仮面ライダーと消費される子供の欲望

息子が仮面ライダーに興味を持つ年代になってきたので、去年からスタートした「仮面ライダーゼロワン」を一緒に見始めた。しかし、見始めてすぐに違和感を感じ始めた。

まず最初に感じた違和感は番組内で出てきたアイテムと連動して差し込まれるCM。仮面ライダーが新しいアイテムを手に入れた次のCMで、そのアイテムの玩具のCMが流れたりする。まるで、アイテムを買わせるために番組が存在しているようだ。

また、話が進むにつれてさらに感じたのは、仮面ライダーのレベルアップの頻度が多すぎるという点だ。普通のゼロワンがこの前進化したかと思えば、1ヶ月後には当初の姿とは全く違う外見になっていたりする。正直、話の展開が早すぎて、しかもそれが玩具として売るために無理矢理新しいアイテムを投入しているような気がしてきて、私は途中でしらけてしまった。そして、息子も当初は熱狂し、新しいアイテムが出てくるたびに欲しがったけれども、それにも飽きてしまったのか、半年もせずに見なくなってしまった。

そして我が家の仮面ライダーの日々は静かに終わった。クリスマスに買った仮面ライダーベルトにも見向きもしなくなった。

この状況に私は正直、ほっとしている。子供が見たいと言えば、それを無理矢理見せないことはしたくない。しかし、このままアイテムがどんどん追加され、毎回のように「これも欲しい!」「あれも欲しい!」に付き合うのもしんどいなと感じていた。

一人の親としては、このようなストーリーの作り方、アイテムの投入の仕方は改めて欲しいなと感じる。正直、毎年新しい仮面ライダーにする必要はないし、5年くらいかけてじっくり話を進めたらいいと思う。

もちろん、いろんな人が関わって作られる番組なので、そうできない事情もあるのだろう。制作側の意図や、キャスト側の問題などもあるのかもしれない。しかし、立ち返るべきはこれを見ている子供たちなのではないか。

私は、最も重視されるべきなのは「子供にとって良いコンテンツになっているかどうか」なのではないかと思う。もちろん「良いコンテンツ」の定義は難しい。しかし一方で、このように短期間でレベルアップを繰り返し、新たなアイテムを次々に投入し、CMではそのアイテムを声高に宣伝し、子供の所有欲を煽ることが子供にとって良いとは私は思えない。

子供の良さとはほんのちょっとしたこと、空気が冷たいとか、落ちている石の形がどんぐりに似てるとか、そういった日常の些細なことの中からでも楽しみを発見できる、その感性の柔らかさにあると思っている。

アニメや特撮を楽しむのは悪くない。ただ、例え新しいアイテムなんて出てこなくても、子供にとっては「仮面ライダー」の存在そのものが刺激的だし、魅了されるものなのだ。その感性の柔らかさをさらに育てるようなコンテンツの作り方、商品の開発の仕方を考えて欲しいなと、一人の親としては思う。

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