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親など無力な存在

自分にとって、その人はどんな人か。
その人との関係性は、自分にとっての影響力と比例する。
でもそれは、あくまでも、「自分にとって」という事なわけで、
そこに世間の評判や、ましてや地位なんて関係ないんだよな。
だから俺にとっては、どんなに立派な総理大臣の言葉よりも、
永ちゃんの言葉の方が響いたりするのだ。
ようは、「何を言うか」ではなく、「誰が言うか」。
同じ言葉でも、乗る力や意味合いってのは全く違うものになる。
「彼女に振られたからって、気にすんなよ!」
と、心から信頼する友達に言われるのと、
そんなに信頼してない友達に言われるのでは、全く違うわけで。
事と次第によっては、殴り合いになる可能性も秘めてるよな。
繰り返すけど、大事なのは、「言葉の内容」ではない。
「誰に言われた言葉」か。だ。




息子もこの春で小学5年に。

つきなみだけど、こう思う。

早いものだなぁ、と。

このエッセイを始めた頃は、なんと6歳だったのだ。

大人の階段を軽快に登っている。

大人の階段のひとつとして、
「彼をとりまく自分の社会が広がっていく」って事があって、
それこそ、6歳のころは、
彼のメインな社会は「家族」だけだった。

もちろん友達だっていたし、保育園にも通ってたんだけど、
そこにはいつだって親が介入していた。
なのでそれは「彼自身が作った自分の社会」とまではなっていなかった。

でも、もう5年生にもなると、
「自分自身だけで築き上げた自分の社会」ってのが徐々に増えてくる。

学校だってそうだし、友達だってそう。

もう親の介入はすっかり減った。
減ったどころか、無いものもある。

正直いって親としては、楽になったので、
いいぞ、いいぞと思ってるんだけど、
そのうち、俺の知らないところで、
なにやら、良からぬ事でもやりはじめるんだろうな。
と、思う。
(そう、俺がそうだったようにね)



そんな彼は、少しポッチャリ体型。

5年生ともなれば、外見も気になる年頃。
それも成長のひとつか。

なので本人も、少し痩せた方がいいとか思ってるようだったので、
こちらとしても色々な作戦で
5年生へダイエットを進めた。

最初はこんな感じで。

「痩せたらカッコよくなるかもよ!」
(もちろんポッチャリだって可愛いんだけどな)

息子「ん〜そうかね」

「そうだよ、だから、運動しようぜ!」

息子「運動・・ねぇ」

「一緒に走ろう!」

息子「いや。いいです」

・・・・・・・。

そうな、ちょっとストレートすぎたな。
では、これはどうでしょうか。

「走るのはキツイからさ、歩こう!散歩!どう?」

息子「いやぁ、どこを散歩すんの?」

「ま、その辺を」

息子「ん〜いいです。」

・・・・・・・・・・・。

こんな感じで、全くなびかない。
てかさ、おまえが痩せたいって言ったんじゃねーのかよ、
という事は無理矢理置いとくけども。

そして、俺はついに、禁断の箱を開けるのです。
「物で釣る」という名の悪魔の箱を。

「よし、じゃ、腹筋を1ヶ月続けたら1000円やろう!」

息子「まじで!!」

おお!やっとやる気になった!
でもなぁ、本当はダメだよな、こんなやり方は。
とはいえ、続けるという事が大事だからな。
そこの大事さをわかってくれれば。。

そして、数日がたったある日。
なんだか、腹筋をやっていない様子。

「おまえ、腹筋は?」

息子「え?あぁ〜まぁ、いいかなぁ」

「なに!?じゃもう1000円、やらねーぞ!」

息子「1000円?あぁ、いいよぉ、いらなぁい」

なんと!!!

物でも釣れないのか、、
じゃ、なんだったら釣れんだよぉ・・・・
どんな名人でも釣れない、幻の魚。



そんなこんなで、数日が過ぎた。ある日。


「パパ、俺さ、腹筋するわ!」


!!!!!!!!


「な、な、なに?今、なんて?」

息子「だから、腹筋するわ。毎日。」

「お、おう。。!!でもさ。なんで?」

息子「なんで?はぁ?ちょっと運動して痩せた方がいいっしょ」

「そうだけど・・なんで、やる気になったのよ」


息子「あ〜まぁ、彼女に言われたんだ」



そう、こいつの作った新しい社会の中に「彼女」もいたのだ。


「なるほど・・・で、ちなみに何て言われたの?」




「痩せたらカッコ良くなるよって」


!!!!!!

それ、、、、


俺が最初に言ったやつじゃねーか!!!!



無力だ。。
親なんて無力。
同じ言葉を投げても、敵わない。
彼女の言葉には勝てない。
あいつにとっての俺、あいつにとっての彼女。
どっちが影響力があるのか。
勝負は、完全についた。

俺の言葉など、もはや響かないのだ。
なんて残酷な現実。


息子「あ、でさ、パパ」

「なんですかぁ・・」




息子「1ヶ月続けたら1000円だよね?」


・・・・。

まだ俺の言葉も、響くようだ。




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