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英語の言葉遊び(14):「スナークを求めて」その五

ルイスキャロルのノンセンス物語詩 The hunting if the Snark の紹介と解説、今回で五回目です。

第二回目の記事が先週、人気であったという通知が届きました。

実用目的ではなく、英語という言語にただ単純にエンタメとして親しまれるといいなと思い、アウトプット目的も兼ねて書いていますが、読んでくださって支持してくださる方がいると嬉しいです。

Fit the Fifth: The Beaver's Lesson:
第五部: ビーバーのレッスン

謎のスナークを捕まえるために怪鳥ジャブジャブを利用する計画を立てた探検者たち。単独行動をすることを決めたなぜか正装した肉屋と彼についてゆくビーバーたちの行方は?

They sought it with thimbles, they sought it with care; 指抜きで捜した、注意深く
They pursued it with forks and hope; フォークで捜した、希望を持って
They threatened its life with a railway-share; 鉄道株で命を脅した
They charmed it with smiles and soap. 笑顔で魅了した、石鹸を使って

合言葉のように何度も繰り返されるスナーク捕獲のための捕獲方法
指抜きが好きなのか、お金に弱いのか、綺麗好きなのか?
指抜きはいろんなデザインにカラーがあり、集めると面白いかも
繰り返される語句はおとぎ話を語るうえでの常套手段
この物語詩ではいろんなフレーズが何度も繰り返されます
裁縫する人のためのいろんな指抜き

Then the Butcher contrived an ingenious plan それから肉屋は巧妙な計画を練った
For making a separate sally; 別行動をすることだ
And had fixed on a spot unfrequented by man, あまり人が通わないある場所である、
A dismal and desolate valley. 暗くて寂しい谷に

But the very same plan to the Beaver occurred: だがビーバーも同じことを思いついていた
It had chosen the very same place: 同じ場所を選んで
Yet neither betrayed, by a sign or a word, demo でも動作や言葉や指示に騙されたわけでも
The disgust that appeared in his face. 嫌な顔をしたためでもなかった

Each thought he was thinking of nothing but "Snark" お互いにスナークと
And the glorious work of the day; その日の素晴らしい仕事以外のことを考えてはいなかった
And each tried to pretend that he did not remark お互いに何も言わなかったふりをして
That the other was going that way. 同じ道を歩いて行った

But the valley grew narrow and narrower still, だが谷は進めば進むほどなおも狭くなり
And the evening got darker and colder, 夕方には暗く寒くなった
Till (merely from nervousness, not from good will) (たんに良い動機からではなく心配性から) 肩を寄せ合うほどになるまで
They marched along shoulder to shoulder. 狭い谷を進んで行った

Then a scream, shrill and high, rent the shuddering sky, そして鋭く高い叫び声が震える空を引き裂いた
And they knew that some danger was near: 危険が迫っていることを知った
The Beaver turned pale to the tip of its tail, ビーバーはしっぽの先まで蒼ざめて
And even the Butcher felt queer. 肉屋さえも怪しいと感じたのだった

Rentは賃貸のことではなく
「引き裂く、、つんざく、ねじりとる」という意味の動詞Rendの過去形
さて、何の叫び声が空中に鳴り響いたのでしょうか?

He thought of his childhood, left far far behind— 肉屋はずっと昔の子供の頃を思い出したー
That blissful and innocent state— 幸福で無垢だったころのことを
The sound so exactly recalled to his mind 音は鉛筆で石板を
A pencil that squeaks on a slate! 引っかいた時の音を思い起こさせた

Slateはノート代わりの黒板のこと
紙ならばPadですね
iPadの発想のもとはSlateからきています
「赤毛のアン」の有名なエピソード、赤毛をニンジンだと揶揄われて
キレたアンがギルバートの頭に思いきりぶつけたのはSlateでした
BehindとMind、StateとSlateで見事な韻を踏んでいますね
blissful and innocent(幸福に満ちていて純真だった)子供時代?
筆記用の黒板で殴られると痛そうです

"'Tis the voice of the Jubjub!" he suddenly cried.「 ジャブジャブ鳥の声だ」肉屋は突然叫んだ
(This man, that they used to call "Dunce.") (「のろま」と呼ばれた肉屋が)
"As the Bellman would tell you," he added with pride,「伝令がいったように」肉屋は誇り高く付け加えた
"I have uttered that sentiment once.「俺はその思いを一度口にしたことがある」

"'Tis the note of the Jubjub! Keep count, I entreat;「ジャブジャブ鳥のことだ、(鳴き声を)数えていてくれ、お願いだ
You will find I have told it you twice. 二回だとおまえに話しただろう
Tis the song of the Jubjub! The proof is complete, ジャブジャブ鳥の歌だ!間違いない
If only I've stated it thrice." 三度だったならな

