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どんなトレーニングメニューに取り組みたいですか?②

前回に続き、今回もリハビリ期間中のメニュー作成のポイント(AT目線)

前回はこちら

今回の始まりは、リハビリの環境について

プロスポーツの様に、毎日トレーナーがいて、トレーニングルームとグラウンドが自由に使えてという理想的な環境でリハビリに取り組める選手はなかなかいないですよね。

ほとんどの選手は、学校、部活動、病院、自宅の4つを移動しながら、
復帰を目指しています。

比較的環境の整っている病院も毎日行けるものでもなく、
多くても週2〜3日、基本は週1日くらいが多くなります。

復帰が近づくと2週間に1回という形で来院頻度が少なくなることもよくあります。

それぞれの環境を考慮して、メニューについて、考えてみましょう。

学校は、主に授業中
基本的には、座って授業を受けている事が多くなります。

ここでは、姿勢がポイントになります。
 ・長時間の座った姿勢で痛みが出る
 ・立ち上がった瞬間に痛い
などの症状が出やすいケガもあります。
ケガの種類によって、負担の少ない座り方が変わって来ます。

リハビリ初期では、授業中に勉強の邪魔にならない程度に、足を動かすなど
少しの時間でも患部を動かしてあげることも回復を早めるポイントになります。

あくまで、勉強がおろそかにならない範囲で行ってください(^^)

次に、部活動の現場
ここの情報やそれに基づくメニューが非常に重要になります。

・ケガをしている選手の役割(チーム)
・リハビリに使える時間(チーム)
・使える道具やスペース(チーム)
・病院受診への理解(指導者・保護者などの大人)
・練習参加への協力(指導者)

・ケガをしている選手の役割
チームのサポートをどの程度求められるのか?
サポートの内容によっては、患部を休ませているようで、休ませられない
リハビリに使える時間が取れない(指導者目線でも後述)
毎日、見学に行かないといけない

チームによって、指導者によってルール?暗黙の了解?は様々

ケガをしている選手のチームにおける役割が多くなってしまうと、
思うようにリハビリが進まない場合もあります。

では、指導者がなぜチームにおける役割を作るのか?考えてみましょう。

1つ目は、居場所作り
ケガをしてしまうと、一緒にプレーする事が出来ず、疎外感を感じてしまいます。
コミュニケーション不足やストレスにより、チームメイトとの関係性が悪くなってしまう例もあると思います。
そのような配慮から、教育的立場として、「チームの一員である」と役割を与えていると考えられます。
これは、良い部分もあり、そうでない部分も有ります。

選手と話をしていると、
プレー出来ていない時に、グラウンドでみんながプレーするのを見たくないという選手もいます。
時期にもよりますが、特に走る事が出来ない時期には、
そのような感情になりやすい傾向があります。

2つ目、暇そうにしている
許可されているトレーニングメニューが少なく30分程度で終わってしまい、
あとは座って見学している。
それなら、手伝えることをやらせよう。

ケガをしている選手=ヒマ と思われている。

これは、リハビリをしている選手、メニューを提供している側にも問題があります。

本来、リハビリ期間は、患部や患部外のトレーニング、ケア、普段出来ない戦術理解度の向上など、頭も身体もパワーアップさせる事が出来るのが、ケガをしている期間の特権です。
場合によっては、スポーツから離れて、多角的に自分を見つめる時間にすることも大切です。

リハビリ期間=頭も身体もパワーアップ期間

一旦、離れてみても、
やっぱりスポーツがやりたい!という気持ちになっている選手の
リハビリへのモチベーションは非常に高くなります。

リハビリに使える時間
チームサポートは、指導者が思うようなメリットは確かに得られる場合もありますが、それによって、個人のリハビリの時間が削られ、復帰に時間がかかるようでは、マイナスになってしまいます。

そのため、メニュー作成のポイントとして。(やっと出て来ましたね笑)

練習時間の半分を使える内容にする
 3時間練習であれば、90分で終わるメニュー
 2時間練習であれば、60分で終わるメニュー

半分は、チームサポート
 半分は、リハビリ

とする事で、決められた時間でメニューに取り組む
サポートに入るタイミングに合わせて、メニューを終わらせるなど、テキパキとしたトレーニングが出来る事が多くなります。

指導者から見ても
1時間は、しっかり取り組んでいる様子が見えるので、
ケガ=ヒマ ではなくなります。

病院では、
何をどれくらい取り組んでいるかは、選手とリハ担当しか分かりません。

グラウンドでの取り組みまで配慮してメニューを作成することで、
グラウンドでの選手の立場を安定させて、
強いては、チームサポートによる過剰な負荷をコントロールすることも出来ます。

・使える道具やスペース

部活動毎に、リハビリで使える道具やスペースが大きく異なります。
場合によっては、チームに購入をお願いするケースも出てきます。

購入を依頼する際は、ケガをしている選手のためではなく、チーム全体のパフォーマンスアップに繋がるか?という視点で必要な物品を考えてみることも大切です。

メニュー作成では、今、どのような備品、器具があるか?使えるか?によって、
病院で行う内容、部活動で行う内容は多少変わりますが、
目的は変えずに作成しましょう。

また、走れるようになって来た時のために、
・走れるスペースは、あるのか?
・どのくらい距離が確保出来るのか?

