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(終)はじめての線形代数part6 ~Aⁿを求めよう!(対角化編)

はじめに

 お疲れ様です。やっとここまできました。ついに$${A^n}$$を求めていきます!その前に、1つ大事なことを勉強しなくてはなりません。
 それはタイトルにあるように「対角化」というものです!


対角化とは

 実は前回までで基本的なことは履修済みなのです。
 対角化とは$${P^{-1}AP}$$を作ることをいいます。ここでいう$${P}$$とは固有ベクトルを並べてできる行列のことです。
 対角化をすると、$${P^{-1}AP}$$が対角行列になります。しかもその対角成分は固有値になるのです!

 1つ注意点があります。
それは順番です左からです。固有ベクトルを求めたときに場合分けをしたと思います。「λ=〇のとき…」とやりましたよね。
 つまり、固有値と固有ベクトルは1セット
なのです。なので対角成分を左上から置く順番行列$${P}$$に固有値を左から置く順番を統一してください。

イメージ図

対角化を勉強する重要性

 実は$${A^n}$$を求めること対角化は手順がほとんど似ています。本記事part0でも記述しましたが、$${A^n}$$を求めることは線形代数の基礎要素がほとんど含まれています。これは対角化を習得することとほぼ同義なのです。
 ちなみに、大学1年生が勉強する線形代数の7割ぐらいを占めているのです!(筆者主観)

実際に計算してみよう

 今回は答案用紙のように記載してみました。対角化と$${A^n}$$を求めることを同時にやってみましょう
今までの知識の集大成です。補足説明がある個所には①などで解説します。

$${行列A=\begin{pmatrix}1&-2\\3&-4\end{pmatrix}とする。(1)Aを対角化せよ    (2)A^nを求めよ。\\\\解)(1) Aの固有値と固有ベクトルを求める。・・・①\\\,\,\,\,\,\,固有値をλとすると、λ\vec{x}=A\vec{x}から(λE-A)\vec{x}=\vec{0}より|λE-A|=0になる。\\|λE-A|=|\begin{pmatrix}λ&0\\0&λ\end{pmatrix}-\begin{pmatrix}1&-2\\3&-4\end{pmatrix}|=\begin{vmatrix}λ-1&2\\-3&λ+4\end{vmatrix}\\=(λ-1)(λ+4)+6=(λ+1)(λ+2)=0\\\,\\したがってλ=-1,-2となる。\\\\・λ=-1のとき、(λE-A)\vec{x}=\begin{pmatrix}-2&2\\-3&3\end{pmatrix}\vec{x}=\vec{0}\\ \\ これを簡約化すると\begin{pmatrix}1&-1\\0&0\end{pmatrix}\vec{x}=x-y=0となり・・・②\\\,\,\,\,\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=c\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}(cは0以外の任意定数)\\したがって固有ベクトルは\begin{pmatrix}1\\1\end{pmatrix}となる。\\・λ=-2のとき、(λE-A)\vec{x}=\begin{pmatrix}-3&2\\-3&2\end{pmatrix}\vec{x}=\vec{0}\\ \\ この簡約化を進めると\begin{pmatrix}3&-2\\0&0\end{pmatrix}\vec{x}=3x-2y=0となり・・・②\\\,\,\,\,\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=c\begin{pmatrix}2\\3\end{pmatrix}(cは0以外の任意定数)\\したがって固有ベクトルは\begin{pmatrix}2\\3\end{pmatrix}となる。\\ \,\,固有ベクトルを連結させてできるを行列P=\begin{pmatrix}1&2\\1&3\end{pmatrix}とおく。\\このとき行列式は1×3-1×2=1\\\,\\余因子行列は\begin{pmatrix}(-1)^{1+1}×1&(-1)^{1+2}×2\\(-1)^{2+1}×1&(-1)^{2+2}×3\end{pmatrix}を転置したものなので・・・③\\\,\\P^{-1}=\begin{pmatrix}3&-2\\-1&1\end{pmatrix}となる。・・・④\\\,\\また、固有値と固有ベクトルからAを対角化すると\\P^{-1}AP=\begin{pmatrix}-1&0\\0&-2\end{pmatrix}となる。\\\,\\\,\\(2)P^{-1}AP=\begin{pmatrix}-1&0\\0&-2\end{pmatrix}の両辺をn乗すると\\\,\\\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,(P^{-1}AP)^n=P^{-1}APP^{-1}AP…P^{-1}AP\\P^{-1}EAE…P=\begin{pmatrix}-1&0\\0&-2\end{pmatrix}^n\\\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,P^{-1}A^nP=\begin{pmatrix}(-1)^n&0\\0&(-2)^n\end{pmatrix}\\\,\\この式に左かPを、右からP^{-1}を掛けると・・・①\\\,\\PP^{-1}A^nPP^{-1}=\begin{pmatrix}1&2\\1&3\end{pmatrix}\begin{pmatrix}(-1)^n&0\\0&(-2)^n\end{pmatrix}\begin{pmatrix}3&-2\\-1&1\end{pmatrix}\\\,\\\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,A^n=\begin{pmatrix}(-1)^n&2×(-2)^n\\(-1)^n&3×(-2)^n\end{pmatrix}\begin{pmatrix}3&-2\\-1&1\end{pmatrix}\\\,\\\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,\,A^n=\begin{pmatrix}3×(-1)^n-2×(-2)^n&(-2)×(-1)^n+2×(-2)^n\\3×(-1)^n-3×(-2)^n&(-2)×(-1)^n+3×(-2)^n\end{pmatrix}}$$