物語詩の一番初めに三度語ったことは本当だと伝令が言いましたが
そのことを語っているのでしょう

The Beaver had counted with scrupulous care, ビーバーは細心の注意を払って数え上げた
Attending to every word: どの言葉にも注意して
But it fairly lost heart, and outgrabe in despair, でもあまりにドキドキして
When the third repetition occurred. 鳴き声が三度繰り返えされたとき、絶望のあまりにうめき声をあげた

Outgrabeは「ジャバウォック退治の歌」に出てきたルイス・キャロル語
豚が悲しみのあまりにいななく声とかそんな意味だとか
Outgribeの過去形らしいです

It felt that, in spite of all possible pains, 考え得るあらゆる苦痛にも拘わらず
It had somehow contrived to lose count, ビーバーはなんとなく数えることをやめることを思いついてしまった
And the only thing now was to rack its poor brains 唯一できるのは貧弱な脳みそを痛めつけることだけだ
By reckoning up the amount. 鳴き声の数を数え上げて足してゆくことで

ビーバーは算数が苦手なようです

"Two added to one—if that could but be done," 「2に1を足すにはー」
It said, "with one's fingers and thumbs!" 「指と親指でできるな」とビーバーは言った
Recollecting with tears how, in earlier years, 涙を浮かべながら、足し算が
It had taken no pains with its sums. 苦痛でなかったことを思い出しながら

作者は数学者ですが、ときどき数学のできない人を揶揄ったりすることがあります
「鏡の国のアリス」にも数学のなぞなぞが隠されています

"The thing can be done," said the Butcher, "I think. 「それはできるよ」肉屋は言った「そう思う
The thing must be done, I am sure. それはやできないといけない、確かにね
The thing shall be done! Bring me paper and ink, きっとできる!紙とインクを持っておいで
The best there is time to procure." 一番いいのは時間を見つけることだ」

数えているのは鳴き声の数でしょうか?

The Beaver brought paper, portfolio, pens, ビーバーは紙と書類入れとペンと
And ink in unfailing supplies: なくなりそうにない、たっぷりのインクを持ってきた
While strange creepy creatures came out of their dens, 奇妙で嫌らしい生き物が穴から這い出してきたとき
And watched them with wondering eyes. 驚きの目をもって見たのだった

So engrossed was the Butcher, he heeded them not, 肉屋はあまりに夢中だったので、生き物には注意を払わなかった
As he wrote with a pen in each hand, 手に持ったペンで書きながら
And explained all the while in a popular style わかりやすいやり方で説明した
Which the Beaver could well understand. ビーバーでもよくわかるやり方で

鳥を無視して計算に夢中

"Taking Three as the subject to reason about— 3を考えることにすると
A convenient number to state— そうするのに役立つ数だ
We add Seven, and Ten, and then multiply out 7と10を足して、それから
By One Thousand diminished by Eight. 8を減らした1000で掛け合わせる

"The result we proceed to divide, as you see, 割り算するのは、見ての通り
By Nine Hundred and Ninety and Two: 992においてだ
Then subtract Seventeen, and the answer must be それから17を引く
Exactly and perfectly true. 答えはそれで完璧に正しい

"The method employed I would gladly explain, 「俺が快く説明して教えてやったやり方は
While I have it so clear in my head, 俺の頭ん中ではっきりしている間は
If I had but the time and you had but the brain— 自分に時間がなくてお前が脳みそ足りなくても
But much yet remains to be said. 言った通りであり続けるよ

つまり数学は常に正しいと言いたいのででしょうね

"In one moment I've seen what has hitherto been 「これまで見てきたことは
Enveloped in absolute mystery, まったくのミステリーなんだが
And without extra charge I will give you at large 追加料金なしでたっぷり教えてやるよ
A Lesson in Natural History." 自然科学のレッスンさ」

今度は数学から自然科学へ
肉屋は教えることで得意がっているのですね

In his genial way he proceeded to say 言おうとしてる彼の親切なやり方で
(Forgetting all laws of propriety, (財産権のことは全て忘れて
And that giving instruction, without introduction, いきなり教えてしまうことは
Would have caused quite a thrill in Society), 社会ではちょっとした騒ぎを起こしますよね)

特別なことを教えることは
今でいうところの知的財産権を自由にするみたいな感覚でしょうか

"As to temper the Jubjub's a desperate bird, 「ジャブジャブ鳥が必死なのを鎮めるのに
Since it lives in perpetual passion: あの鳥はいつだって執着して生きてるから
Its taste in costume is entirely absurd— 服装の趣味は全く常軌を逸していて
It is ages ahead of the fashion: 流行の先を言ってるんだ

