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ドーピング違反疑いの弁明をさせてもらえない!?という事態が起きている件

以前、こちらの記事↓の導入で、女子テニスのシモナ・ハレプ選手がサプリメントの汚染が原因と考えられるアンチ・ドーピング規則違反に問われている話に触れました(本題ではなかったですが)。

そのハレプ選手に関連して、続報が2つ続けて出ていました。
まずは、審理(聴聞会)が再三にわたり延期されているとのこと。

こちらは、本人のTwitterでも言及されていますね。

もう一つは、新たにアスリート・バイオロジカル・パスポート(ABP)による違反疑いが報告されたことです。

ハレプ選手を取り巻く状況が大きく変わっているところなので、状況の整理とキーポイントを解説し、なぜ審理(聴聞会)が進んでいないのかを考察したいと思います。

ハレプ選手の経緯

ものすごくザックリとまとめると以下の流れです。

2022年8月のドーピング検査でロキサデュスタットが検出される
→暫定的資格停止(2022年10月)
→パレフ選手側の調査で服用中のサプリメントからロキサデュスタットが混入していたことを明らかにした(2022年12月ごろ)
→聴聞会を待っているが再三延期されている(現在)

違反が疑われてからの手続き

ネットニュースでは「審理」と書かれていますが、これは聴聞会と呼ばれるものを指しています。

規律パネルと聴聞会

違反事例について違反の有無やその制裁措置を決定するのは、規律パネルという専門家委員会です。規律パネルはアンチ・ドーピング機関から独立した中立の組織なのですが、この規律パネルが違反の有無や資格停止期間等の判断が行う場として開催するのが聴聞会です。
違反が疑われたアスリートは、聴聞会で自分の主張・説明をする権利があります。具体的には、聴聞会では、アスリートが弁明のための情報や書類を提出し、自身が違反を疑われている内容に対し弁明や主張をすることや、疑われている内容について説明を聞くことができます。

聴聞会に関して、アンチ・ドーピング機関の責務として

最低限、合理的な期間内に、WADA の「結果管理に関する国際基準」を遵守している、公正かつ公平で運営上の独立性を有する聴聞パネルによる公正な聴聞会を提供する

世界アンチ・ドーピング規程8.1条

と決められています。

ハレプ選手の主張が聴聞会が『最低限、合理的な期間内』に開催されていないではないか、ということなのは一目瞭然かと思います。
一般的に見ればハレプ選手の主張は至極当然のことでしょう。ただ、今回の事情を複雑にしているのが、次のアスリート・バイオロジカル・パスポート(ABP)での違反疑いの件です。

アスリート・バイオロジカル・パスポート(ABP)とは

ABPは血液の様々な臨床検査値の異常変動などからドーピングの疑いを見つけ出す手法です。通常では起こらないような臨床検査地の変化がないか調べていくことで、単発のドーピング検査では発見しきれない・発見できない違反を検知する目的で行われます。

ハレプ選手の件を理解するのに大切なこととして、ABPで異常変動が検知されること自体が違反になるわけではない、ということです。ABPはあくまで臨床検査値の異常変動を検出するだけで、その変動が本当にドーピングの影響によるものか否か(例えば、健康状態によって起こり得る変動なのか)といった部分はエキスパートによって慎重に判断されます。ハレプ選手がABPから違反の疑いが言われているということは、ABPを基に調査を進められた上でのことだと考えられます。

ABPでの違反が先のドーピング検査での違反事例とどこまで関連しているのかは明らかになっていません。ただ、聴聞会の延期が繰り返されていることから、何かしらの関連性が疑われて、2つの事案を併せて聴聞会を開く方が合理的だと判断されているのだろう、と推測されます。

まとめ

ハレプ選手の検査での違反の手続きが延期され続けています。
この件とは別でABPでの違反疑いが発覚しました。2件の関連性は不明ですが、まとめて手続きを進めていくものと考えられます。
現時点では、2件とも違反は確定していないので、今後の動向に注目したいと思います。


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