに、高校文化祭でクラスの出しものとしておしるこ店やりました。ミッションスクールに通っていましたので、シスターの先生と作る和菓子のおしるこという、奇想天外に見える出しものも、白玉の入ったおしること、付け合わせに小量の漬物という粋なメニューに、大盛況だったのでした。気が狂いそうなほど白玉をこねて具を作っていたがために、その夜白い赤血球の山が雪崩となって夢に出て来たことは、私がお墓まで持って行く秘密のひとつです。

「鉄道員(ぽっぽや)」は、高倉健様扮する鉄道員、しかも駅長さんのストーリーです。寒い北国のとある駅。そこでお客さんにふるまわれる、おしるこの場面にごくりとした私です。そして男はいつの時代も戦士。この時代も企業戦士として経済を回し、地域住民の足となってお客さんたちに尽し、自分に一番身近な人達である家族は少し後回しになってしまった、そんなアイロニーなお話なのでした。昔流行した岩崎宏美さんの「マドンナたちのララバイ」。あの歌とは、戦士を癒す母なる、女性なる存在を歌いあげて大ヒット。「この街は戦場・・」の歌詞のくだりでは、当時子どもだった自分に、父という言葉の一般的な理解のなかに少なからぬ権威的象徴を見ていた記憶があります。自分が新卒の頃、そこここの会社で行われていたことの何割かは、今では「セクハラ、パワハラ」とされてしまうことでしょう。

さあネタバレ考察です。広末涼子さんのあの耽美的な美しさ。小林稔侍さんのどこか中性的な絡み。霧で視界の閉ざされることのある駅風景。無念の父の忘れ形見として引き取られた男の子の成長。先立つ妻の死別に立ち会えない主人公。どれもがリアルなドキュメントというよりも、口伝で伝え及んできた寓話のような儚さを感じます。そして主人公の最期。はた目から見ると孤独死ですけれど、もしかしたら、本当にもしかしたらお迎えにきた何者かに連れ去られたのかもしれません。山口敏太郎先生がようつべのアトラスラジオで、これについて語られているのでよかったらご参考にして下さいまし。

そしてかなりな私の妄想ですけれど、迎えに来たのは戦士の魂をヴァルハラに連れてゆくワルキューレのような様相を想像してしまいました。あの賛否分れるキスシーン。実の娘でもあれはないだろうと言われていますけれど、ひょっとして、硬派ガチガチの企業戦士にはハニートラップは通用しない。そこで、主人公が心残りにしていた娘のことを解決させるステージを用意して、地縛のような魂になることなく、人生悔いなしとして魂を休息させる地に赴かせたのではないかと。でもファタ・モルガーナみたいな誘惑を得意とする存在なので、キスシーンはちょっと勢いでハニってしまったのかなあ?と。「鉄道員(ぽっぽや)」は、高倉健さんの晩年の映画として、氏の姿も重ねて見てしまう一面が、このような妄想を生んだのかもしれません。



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