鳥の服装とは鳥の羽根の色合いのことでしょうか
動物は自分の生まれつきの格好を変えれるわけないのに
でもin perpetual passionってオタクな性格ですね
好きなことを追求するのが好きなジャブジャブ鳥

"But it knows any friend it has met once before:「でも鳥は一度でも前に会ったことのある友達は覚えていて
It never will look at a bribe: 賄賂なんかに誘惑されない
And in charity-meetings it stands at the door, 慈善活動の集まりにはドアに立って
And collects—though it does not subscribe. 献金を集めるー自分では献金しないけれども

鳥の性格を言い表しているのでしょうか
鳥の話が誰か別の人の話のようでノンセンス

"Its flavour when cooked is more exquisite far 「料理された時の味はとてもこの上ないもので
Than mutton, or oysters, or eggs: 羊肉よりも、牡蠣よりも、卵料理よりもいい
(Some think it keeps best in an ivory jar, (象牙の瓶に入れておくのが一番いい
And some, in mahogany kegs:) 別の人はマホガニーの小さな樽がいいというけれども)

ジャブジャブ鳥は美味なようです

"You boil it in sawdust: you salt it in glue:「おかくずで煮て、塩で固めるんだ
You condense it with locusts and tape: 虫を紐で結びつけて煮詰めて
Still keeping one principal object in view— なお一つのやり方を保ち続けること
To preserve its symmetrical shape." 保存のためには左右対称でないといけないということだ

locustは食用できる虫の総称
聖書で洗礼者ヨハネが荒野で食べてたのはイナゴですが
セミを指すことも

The Butcher would gladly have talked till next day, 肉屋は次の日まででも喜んで話したことだろう
But he felt that the Lesson must end, でもレッスンは終わらないといけないと思った
And he wept with delight in attempting to say そして彼は歓喜の涙を流して
He considered the Beaver his friend. ビーバーを彼の友達であると語るのだった

まさかの仲直り
きっと肉屋は自閉症で(19世紀にはそういう概念はありませんが)
誰にも自分のことを語れないでいた
ビーバーは自分のことをずっと聞いてくれていて
そんなことは初めてなのだと感動したのだと思います
自閉症な人のベストフレンドは大抵飼い犬とか馬とか猫です

While the Beaver confessed, with affectionate looks 親愛に満ちた眼差しでビーバーもまた想いを語っている間
More eloquent even than tears, 涙よりも雄弁に
It had learned in ten minutes far more than all books 10分の間に全ての本が
Would have taught it in seventy years. 70年をかけて教えることよりも多くをビーバーは学んだのでした

本当の友愛
なんだか銀河鉄道の夜みたい笑

They returned hand-in-hand, and the Bellman, unmanned 二人か手をつないで戻って来ると、伝令は、誰もいないところで
(For a moment) with noble emotion, (その瞬間) 高貴な感情でこう言った
Said "This amply repays all the wearisome days 「これは全ての苦難の日々を十分に報いるものだ
We have spent on the billowy ocean!" 我々が大波の大海で過ごした日々を

Such friends, as the Beaver and Butcher became, ビーバーと肉屋のような友は
Have seldom if ever been known; ほとんどあり得ない、知られたこともない
In winter or summer, 'twas always the same— 冬も夏も、いつだで同じまま
You could never meet either alone. 一人でいる二人を決して見ることはなかった

手を取り合い歩く二人

And when quarrels arose—as one frequently finds 言い争いが起きてもー誰にでも喧嘩なんてよくあることだが
Quarrels will, spite of every endeavour— どんなに頑張っても
The song of the Jubjub recurred to their minds, ジャブジャブの歌が二人には思い起こされた
And cemented their friendship for ever! そして二人の友情を永遠なものへと強固にするのだった

動物を殺して捌くことにしか役立ちそうにない肉屋は最初はビーバーを殺してやる
なんて言っていましたが、ビーバーと相性が良いことを見つけたのでした
だとすれば屠殺の仕事をする肉屋は廃業でしょうか
友情は尊敬がないと続かないものですが
ビーバーは肉屋を尊敬して肉屋は尊敬されてて嬉しい
なんだか主従に似てなくもないですが
こういう関係もありです

肝心のスナークは全然出てこないで、ジャブジャブ鳥も相手にされず、ビーバーは肉屋と仲良くなりました、というエピソードでした。

次回は謎のスナーク登場です。

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Logophile
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