を確認しましょう。

ランニングの負荷を上げていく際には、
 50%で走っても良い
 8割まで上げてみよう
など、強度をパーセンテージや割合で表現することが多くなるのですが、
選手とリハ担当での感覚の違いが大きく出て来ます。

走れる距離が決められたら、
時間を設定する事で、速度が出て来ます。
(はじき・の計算ですね)

ランニングの負荷は、
時間と速度と(距離)でしっかりコントロール出来ます。
痛みや違和感が出た時に、下げ過ぎず
調子に乗って上げることがないように

時間と速度でコントロール出来るランニングメニューを作成しましょう。

例えば、大学男子サッカー選手の試合中における最大スプリントは30〜34km/hになります。

50m走る場所を確保出来た場合、ざっと計算すると
・ジョギングは、6〜12 km/h   = 30秒〜15秒
・ランニングは、12〜21 km/h = 15秒〜8秒
・ダッシュは、21 〜30km/h   = 8秒〜6秒

折り返しが必要な場合では、少し秒数は増えますが、おおよその負荷がコントロールできます。

「15秒で走ると違和感がでるが、17秒なら全然大丈夫です」
「じゃあ、16秒を基本として、他のトレーニングで調子が良さそうなら、15秒の日を作っていこうか!」「違和感なく、8秒で走れるようななれば、部分的に合流出来るメニューも増やしていけるね」のような会話が出来ると

選手も目標設定がしっかり出来、焦って走り過ぎるなどのことが少なくなってくると思っています。
あいまいな目標設定だと、痛みが出た際に、何が問題だったのか?があいまいになり、結局負荷を下げ過ぎて、適切な負荷でのトレーニングが進まず、スケジュール通りに進みません。

・病院受診への理解

指導者からいつまで病院にいっているんだ!
病院は練習がオフの日に行け!

など言われて困っている選手がいます。

本来の病院のリハビリは、日常生活への復帰(学校での授業、買い物、階段、自転車)くらいまでが、どこの病院でも受けられる医療サービスになります。

スポーツ整形外科などでは、そこの範囲がもう少し広く 学校体育やレクリエーションスポーツ、部活動(競技スポーツ)が目標となっています。

私が病院でサポートしている選手は、
練習復帰後も来院してもらいコンディショニングや再発予防のチェック、
目標としている大会出場までサポートし、終了としています。

部分的に合流出来ると、指導者の方もあとは、グラウンドで出来るだろ!となってしまいがちですが、練習参加は、どうしてもリハビリ以上の身体的負荷になってしまうので、練習参加時期にはコンディショニングが非常に重要になります。

そのため、私は、オフ日以外の通院日を設定して、週2日以上のオフ(コンディショニングトレーニング実施日)になるように、特に復帰期は注意しています。

場合によっては、指導者の方に経過報告書とともに今後のスケジュールや通院日の意図などをお手紙で伝えるようにしています。

・練習参加への協力

お手紙の内容で、もう一つポイントがあります。
これは、選手に無理をさせてしまいがちな指導者の方への対応例です。

指導者の方の聞き方で多いのが、「行けるか?」ですね。

関係性にもよりますが、基本的には「はい」としか選手は言えません。

お手紙には、今の運動負荷(ランニングレベルで表現すると分かりやすい)
実施しているトレーニングメニュー
今後の上げ方
目標としている試合・練習参加日
などを具体的に記載します。

そして、
「選手は焦って復帰を目指そうとして、負荷を上げ過ぎてしまうので、
グラウンドレベルで負荷が高そうに見えたら注意をお願いします。」と伝えます。

指導者の方も
・実際に行っている負荷
・復帰予定
が具体的に分かると、本来の保護監督者の立場として
ブレーキ係を担って頂ける方もいます。

大会スケジュールやチーム状況によっては、
全く効果のなさない場合ももちろんあります。

そこは、日本の課題でもありますね。

以上のように、リハビリ期間中に取り組むメニューは、
患部のこと以外にも様々な背景を選手と相談しながら作成していくことが大切です。

ケガをした選手が必要以上にストレスを受けることなく、
リハビリ期間=心身のパワーアップ期間 となるように。


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