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運動で乳ガン予防と再発率低下を!【Doctor Tのスポーツ・エクササイズ医学】

お久しぶりですDoctor Tです。9月に入り秋の気配を感じるようになりました。夏は無事乗り越えられましたか?来年は計画的に暑熱順化(しょねつじゅんか)を!

さて今回は「病気と運動シリーズ」に戻り、乳ガンをテーマにします。御存知の通り日本でも乳ガンは増えています。運動と乳ガンの予防・治療についてアメリカスポーツ学会のレビュー(いくつかの論文をまとめたもの)を元に話をしたいと思います。

新しい情報と言うよりは、根拠がより強固になったという内容です。

いくつかのガンは予防可能

予防できるガンには大きく2種類あり、感染もしくは生活習慣が原因のガンが、それにあたります。感染によってかかるガンの例はヒトパピローマウィルスが原因の子宮頸ガンです。予防策としてワクチンがあります。

生活習慣病と似たメカニズム

生活習慣の例では、よく知られた喫煙と肺ガン(他のガンの原因にもなりますが)以外に、肥満になるような生活もそれに当てはまります。メカニズムも高血圧などの生活習慣病とかぶっています。そのため、生活習慣病と同様、運動に予防効果があります。(note:ガンの人にも運動が効く)

乳ガンも予防できるガンのグループに入る

あまり知られていませんが、乳ガンは予防可能なガンのグループに分類されています(遺伝的要因ももちろんあります)。なぜなら、欧米化した食生活と動かない生活習慣→肥満が主要なリスクだからです。

カロリー過多だけでなく、ホルモンや免疫も乳ガンの原因となることがわかっていますが、運動によってこれらを抑制することができます。

運動は「ガンと診断された後でも有効」である!

ガンと診断された後も運動をすることによって手術後経過や治療の副作用、生活の質、全体的な生存率が改善することが複数の研究で示されています。

基本的にはガンでない人と同じ運動推奨

私が調べた限り、乳がんに特別勧められる運動は特になさそうです。一般的に勧められている、週150分の息の上がる有酸素運動週2−3回の筋トレがアメリカスポーツ医学会からも勧められています。

避けるべき運動は主治医に聞く

治療の内容によって、感染しやすくなったり、骨密度が低くなったりします。これは人によってそれぞれなので、主治医に避けるべき運動場所や動作を聞きましょう。

筋トレをすると「リンパ浮腫の悪化なく」筋力アップができる

手術や放射線治療のためにリンパ浮腫になる患者さんはいます。ただ、運動によってリンパ浮腫は悪化しないという強いエビデンスがあり、それを上回る益があることが強調されています。

「診断後の」運動量改善が再発率や死亡率を下げる

乳ガンの診断を受けた患者を対象にした、16の前向き研究を集めたシステマティックレビュー(非常に信頼度が高いまとめ)では診断前の運動量の差では、死亡リスクに差がなかったのですが、診断後の運動量を比較すると運動量の多いグループで死亡リスクが下がることが示されました。

運動量が最も多いグループvs最も少ないグループ
診断前の運動 相対的リスク0.77 (95%CI,0.69-0.88) vs. 0.77 (95%CI,0.66-0.9)
診断後の運動 相対的リスク0.52 (95%CI,0.42-0.64) vs. 0.72 (95%CI, 0.60-0.85)

運動量が増えるほど効果も上がる

診断された後に「毎週運動量を10METs時間増やす」と死亡リスクが24%下がるそうです。

一般的に推奨されている息切れするくらいの速さで週150分歩けば、3.5-4.0METs✕2.5時間=8.75-10METs時間になります。それに週2回の筋トレを入れればクリアです。

とはいえ、数字にとらわれすぎず、好きなことから始めましょう。日常生活で週10METs時間という藤井寺市推奨のメニューもあります。

まとめ

  • 乳がんは肥満になる生活習慣が大きな原因の一つとされている。

  • 運動による予防がスポーツ学会からもCDCからも推奨されている。

  • 診断された後でも運動は治療の副作用を減らしたり、生活の質を上げたり、死亡率を下げたりする。

  • 運動はリンパ浮腫を悪化させずに筋力を増やせる

  • 診断された後に運動を始める、増やすでも効果がある。

ガンと診断された後に運動を勧められるというのは今まででは考えられなかった事かもしれません。もちろん治療による体力低下や易感染などの問題があるのは事実なので、安全面には注意を払う必要があります。

運動の指導をしてくれる人や施設もないので、なかなか踏み出せないかもしれません。でも、主治医から避けるべきことを確認し、まずは「好きな、軽いこと」から始めてみることをおすすめします。

ここには書ききれませんでしたが、運動には自己肯定感を上げたり、睡眠の質を良くしたり、生存率を上げるだけでなく、「今この時を充実させてくれる効果」もあります。

乳ガンは比較的予後の良いガンで、その後他の健康問題が出てくる可能性も十分にあります。ガンのためでもあり、他の疾患を予防することにもなるのでぜひ運動をおすすめします!

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