解説

①・・・固有値と固有ベクトルについて。詳しくはpart5を参照
 また、$${λ\vec{x}=λE\vec{x}=A\vec{x}}$$を移行することで$${(λE-A)\vec{x}=\vec{0}}$$となり、固有ベクトルである$${\vec{0}}$$は$${\vec{0}}$$ではないので、$${λE-A=\vec{0}}$$になる。これは行列式の値が0になることと同値なので$${|λE-A|=0}$$になる。詳しいことを勉強したい方は正方行列の必要十分条件について勉強してみましょう!

②・・・簡約化について。詳しくはpart3を参照
 また、固有ベクトルは$${\vec{0}}$$ではないので$${\begin{pmatrix}x\\y\end{pmatrix}=\vec{x}\neq\vec{x}}$$となる。そのため、任意定数$${c}$$が0にはならないが今回は固有ベクトルに重点を置いているので詳細は割愛。気になる方はぜひベクトル空間を学んでみてください!
③・・・行列式と余因子行列について。詳しくはpart4を参照
④・・・逆行列について。詳しくはpart2を参照
 また、逆行列を求めたことで、$${P^{-1}AP}$$を作ることができました!これが対角化というものです!また、行列に$${P}$$よらず$${P^{-1}AP}$$という形を表現行列といいます、ぜひ勉強してみてください。!
⑤・・・
行列の積について。詳しくはpart1を参照

おわりに

 おつかれさまでした!どうでしょうか、中々のボリュームがあったと思います。解説にある「詳しくはpart○」のように、行列$${A^n}$$を求めていくには今までの知識をすべて使うのです!
 また、解説に興味を持った方は勉強をぜひ進めてみてくださいと記載しました。線形代数を勉強する魅力、モチベーションが高まれば著者としてはうれしい限りです
「はじめての線形代数~Aⁿを求めよう!」シリーズは今回をもって完結です。これからも大学生が勉強する学問の導入になるものを記事にしていく予定なので応援してもらえるとありがたいです。
最後まで見ていただき、本当にありがとうございました。

問題

追記です、問題作りました!!!けっこうがんばって作ったのでぜひ解いて回答を確認してください!
こたえはこちらから!:はじめての線形代数 練習問題6

基本問題

$${問題1\\A=\begin{pmatrix} 3 & 1 \\ 1 & 3 \end{pmatrix}\\行列Aを対角化させた行列Xを求めよ。}$$
$${問題2\\B=\begin{pmatrix} 3 & 3 \\ 1 & 5 \end{pmatrix}\\行列Bを対角化させた行列Yを求めよ。}$$
$${問題3\\C=\begin{pmatrix} 1 & -2 & 0 \\ 0 & 2 & 3 \\ 2 & 2 & 3 \end{pmatrix}\\行列Cを対角化させた行列Zを求めよ。}$$

応用問題

$${問題4.\\問1の行列Aについて、A^5を求めよ}$$
$${問題5.\\問2の行列Bについて、B^5を求めよ}$$
$${問題6.\\問3の行列Cについて、C^nを求めよ}$$


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