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コロナ禍によってスポーツの人気は増加する?歴史から学ぶスポーツと感染病

概要

いま、世界中で猛威を奮っている新型コロナウイルス。毎日のように世界各地で感染者が拡大し、緊張感が走っている。JリーグやNPBはこれを受け、2020年3月には両団体共に今シーズンの開幕を中断、延期した。

しかし次第に国内の感染者数が減少してくると政府は『緊急事態宣言』を解除。それに伴ってNPBは6/20、Jリーグは7/4からリーグを再開した。(J2は6/24から)

コロナによる自粛要請の中で待望の幕開けだったが、ここにきて国内では感染者が再度増加。しまいにはソフトバンクの二軍、Jリーグでは名古屋グランパスで感染者が発覚し、試合は再度部分的に延期されることとなった。

このような先が見えない不透明かつ未曾有の事態で、”オフライン”をベースにするスポーツ興業に未来はあるのだろうか?過去に感染症がスポーツにどうのような影響を与えてきたのかを考察していくことで、今後の日本スポーツ界の未来を予測していく。

スペイン風邪×MLB

過去にも人類は様々な感染症に襲われてきた。その中でも、1918年にアメリカで発生したスペイン風邪は、アメリカを中心に猛烈な勢いで世界中に拡大していった。

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20世紀最悪のパンデミックとされ、世界中で2000万人~4500万人が死亡し、日本国内でも約45万人が死亡した。これに対して、国はほとんどの集会を禁じ、患者の自宅隔離を決断。今から100年ほど前にも関わらず、現在と同じ『クラスターの防止』と『感染者の隔離』によって対策をとっていたことには驚きだが、そうすると当然のようにMLBへの観客動員数は減少。以下は当時の1試合あたりのMLBの観客動員数のグラフだ。

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グラフをみると、スペイン風邪が発生、流行した1918年は前年の4186人と比べて大きく観客動員数が低下している。ただ、注目して欲しいのは1918年以降の劇的な伸びである。

スペイン風邪によって大きく減少した観客動員数であったが、翌年には回復、その翌年にはスペイン風邪以前の2倍弱近い数値にまで回復している

また、この動きは直近の韓国でも見られる。

MERS×韓国プロ野球

21世紀に入ってからも多くの感染症が世界で確認されている。衛生環境や医療技術の向上によってこれまでほど多くの犠牲者は出ていないものの、脅威的であることには変わらない。アフリカで流行したエボラ出血熱やリオ五輪前にブラジルを中心に大流行したジカ熱は記憶に新しい。

平成感染症

そんな中、2015年に韓国を襲ったのがMERSだ。2015年5月4日、バーレーンに半月間滞在した68歳の韓国人男性が、MERSに感染したとは知らずに帰国、そこから感染が広がっていった。同年12月に終息宣言が出されたが、1000校以上の臨時休業や感染者の隔離等が行われ、事実2015年の韓国プロ野球(KBOリーグ)の観客動員数は前年と比べて低下していることがわかる。以下がその当時の1試合あたりの平均観客動員数のグラフだ。

KBOリーグ

もちろんスペイン風邪や今回のCOVID-19ほどの甚大な被害ではないだけに前年との減少幅は少ないが、MERS確信患者が発生した水原(スウォン)と大田(テジョン)では、試合の観客数が激減し、興行に悪影響を及ぼした。

特に2015シーズン31試合で27万4740人(試合当たり平均8863人)のファンが訪れた水原KTウィズパークには、3試合で合わせて7308人(試合当たり平均2436人)の観衆しか来客せず、予約販売されていたチケットもキャンセルが続出し、2万人収容の競技場は閑散とするなどの被害が出ている。

しかし、スペイン風邪時のMLBと同様、2015年以降観客動員数は回復。また、KBOリーグ全体の総観客動員数は2016年833万人、17年840万人と2年連続で史上最多を記録している

COVID-19×欧州サッカー

また、今回のCOVID-19による世界的なスポーツ中止から、劇的な数字を叩き出しているリーグがすでに存在している。それが、プレミアリーグやブンデスリーガといったリーグを抱える世界最高峰の欧州サッカーだ。

イタリア、ドイツ、スペイン、イングランド、フランスと跨がるこの5大リーグでもCOVID-19の流行を受け今年の3月には中断を発表した。

しかし5月にいち早く再開を開始したブンデスリーガを筆頭に、多くのリーグで爆発的な視聴者数の伸びを記録している。

ブンデスリーガでは国内の視聴者数は通常の2倍に増加。スペインの放送局では、ブンデスリーガ戦の中継でこれまでの最高視聴者数の4倍を記録。人口約1728万人というオランダの『FOXスポーツ』でも、一試合だけで20万3000人が視聴。また、BBCが初放送したプレミアリーグの試合では、同局が無料放送したボーンマス対クリスタル・パレス戦の視聴者数は390万人を記録。当日のイギリスのテレビ視聴者数のほぼ四分の一にもなる数値だったと発表。

また、”サッカー後進国”と言われるアメリカにおいても同じ現象が起こっている。同国の女子サッカーリーグであるNWSLにおいて、6月27日のノースカロライナ対ポートランドの試合では、中継の観戦者数が57万人というリーグ新記録を樹立。これは、NWSLのそれまでの記録であった19万人をはるかに上回るものであった。

まとめ

以上からも、スペイン風邪やMERS、COVID-19といった未曾有の事態において、人々はスポーツへの関心が高まってきたことがわかる。これは自粛によって枯渇した娯楽を求める要因や、人々の不安や心配を払拭できるスポーツの社会的側面が原因かもしれない。どちらにせよ、観客動員できない現状では、従来の収益を確立できず運営に困窮しているクラブが多いと思うが、ここを耐え忍ぶことができれば、よりスポーツが求められる社会になっていくかもしれない。

By SportsLab(←ぜひチェックを!)