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チケット売上・観客動員数UPに向けて~vol2.CRMの基本と活用事例~

皆さん、こんにちは。
スポーツビジネス向上委員会の今住です。

「満員御礼」
最近スポーツニュースを見ると、この4文字がよく目に入ります。

私は幼い頃からプロ野球観戦が大好きで、地元のスタジアムに月1回は足を運んでいました。
今から15年ほど前になりますが、その頃は家族4人で観戦に行っても、横の席が空いているからと荷物を置いたり、ゆったりと観戦できるスタイルが多かったのです。
「満員御礼」の試合は、大型連休中の試合や、シーズンを勝ち上がったチームで戦うクライマックスシリーズ・日本シリーズなど、一部の試合のみでそう多くはありませんでした。平日なんてもってのほかです。

しかし最近はどうでしょう。プロ野球では、平日でもチケットが取れないほど「満員御礼」の試合が続いたり、プロ野球だけでなく、Jリーグ、Bリーグ、ラグビーリーグワンなど、様々な競技場で満員御礼の試合が増えていますね。

(余談・・・)
昨シーズンですが、横浜DeNAベイスターズの試合で「満員御礼」を越えた、「満員札止」を見た試合がありました・・・!
※満員札止=完全に満員になった状態

満員札止 in 横浜スタジアム

ではなぜ、「満員御礼」になるほど、来場者を集められるようになったのでしょうか。
それは、チーム、さらにチームとリーグが協力して、集客のためのマーケティングを実施し、リピーターを増やし続けてきたからだと私は思います。

今回は、そんなリピーターを増やすためのマーケティングについて、
プロ野球ファン目線(顧客目線)を含めた実際の事例も交えながら、ご紹介できたらと思います。
少しでも皆さまの日々の業務のヒントとなれば幸いです。


CRMというマーケティング


CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)は、
簡潔に言うと、顧客と良い関係を築くことで、自社の利益を生むためのマーケティングです。
顧客と良い関係を築くために、顧客1人ひとりの属性や趣味嗜好、行動履歴を分析して、パーソナルなサービスや情報提供を行い、継続的な購入やアクションを促進していきます。
つまりは、顧客を育成する=リピーターを増やす、ために必要な手法なのです。

このCRMを利用すれば、「チケット売上・観客動員数UPに向けて~vol1.初めて来場客の獲得~」でも紹介した、下記図1において、「初めて来場」のお客様を「2回目以降来場~ファン化」に引き上げる仕組みを作ることができます。
CRMの核は、各階層の顧客をどのように1つ上の階層に上げるかを検討し、その戦略を決めることです。

図1 顧客セグメント

例えば、私たちの身近にあるコンビニでは、天気や気温によって商品の品出しを変えています。これは感覚や勘に頼るのではなく、事実に基づくデータを収集し、その情報をもとに店頭に並べる商品を変更します。良く言われるのは、25度になるとアイスクリームが売れ、30度を超えるとアイスクリームより、さらに冷たい氷菓が売れるようになるというものです。

スポーツ業界でもこのようなデータに基づくサービスの提供をしようと、
①顧客データの収集
②収集したデータの分析・ターゲットの策定
③定めたターゲットにアプローチ
この3つの手段を実施するチームが増え、これを繰り返し続けることで、リピーターを増やし、「満員御礼」の試合を作ることに成功しています。

ここからは、①~③の具体的な内容を事例も交えながらご紹介していきます。

①顧客データの収集


マーケティングの世界では、顧客データの収集は必要不可欠です。

実際の事例(*1)をもとにその重要性をご説明します。

横浜DeNAベイスターズでは、2011年から2015年までの来場者数の伸びは65%、座席数に対する動員率は52%~88%へと伸びています。ただ、この5年のチーム成績は、よくても5位、最下位を3回経験しています。チームが強ければ応援してくれる人=来場者も増えると一般的には考えがちですが、対する横浜DeNAベイスターズはどのようにして来場者を増やしたのでしょうか?
2011年に代表取締役社長に就任した池田氏によると、「出発点は顧客を知り尽くすこと」だといいます。
顧客を正確に理解していなければ有効な戦略は打ち出せない。まず実施したのは、それまでバラバラだったファンクラブやチケット購入に関する顧客データの一元管理です。本拠地の神奈川県民にアンケート調査も実施し、その結果、横浜スタジアムに来ている人の属性や行動パターンが見えてきたといいます。

同じく、プロ野球の埼玉西武ライオンズでは(*2)、前日のナイターの来場者情報、例えば「動員数」「客単価平均」「売上内訳」などは、翌日の会議までに整理され報告されるとのことです。これに「週ごと/月ごと」の傾向が加わり、現時点の問題をチェックしています。

このように、現在「満員御礼」を続けているチームでは、欠かさず、さらにはできるだけリアルタイムでのデータ収集・把握を実施しているのです。

顧客のデータにも様々な種類があります。
ファンクラブデータ、チケット購入履歴、来場履歴、グッズ購入履歴、試合後の来場者アンケート、メルマガの開封率、など。
幸いなことに、ここ数年でスマートフォンの世帯普及率は、約90%にも及ぶと言われています。さらには、CRMを実施するに必要な顧客管理サービスも様々展開されております。是非、そのようなデジタルツールも活用しながら、情報収集を進めて頂けたらと思っております。

参照
(*1)和田充夫・恩藏直人・三浦俊彦著(2022年).『マーケティング戦略〔第6版〕』.有斐閣アルマ
(*2)広瀬一郎(2017年).『サッカービジネスの基礎知識「Jリーグ」の経営戦略とマネジメント』.東邦出版

②収集したデータの分析・ターゲットの策定


顧客データが収集・蓄積できてきたら、料理でいう材料を準備できたことと同じです。
ここから、具材を入れるタイミング、量(=レシピ=戦略)と、誰に提供するか(=ターゲット)を決めてアクションを実行していきます。

ここでまず重要になるのが、ターゲットの策定です。
マーケティングの世界では、ペルソナという、「消費行動を仮定した架空の人物像」を作り出します。
例えば、消費行動をする人(=顧客データ)は
・男性女性どちらが多いか
・年代層はどうか
・どの曜日、時間帯が購入確率が高いか
・休日の過ごし方はどうか
・家族構成はどうか
・スポーツ歴はあるか
など、属性データ、趣味嗜好、行動履歴等のデータを用いて、どういう人が購入してくれるのか、どの層を狙っていきたいのか、といったペルソナ像を作成します。

先程ご紹介した横浜DeNAベイスターズ(*1)では、データの収集や分析が進んだことにより、狙うべきターゲットを絞れるようになりました。
そのとき定めたペルソナは、「仕事帰りに友達と飲みに行くような20~30代のアクティブ・サラリーマン」です。そして、定めたターゲットに向けて、試合後の花火や新しいタイプのシートなど、次々と話題作りを仕掛けていきました。

このように、データをしっかり分析し、ターゲットを明確に定めて、適切なアクションを実行していくことで、ビジネスの成果は大きく左右されていくことでしょう。

③定めたターゲットへのアプローチ


戦略、ターゲットが決まったら、あとは決めた施策を実行していくことに限ります。
もちろん、うまくいく施策、うまくいかない施策の両方があるかと思いますが、その理由を明確にし、何度もトライ&エラーを続けることで、より利益に繋がる戦略・施策が見えてきます。

また、アプローチの際、気にかけて頂きたいのが、アプローチのタイミングです。

横浜DeNAベイスターズを例として「20~30代のアクティブ・サラリーマン」にメールでチケット販売開始の案内をするのであれば、ターゲットがスマホを開いていそうな、通勤の時間帯やお昼休み、仕事終わりの時間帯を狙うのがいいでしょう。
また、グッズ購入を促したい場合は、ゆっくり検討して購入ができる土日のお昼過ぎを狙ってもいいかもしれません。
メルマガの定期配信であれば、毎週水曜日の18時、など時間を固定化しておくことで、顧客側も、「水曜18時だ、●●チームからメールきているかな」と自然とメールを確認するようになります。

私はいくつかスポーツチームのファンクラブに入っていますが、
実際に、プロ野球の千葉ロッテマリーンズでは、毎週土曜日(金曜が祝日の場合は金曜日)の正午に、グッズ情報「今週の新商品」の案内が届きます。
これは私の中でもルーティンになっており、毎週この時間に新しいグッズ情報を見られるのが楽しみになっています。

さらに、アプローチする際には、ある程度先のシナリオまで考慮しておくことも、より成果につなげる1つの方法です。

例えば、試合に初めて来場してくれた顧客に、
①試合当日:サンクスメールと次回の試合・チケット情報を送付
②5日後:次回試合のチケット購入がない顧客に対して、購入時に使えるクーポン(7日間用)の案内を送る
③②から6日後:チケット購入がない顧客に対して、クーポン期限が残り1日であることをお知らせする

といったように、継続的なアプローチと、初回来場者というライト層に対してお得に購入できるクーポン情報を提供することで、次回リピート率を高めるシナリオを組んだ例となります。

これは実際の試合会場での事例になりますが、
横浜DeNAベイスターズでは、横浜スタジアム開催の主催試合への来場者を対象に、満員が発表された場合限定で「おか割 大入りフィーバー」という特別チケットを販売します。販売中の一部試合の一部席種のチケットを割引料金(1,500円OFF)で購入できるというものです。

「おか割 大入りフィーバー」 
(参照:横浜DeNAベイスターズ公式HP)

私も複数回利用したことがありますが、対象試合は平日の試合であったので、どうしても空席となりやすい平日にもう一度来てもらう、さらに仕事終わりのサラリーマンに、という点でとても魅力的な施策だと思いました。当日、近くにいらっしゃった男性は、お酒も飲んでテンションも上がっていたようで、「試合も勝ったし、お酒も飲んで気分がいいから次も買っちゃおうか!」と即購入されているような姿もありました。(笑)

このように、データに基づいた施策を実行しているチームでは、しっかりリピーター獲得にもつながっていることを実感した場面でした。

さて今回は、チケット売上・観客動員数UPに向けて「vol2.CRMの基本と活用事例」方法についてご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。
読んで頂いた皆さまにとって、少しでもプラスの情報として受け取って頂けましたら幸いです。

弊社では、スポーツ団体様の抱える課題を、デジタルマーケティングを用いて解決するお手伝いをさせて頂いております。
今回ご紹介した、CRMに関するご支援も、既に複数のスポーツ団体様とのお取組実績もございますので、もし無料で相談してみたい、どんな支援をしてくれるのか話を聞いてみたい、などございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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